④或る日曜日

新書を一冊読み終えた後に持つiPhoneの重さ。
こんな軽くて小さなものに執着していたのか。

シャワーを浴びた。2日ぶりくらいだ。私比、健全な方。

化粧水、乳液、ヘアオイル。綿棒で耳掃除。丁寧な暮らしは’’フリ’’から始まると思う。日焼け止めも塗る。

カメラと本と財布と煙草と、それでも捨てられないiPhoneとヘッドフォン。荷物が多いのでショルダーバッグを出す。荷物を持てるならと、リップクリームと櫛も内ポケットに忍ばせる。

2日ぶり、外。思ったより日中はまだ暑い。前回は夕方に外出した覚え。細い路地を抜けた通りでカメラを撮る。いつもの道、不思議な感覚。

フィルムカメラを買った。60年代に出たハーフフィルムカメラ。マニュアルで弄る感覚、ピントは目測で合わせる感覚。感覚、良い。

アパートの壁面の看板を撮るなりして、いつものラーメン屋で腹拵え。1.5玉はもうきつい。こってりなんて尚きつい。でも、ラーメンならここが好きだ。

コンビニで一服。大宮ナンバーのミニバン。どうしてだろうと目線を上げると学生らしき若者たち、夏の旅行かしら。

すぐ裏の公園で一休み。”お荷物”ではない短編小説を読む。「りんご追分」、久しぶりに読んだ。好きだ。とはいえその次の「うしなう」が何故か頭にこびり付いていた。

南下した。通ったことのない住宅街を歩く。見覚えのあるようでない景色、日本なんて大抵どこも変わらない。「喫煙マナーは守ろう。ポイ捨てはしないで。」の看板。ポイ捨てしなければ路上喫煙しても良いのか。大抵以外の微小な差異の発見が嬉しい。そう言う訳でもないか。

さらに南下。iPhoneはただのiPodになった。随分とゴツくなったものだ。地図を見る気にはならなかったので大通りを歩く。角の煙草屋がまだ生き残っている時代に生きる意味は、あんまりない。

ひたすらに大通りを南下。なんか、南下っていいな、とか思ったりする。知人の車やバイクのケツから見ていた通りよりも、歩くスピードで見る通りが新鮮で、私には合っていると感じる。

気がつくと、北白川丸太町まで来ていた。そういえば、気になるバーが近くにあったはず。調べると19時オープン。夕方と言えば夕方だが、まだ日の暑さが残る時間。南下はやめる。

哲学の道に来た。一回の頃、今はパクられた自転車で来た以来。あの時は銀閣寺を見に行き、あまり哲学の道は歩かなかった。やや日も落ちた哲学の道。正直、仰々しい名前だと思う。しがないおじさんの散歩道ぐらいの方がいいと思う。しがないおじさんの方がよっぽど哲学的に生きていると思う。

哲学の道、南下してしまった。そろそろ戻ろうと思うが、戻るのも癪なので通りに向かう。知らない住宅街の道、良い。そういえば買ったフィルムが8枚のものだった。にしては1500円。ちゃんと調べれば良かった。ハーフカメラでよかったことにする。

通りに出ようかと言うところで、店先に1冊50円の古本棚を見つけてしまった。2冊ほど手に取り、それだけ買うのも忍びなく、店内を一通り見て、よく分からん本を1冊手に取ってレジへ。さっきまで知り合いらしき人と仲睦まじく話していた店主の、ボソボソとした声で言う”ありがとう”が心地良い。

しかし19時にはならない。近くに喫煙可の喫茶店はない。ひとまず、喫茶店へ向かうべく次は西方へ。

ラーメン屋が多い通りだ。しかもこってり系。匂いが辛い。疲れていると、大抵が辛い。楽しむためには体力がいるというのは、知見として有用だと思われる。

ギブアップ。バスの時刻を調べる。バスよりもLuupが早そう。一度、初回無料で乗ったことがあるが、どのくらいの値段になるのかの興味という建前で帰路に。

十数分で最寄りのポートに。風が心地良かったことが悔しい。便利はロマンが足りない、あんなに歩いたのに。

帰宅。片付けて、ビールを冷やす。気になるバーは、縁がなかったという縁を今度結びに行く。芋を洗う。アテにできそうなのが芋しかない。短冊に切っては、水で洗い、澱粉をやや落とす。水気を切って、片栗粉、塩胡椒、クミンで衣を付ける。フライパンで揚げる。程よい量の油を引けた。

跳ねた油で火傷した。火傷。帰省した折に毎度やる七輪を思い出す。毎年夏には小さな火傷を必ずしていたのに。夏の実感としていたのに。ようやく夏を終えられそうだ。芋、ありがとう。

程よく揚がったら、ザルにあげ、油を切り、マヨ、ケチャ、からしでマスタードオーロラソースもどきを作る。横文字は長くて嫌いだ。もどきと芋、胡椒に粉末鶏がらだしを和えて、それっぽくパセリも散らす。それっぽいのが出来た。

程よくビールも冷えた。麻雀最強戦を観ながら飲む。対局の様子も勿論気になるが、実況解説のおじさんっぷりが良い。麻雀に纏わる”おじさん”という文脈、どこから来ているのだろうか。今度調べよう。

気づいたら寝ていた。起きてから備忘録のように書いた。

乱文失礼。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?