映画『幸福なラザロ』(2018年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『幸福なラザロ』は、
イタリアのある村で起きた実際の詐欺事件をもとに、現代の幸福とは何かを問う映画です。
現実と神秘が交錯する世界をイタリアの新鋭女性監督アリーチェ・ロルヴァケルが描きます。映画のキャッチコピーのとおり「圧倒的な幸福感に満たされる」のか、ぜひその心でご確認ください。
キャスト
・アドリアーノ・タルディオーロ(ラザロ)
小作人の青年
・アルバ・ロルヴァケル(アントニオ)
ザラロと同じ村で暮らしていた女性
・アグネス・グラツィアーニ(若い頃のアントニオ)
・トマソ・ラーニョ(タンクレディ)
かつて村を牛耳っていた伯爵夫人の息子
・ルカ・チコヴァニ(若い頃のタンクレディ)
映画『幸福なラザロ』の見どころと感想
とあるイタリアの村でタバコ作りに励む村人たち。その生活は貧しく、数十人が肩を寄せ合うように暮らしています。その中でもひときわ貧しい青年ラザロ。村人のなかには不平を言わないラザロに重労働を押しつける者も。
そんなある日、領主の伯爵夫人とその子供たちが村を訪れます。伯爵夫人の息子タンクレディと親しくなったラザロは、タンクレディが企てる狂言誘拐に協力させられることになります。
が、それがきっかけで、この村の真実がー。
ネタバレで面白さがなくなる類の映画ではありませんが、できることなら何もバラしたくない。でもこの心のモヤモヤを語りたいのでもう少しだけ。
この村では、小作人制度が廃止になったことを隠蔽した領主が村人の労働力を搾取していたのです。そのことが領主の息子タンクレディの狂言誘拐をきっかけに世に知られることになり、領主の伯爵夫人は逮捕され、村人は解放されます。
序盤から「この話はどこの国のいつの時代の話なんだ?携帯持ってるし……」と思いながら見ていたので、なるほど、と。 が、この事件当時ラザロは行方不明中。しばらくして再会するラザロと元村人ですが、彼らの生きる現代社会の現実はー。(あとはネタバレなしです)
評)無垢さや純粋さって、実はとっても怖い
ちょっと頭の足りない純粋な青年ラザロ。人を疑うことも知らず、自分がいいように扱われているなんて思いもしない。同じイタリア映画の名作『道』のジェルソミーナのような存在です。なので、てっきり心の汚れた人間たちがラザロの美しい心に触れて真の幸せを知るー、といったお話かと思いきや、でもないのですよ、これ。
映画のPRにある「圧倒的な幸福感に満たされる」って、私はそんな気持ちにはなれませんでした。
無垢で純粋すぎるラザロを見ていると不安になるし、ちょっとイラっともする。元村人と再会して以降のラザロには怖さすら感じる。
復活の象徴される聖人ラザロと同じ名前でーとか、要所で登場する狼の意味はー、といった解釈どころがたくさんあるようなので、それら理解してなんとかこの映画を「わかりたい」と思う。
けれども、そうやって「わかる」ことの意味があるのだろうか。ラザロの無垢さや純粋さが怖いし、無垢さが無惨に傷つけられていく現実はさらに怖い。今はそんな私なりの純粋な思いを大切にしたいと思います。
こんなに悩ましい映画を撮ったアリーチェ・ロルヴァケル監督。アントニオ役のアルバ・ロルヴァケルはその姉。両者要注目!
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