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映画『ロスト・ドーター』(2021年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:ロスト・ドーター
原題:The Lost Daughter
製作年:2021年 アメリカ・イギリス・イスラエル・ギリシャ
監督:マギー・ギレンホール

映画『ロスト・ドーター』は、

海辺の町をバカンスで訪れた大学教授レダが、ある若い母娘との出会いを通じて自身の過去を見つめ直すストーリーです。

「母性」を崇めたり美化したりすることなく、徹底して不確かなものとして描く力作。マギー・ギレンホールの初監督作品。

キャスト

・オリヴィア・コールマン(レダ・カルーソ)
大学教授 ギリシャでバカンスを過ごす

・ジェシー・バックリー
若き日のレダ

・ダコタ・ジョンソン(ニーナ)
レダと知り合う子連れの女性

・ピーター・サースガード(ハーディ教授)
若き日のレダの不倫相手

・エド・ハリス(ライル)
レダが滞在する部屋の管理人

映画『ロスト・ドーター』の見どころと感想

Netflix

大学教授うのレダ・カルーソは、バカンスでギリシャの海辺の町を訪れています。ふと目にとまったのは子連れの若い女性ニーナ。数日後ニーナの親族らでにぎわうビーチで、娘エレーナが行方不明に。その捜索を手伝うレダは、岩場でひとり遊んでいるエレーナを発見します。

このことを通じて少しづつ会話をするようになるレダとニーナ。
しかし、レダはニーナの姿にかつての自分を重ねて見ていました。

打ち込みたい研究と子育ての狭間で、レダがした過去のある決断とはー。そして今、レダはそのことをー。

評)「母性」とは不確かなもの 微妙な心理描写が冴える

バカンスを過ごす現在と、子育てに追われてた過去の日々を幾度となく行き来するストーリー。危うげで脆さを掻き立てる手持ちのカメラワーク。全体を覆う青く静かなトーンと抒情的な音楽。そして意味深なモチーフたち。その一つ一つにレダの心を投影していきます。

ギリシャ神話『レダと白鳥』からとった主人公の名前レダ。そのレダが研究したイェイツの詩は、レダと教授の関係とオーバーラップします。子どもの人形。ヘビのように切らずに剥いてとせがまれる果物ー。これらは「母」から「自分」、そして「娘」につながる女性性や母性の業を描いているように思えます。

子育てに協力しなかったレダの夫。人妻と知りつつ関係を持った教授。ニーナの支配的な夫。そのニーナと関係を持っている学生。バツイチでひとりで暮らす別荘の管理人。そうした男性たちの存在は、レダに女性性に縛られない生き方をもたらすかのよう。

女性性や母性は崇高なものでもなければ美しいものでもない。まして「本能」などとは言い難い不確かなものではないか。

冒頭のシーンにつながるクライマックスは「贖罪」とも、ある種の「開き直り」とも取れる微妙な心理。その巧みな描写はこの映画の見どころです。

オリヴィア・コールマンはもちろん、若い頃のレダの悲喜を演じたジェシー・バックリーが素晴らしい!


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