見出し画像

映画『わたしはロランス』(2012年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:わたしはロランス
原題:Laurence Anyways
製作年:2012年 カナダ・フランス
監督:グザヴィエ・ドラン

映画『わたしはロランス』は、

女性になりたい男性とその恋人の10年にわたるラブストーリーです。周囲の偏見と戦うロランスを理解し、ともに生きようとする恋人フレッド。しかしー。

当時23歳のグザヴィエ・ドランが描く繊細な人間模様と芸術的映像美は息を呑むばかり。長尺(2時間48分)を感じさせない圧巻の1本です。

キャスト

・メルヴィル・プポー(ロランス・アリア)
35歳 高校の国語教師 女性になることを決意する

・スザンヌ・クレマン(フレッド・ベレール)
ロランスの恋人 映画製作に従事

・ナタリー・バイ(ジュリエンヌ・アリア)
ロランスの母親

映画『わたしはロランス』の見どころと感想

カナダのモントリオールで高校の国語教師をしているロランス。授業の評判も良く、論文で賞をもらうなど傍目には順風満帆の人生を送っています。

が、ある日恋人フレッドに「これまでの自分は偽りだった。女になりたい」と告白します。動揺しロランスを責めるフレッド。しかしその思いを受け入れ、ともに生きていくことを決意します。

化粧をし、女性の服装で授業を始めたロランスは学校をクビに。バーでからまれケガをし、母親に救いを求めて電話をしますが会ってもらえず失望。偶然居合わせケガの手当てをしてくれたゲイと、その友人らと知り合い心のよりどころ見つけます。

しかし、次第にフレッドとの関係がぎくしゃくし始めます。フレッドもまたあることが原因で失意の底にあり、ロランスとの距離をおくことを考え始めていました。

やがて別の男性と結婚し、子どもを産むフレッド。ロランスもシャーロットという恋人と暮らすようになりますが、フレッドへの思いは消せずー。

数年後2人は再会しますがー。

評)ウエットなテーマを圧倒的な「美」で描くグザヴィエ・ドラン監督の傑作

トランスジェンダーの主人公を扱った映画は少なくありません。周囲の偏見や蔑視、ときには暴力にさらされる不遇さはこの映画でも描かれています。

2人で立ち寄ったレストランで無神経な言葉をかける初老のウエイトレスに対し、恋人フレッドが激高するシーン。スザンヌ・クレマンの熱演が印象的なこのシーンに象徴されるように、この映画は無神経な社会への怒りだけではなく、当事者の心の葛藤に光が当てられています。

ロランスを愛するがこそ、そのままのロランスを受け入れようとするフレッド。が、それは決して簡単なことではありません。一方のロランスは「自分らしく生きていく」と決めたものの、周囲の人を悩ませ傷つけていることに苦悩していきます。わかり合うことが、ともに生きることが最善の選択なのか。

とても重く、ウエットになりがちなテーマながら、グザヴィエ・ドラン監督はそこに圧倒的な「美」を設えました。ファッション、インテリア、街の風景のいずれもが美しく、野暮な人間の無神経な干渉(鑑賞)を拒んでいるかのよう。グザヴィエ・ドラン、おそるべし。

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,972件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?