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映画『ギター弾きの恋』(1999年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:ギター弾きの恋
原題:SWEET AND LOWDOWN
製作年:1999年 アメリカ
監督:ウディ・アレン

映画『ギター弾きの恋』は、

才能がありながら傲慢で自分勝手な態度で周囲を翻弄するギター奏者の男を描いた物語です。

ジャズ愛好家でミュージシャンでもあるウディ・アレンが描く、音楽と音楽家の「業」とはー。

キャスト

・ショーン・ペン(エメット・レイ)
天賦の才能に恵まれたジプシージャズのギタリスト

・サマンサ・モートン(ハッティ)
口のきけない娘

・ユマ・サーマン(ブランチ・ウィリアムズ)
上流階級の女性

・アンソニー・ラパーリア(アル・トリオ)
ジャズクラブの用心棒

映画『ギター弾きの恋』の見どころと感想

Sony Pictures Classics / Photofest / ゲッティ イメージズ

舞台は1930年代のシカゴ。マヌーシュジャズの天才ギタリスト、エメット・レイは、その演奏で人々を魅了していました。

が、エメットは娼婦の元締めや女遊びなど破滅的な一面を持ち、性格も傲慢で周囲を困らせてばかり。

そんなある日、エメットは口のきけない娘ハッティと知り合います。ハッティの純粋でまっすぐな愛に心を動かされるエメットですが、あっさり上流階級の美女ブランチに乗り換え、結婚。しかしブランチも自己中心的な性格で、エメットとはそりが合わずブランチの浮気がもとで破局します。

ハッティの元に戻るエメットですがー。

評)「自分はこんなもんじゃない!」という作り手の渇望と葛藤

つまり、イタイ男の話ですよ。

せっかくの才能に恵まれていながら粗暴で自分勝手な行動で周囲を困らせてしまう。たぶんエメットは自分の才能を信じ切れていなかったんじゃないか、と思うんですよね。

マヌーシュジャズの名ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルト(こちらは実在の人物です)に憧れ、ジャンゴの姿を見るたびに失神するエメットの姿はもはやギャグなんですが、エメットの周囲の人に対する傲慢で不遜なふるまいは、自分の才能に溺れているからではなく「自分はこんなもんじゃない」という渇望の現れにも思えるんですよね。

周りが称賛すればするほどイラ立ってしまい、それに甘んじているように映る自分自身を壊そうとするー。……、これが芸術家なんでしょうな。

ウディ・アレンはこうした「作り手の葛藤」を多くの作品で描いています。その葛藤を笑いながらも愛する作品が多いなか、この映画は結構シリアスでイタイ。笑えるシーンもあるんだけど、それがかえって悲しくなるんです。

エメット演じるショーン・ペンは、私の好みとしては少々やりすぎの感もありますが(本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネート/ちなみに受賞したのは『アメリカン・ビューティ』のケヴィン・スペイシー)ギターを弾く姿(たいそう練習したそうな)は、ホントにセクシーで見入ってしまう。

が、この映画で目を引くのは口のきけない娘、ハッティを演じたサマンサ・モートン(こちらは助演女優賞にノミネート/が、『17歳のカルテ』のアンジェリーナ・ジョリーが受賞)でしょう。

サマンサ・モートンの表情に汚れちまった心を揺さぶられたのはエメットだけじゃないっ!私もよ!


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