見出し画像

おすすめのワイン映画 ザックリとした見どころを紹介します

ワインが好きな方、これからワインを楽しみたい方におすすめの「ワインにまつわる映画」とその見どころをご紹介します。


ワイン映画には家族の物語がつきもの!?「家族問題系」ワイン映画

ワインにまつわる映画でなぜか多いのが家族、とくに父と子の物語です。
ワイン作りに命を懸ける職人気質の父、そんな父に反発して都会に出て別の仕事に就く息子。しかし、父が病に倒れ実家に戻ることになる息子。そこでー。

こうしたありがちなストーリーの「家族問題系ワイン映画」(←勝手に命名しております)同じように思えても、1本1本には微妙な違いがあります。その違いを楽しみたい。そう、ワインを楽しむように!

映画『ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの軌跡』(2008年/アメリカ)

ワイン映画の必見の1本はコレ!映画『ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの軌跡』(2008年)

のちに”パリスの審判”と呼ばれる1976年のワインのブラインドテイスティングと、そこに至るまでのカリフォルニア、ナパのワイン醸造家の物語です。

傾きかけたワイナリーにやってきたイギリス人批評家。カリフォルニアワインの良さを世に知らしめるためにコンテストへの出品を勧められますが、頑固父はこれを拒否。父と反目する放蕩息子はなんとか出品しようと奔走しますがー。

ワインの話やブラインドテイスティングの面白さも充分。父子の確執に息子の恋愛も加わり、そこに飄々と絡んでいく名優アラン・リックマン演じる批評家の存在感。

映画の内容は「ワインはフランスだけじゃない!」ですが、この映画をワインに例えるなら、フランス、ボルドー/メドック地区の長期熟成タイプの赤ワイン。単独品種では出せない絶妙なバランスの取れた1本です。

映画『ブルゴーニュで会いましょう』(2015年/フランス)

Jalil Lespert, Gérard Lanvin

こちらも父と息子のストーリー。経営難に陥った実家のワイナリーの再建に乗り出す息子。息子はワインの人気批評家であるもののワイン造りは素人同然。戻ってきた息子を受け入れず、なぜか船を作って家を出る父。息子は妹の夫で長年父を支えてきた職人の力を借りて古代式のワイン造りで起死回生を図ろうとします。

そして隣家の経営絶好調のワイナリーにも後継者問題が。そこに恋愛も絡みー。

もうちょっとワインのツッコんだ話があっても良かった気もしますが、ともあれあのワインは美味しそう。例えるならブルゴーニュの地区名ワイン(AOCブルゴーニュ)といったところでしょうか。ぜひ、お試しください。

映画『トスカーナ』(2022年/デンマーク)

こちらも父と息子。厳密にいえばワイン映画ではありませんが、イタリアワインの名産地トスカーナのレストランが舞台なだけにワインは欠かせません。

疎遠だった父が遺した(←このパターンもワイン映画には多い)レストランを売却するためにトスカーナに帰郷したデンマークの一流シェフ。さっさと片付けようとしますが、そこでの出会いがー。

こちらの見どころは美食と絶景です。ワインの味を引き立たせ、そしてワインが料理の味を引き立たせるマリアージュを楽しめる1本。例えるなら、トスカーナの肉料理に合うキャンティ・クラシコです。

映画『おかえり、ブルゴーニュへ』(2017年/フランス)

こちらも父の遺産系ワイン映画(←もちろん勝手に命名しています) 相続するのは三兄妹。

父に反発して家を飛び出した兄が帰郷。父と一緒にワインを造っていた妹と、大手ワイナリーに婿入りした末弟。それぞれに問題を抱える彼らに莫大な相続税が課せられー。

近年価格が高騰する一方のブルゴーニュワイン。実家がブルゴーニュのワイナリーなんて最高じゃん、と思いますが、この映画に出てくる相続税の問題はホントのようで、在庫やついには畑を手放さなくてはならない家族経営のドメーヌ(自社畑を持ち栽培と醸造を行う小規模生産者)もあるといいます。

そんな背景と通年のワイン造りをしっかり見せてくれるこの映画。たいへん満足度の高い1本となっております。ギリ手の出せるブルゴーニュの村名ワインといったところでしょうか。

映画『プロヴァンスの贈りもの』(2006年/アメリカ)

こちらも同じく相続系。フランス南部プロヴァンスのワイナリーの叔父が他界。遺産を相続するのはロンドンで金融トレーダーをしている甥っ子。サッサと売却するつもりでプロヴァンスを訪れるが、かつてそこで過ごした少年時代を思い出しー。

って聞くといい話、いい映画、って思うでしょう。しかも主人公の甥っ子を演じるのはラッセル・クロウですから。しかし、これはワインに例えるならブショネですよ。(ブショネとは、コルクの不良によって異臭のするワイン。欠陥品)売るなら売る、継ぐなら継ぐでサッサとせんかいっ!とイライラする私をよそに、ラッセル・クロウは美女マリオン・コティヤールにニヤけっぱなしで、とうとうワインを造りません!(ネタバレ、スイマセン)

監督は自身もブドウ農園を持っているというリドリー・スコット監督。監督がまったくの無名なのに高品質で高値で取引されるワインの話を聞いたことからこの映画ができたそうな。なのに、いくらなんでもワインの話、少なすぎやしませんか?な1本です。

映画『ブドウ畑で離さないで』(2017年/アメリカ)

お口直しに、サクッと軽めのこちらを。
同じく叔父の遺産系で舞台はカリフォルニアです。

叔父の遺産相続のためカリフォルニアに戻ったNYのキャリアウーマン、ダイアナ。現在、畑の管理を任されているのは元カレで実質養子状態のセス。叔父は「2人で一緒にブドウを収穫することが相続の条件」という遺言を残していました。

ちょっと恥ずかしい邦題と「どうせくっつくんでしょう」という甘い匂いがプンプン漂うロマコメ。キライじゃないです。

ワインに例えるならカリフォルニアの白、スッキリとしたソーヴィニヨン・ブランでいかがでしょうか。

映画『ワインは期待と現実の味』(2020年/アメリカ)

もう1本珍しい映画を。
家業のBBQ店を継がせたい父とソムリエになりたい息子の物語。父と息子の「家族問題系」ではあるものの、この映画はワインの”醸造”ではない部分を切り取っているのが面白い。

主人公が目指すのは最難関資格のマスターソムリエ。が、これまで何をやっても長続きせず、すべてを人種(アフリカ系)や生育環境(といっても結構裕福です)のせいにしてきたようなところのある息子。

いや、悪いヤツじゃないんですよ。むしろその推しの弱さは好感さえ持てます。そんな主人公を演じるのはママドゥ・アティエ。テイスティングの練習でワインを吐き出すシーンも多いのですが、それも含めて飲み方が美しい。

知識ネタも多く、そこにHIPHOPミュージックとジョークを効かせた会話が加わる。ほかの映画とはちょっと違う味わいは、例えるならアパッシメント製法のワイン。収穫後、数ヶ月陰干ししたブドウから造られる濃密でシルキーな舌触りのちょっとくせになるワインです。

この映画を見たらワインがもっと好きになるはず。もちろんワインに興味のない方もぜひお試しいただきたい1本です。

恋愛あり、友情あり、事件あり!? 「非家族系」ワイン映画

ワイン映画は家族の物語だけではありません。恋愛あり、友情ありのワイン映画もおすすめです。

映画『サイドウェイ』(2004年/アメリカ)

ワイン映画の定番といえばコレです。
バツイチの小説家志望の中年男(ポール・ジアマッティ演)が、結婚を控えた親友とともにカリフォルニアのワイナリーをめぐる物語。このダメ男を再生させるのが魅力的な女性との出会いと極上のワインです。

正直、ジアマッティでは(失礼)恋愛ものとしての没入感は得られにくいのですが、人生、楽しいときはもちろん、うまくいかないときにもワインを、と思えてくる1本です。

飲みやすくお財布にもやさしくて質も良い、いつもストックしておきたい「チリカベ」ことチリのカベルネ・ソーヴィニョン。そんなワインのような映画です。

その日本版リメイクもおすすめです。

映画『サイドウェイズ』(2009年/日本・アメリカ)

こちらは冴えない男を小日向文世。飲酒運転しまくりのオリジナルに比べ、ほどよく上品な仕上がりです。

なんといっても菊地凛子がイイ!例えるならもちろん日本が誇る白ワイン甲州です。

映画『ワイン・カントリー』(2019年/アメリカ)

ちょっと問題作なコレも紹介しておきましょう。
50歳の誕生日を祝うために集まる6人の女友達の映画『ワイン・カントリー』。

記念旅行にワインの産地ナパヴァレーを訪れますがー。五十路の女が集まってワインの産地に行く、というだけでただならぬ事態になることが想像できますが、この映画はその想像をはるかに超えてきます。しかもワインの話は少なめ。が、中年女性の痛々しい姿と80年代の音楽に親しみを覚えずにはいられません。

個性的でコクがあって飲みごたえのあるシラー種のワインといったところでしょうか。私がつい飲み過ぎてしまうヤツです。みなさまもご注意を。

映画『クラッシュ/ワイナリー殺人事件』(2015年/オーストラリア)

問題作といえばこちらも。

舞台はオーストラリア。落ちてきたワイン樽で頭を打って死んだ父。そのことを不審に思った過去に訳アリの長女がー、という2時間ドラマ風サスペンス。

思いのほか血みどろで、もうそこでワインを造るのは諦めてほしいと思う1本です。

ワインのドキュメンタリー映画

ワインにまつわるドキュメンタリーは、フィクション映画に比べかなりマニアックです。そのいくつかをご紹介します。

映画『ワイン・コーリング』(2018年/フランス)

南フランスの自然派のワイナリーたちを描くドキュメンタリー。

自然派ワインとは、有機栽培で育てたブドウを添加物を使わずに造られるワイン(有機ワイン、オーガニックワイン、ナチュラルワイン、ヴァン・ナチュールとも呼ばれます)のことです。

自然派というと穏やかなイメージがありますが、パンクバンド、ザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」を模したタイトルといい、全編に流れるパンクやロックから伝わるのは反主流主義。登場する醸造家がめっちゃ喫煙しているのは気になりましたが、ラフな姿勢からは「本来ワイン造りってのはこういうもんだ」という作り手の信念が感じられました。

SDGsの観点からも注目される自然派ワイン。「身体に良さそう」「悪酔いしない」という話も聞きますが経験上、飲み過ぎれば当然酔いますのでご注意を。

映画『世界一美しいボルドーの秘密』(2014年/オーストラリア・中国・フランス・イギリス・香港)

ワインの世界的名品ボルドーワインをめぐるドキュメンタリー。ワインの話というよりもワインビジネス、お金の話です。

中国をはじめ新興国の成金たちが投資目的でボルドーワインを買いあさる。ワインが食い物にされる光景はちょっとゲンナリしてしまいます。とはいえ、これもワインの世界です。

ナレーションは、映画『プロヴァンスの贈りもの』でワインを造らずじまいだったラッセル・クロウです。

映画『ソム』(2012年/アメリカ)『ソム:イントゥ・ザ・ボトル』(2015年)『ソム3』(2018年)

世界最難関のマスターソムリエ資格に挑む受験生に密着した1作目。シリーズ2作目はワインの歴史や醸造をめぐる社会背景を、3作目(残念ながら未視聴です)はブラインドテイスティングのお話です。

「楽しんで飲む」とは別次元の話。かなりマニアックで、ワイン好きってこういうイメージ持たれそうでイヤだな、というシーンがたくさん出てきます。

ソムリエ資格を目指す面々はたまたまかもしれませんが全員男性。誰かの家に集まってテイスティングの練習をするのですが、翌朝、吐器の片付けをするのは奥さんや彼女。ココ、激怒ポイントです。

以上です。今宵、ワインを飲みながら映画をお楽しみください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?