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映画『エリザベス』(1998年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:エリザベス
原題:Elizabeth
製作年:1998年 イギリス
監督:シェカール・カプール

映画『エリザベス』は、

メアリー1世統治下での厳しいプロテスタント弾圧を経て、メアリーの死後女王となったエリザベスが、国家の安泰のため結婚し世継ぎを生むことを求められるなか、ローマ教皇ら内外の反乱分子と戦い「国家と結婚する」決意に至るまでの姿を描いた作品です。

主演のケイト・ブランシェットは、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞/英国アカデミー賞主演女優賞を受賞。腹心ウォルシンガムを演じたジェフリー・ラッシュは、英国アカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

キャスト

・ケイト・ブランシェット(エリザベス1世)
ヘンリー8世とアン・ブーリンの間に生まれた王女

・ジョセフ・ファインズ(ロバート・ダドリー)
エリザベスの恋人的存在
宮廷では要職に就き、エリザベスの引き立てによって昇進
9日間の王女事件*でロンドン塔に収監されていた。

・ジェフリー・ラッシュ(フランシス・ウォルシンガム)
エリザベスの側近 諜報活動に長けている

・リチャード・アッテンポロー(ウィリアム・セシル)
エリザベス政権下の国務大臣

・クリストファー・エクルストン(ノーフォーク卿)
メアリー1世を支持する公爵
ヘンリー8世の妻(第2妻アン・ブーリン/第4妻キャサリン・ハワード)の叔父

・キャシー・バーク(メアリー1世)
エリザベスの異母姉
ヘンリー8世、エドワード6世の死去後、イングランド王位につく

・ヴァンサン・カッセル(アンジュー公フランソワ)
フランスの貴公子 エリザベスのお相手候補 女装癖あり

・ファニー・アルダン(マリー・オブ・ギース)
後のスコットランド王となるメアリー・スチュアートの母

映画『エリザベス』の見どころと感想

Polygram Filmed Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

ヘンリー8世没後の16世紀イングランド。カトリックを信仰する異母姉メアリー1世は、プロテスタントに対し厳しい弾圧を行い多数の信者を火刑に処していました。

その頃、トマス・ワイアットの反乱に加担した罪に問われたエリザベスはロンドン塔に収監。その後、証拠不十分で幽閉を解かれたエリザベスは、メアリー1世の病死後、25歳で女王の座につきます。

世継ぎを求められるエリザベスの元には多くの結婚話(スペイン王フェリベ2世やフランスのアンジュー公)が持ち込まれますが、あえて返事をうやむやにするエリザベス。そんなエリザベスの傍らにはいつもダドリーがおり、二人が恋仲にあることは周知の事実となっていました。

一方、国の情勢は不安定で、カトリックであるノーフォーク卿の陰謀やローマ教皇による女王暗殺計画がー。これをスパイ活動によって封じ込めたのはエリザベスの側近ウォルシンガム。

ウォルシンガムは、スコットランド王に嫁いだメアリー・オブ・ギース(後のメアリー・スチュアートの母)の陰謀にとどめをさしエリザベスを守り抜きます。

評)高貴な美しさで魅了 ケイト・ブランシェットの出世作

史実に基づく話なので、いくつか補足をしておきますと、

エリザベス1世の父、ヘンリー8世は生涯6人の奥さんを持った王で、エリザベスの母は2番目の妻、アン・ブーリンです。

このアン・ブーリンについては、映画『ブーリン家の姉妹』(2008年)でその生涯が描かれています。

メアリー1世の母はヘンリー8世の最初の妻キャサリン・オブ・アラゴン。キャサリンはアンによって王妃の座を奪われたようなもので、その恨みはメアリーに受け継がれています。カトリックの信者であるメアリーはプロテスタントを次々に火あぶりにし(この映画の冒頭のシーンです)、その残虐さから「ブラッディ・メアリー(血まみれのメアリー)」と呼ばれています。

*9日間の王女事件とは
ヘンリー8世の没後、はじめに王位についたエドワード6世(ヘンリー8世の3番目の妻ジェーン・シーモアの嫡男)はもともと病弱で15歳で死去。王位継承権はメアリー→エリザベスにありましたが、権力を持つダドリー一族はヘンリー8世の妹の孫ジェーン・グレイと末息子(ロバートの弟)を結婚させ、ジェーンに王位継承権があることをエドワード6世に承認させていました。

親のエゴで無理やり王位につかされたジェーンですが、メアリーを擁立するカトリック教徒にとらえられたのち処刑されてしまいます。ジェーンが王位にあったのはわずか9日間でした。

王位に就いた当時のエリザベスは、迷いがちなところもあって枢密院のメンバーにも「小娘扱い」されてしまいます。が、だんだん女王らしくなり周りに引きずられることなく英断を下していきます。恋仲のダドリーが実は結婚していたー、と知ったときも「侍女を妾にするのはいいが、私を一緒にするな!」と一蹴。

で、誰とも結婚せず、髪を切り白塗りの化粧をして「国家と結婚」を宣言するのです。

イギリス王室の歴史の中でもドラマチックなテューダー朝。この映画は宗教対立や周辺諸国との争いよりも、エリザベス1世の(ダドリーとの)恋が中心にあるため、多少時代の前後関係は理解できていなくても充分楽しめます。(もちろん理解できていればより楽しいのでしょう)

若干、史実とは出来事の前後関係が違うようで、史実ではアンジュー公の結婚の申し出はエリザベス1世が40代の頃ですが、この映画は、20代~30代のエリザベス1世として描かれています。

そのエリザベス1世を演じるケイト・ブランシェットの高貴な美しさは圧巻です。そしてエリザベスのために陰で動くウォルシンガムの存在感が半端ない。私もウォルシンガムが欲しい……。

そしてこの10年後を同じ監督、主要キャストで描いたのが『エリザベス・ゴールデン・エイジ』です。


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