映画『それでも夜は明ける』(2013年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『それでも夜は明ける』は、
奴隷として売られた自由黒人ソロモン・ノーサップが、解放されたのちに綴った伝記『Twelve Years a Slave』を映画化したものです。本作は、第86回アカデミー賞の作品賞をはじめ、多くの映画賞を受賞しています。
キャスト
・キウェテル・イジョフォー(ソロモン・ノーサップ / プラット)
NYの自由黒人でありながら拉致され奴隷となる
・マイケル・ファスベンダー(エドウィン・エップス)
奴隷を使う農場主
・ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・フォード)
農場主 バプティスト派の聖職者
・ポール・ダノ(ジョン・ティビッツ)
ウィリアムの農園の監督官
・ポール・ジアマッティ(セオフィラス・フリーマン)
奴隷貿易の元締め
・ルピタ・ニョンゴ(パッツィー)
エップスの農場の奴隷
・サラ・ポールソン(メアリー・エップス)
エップスの妻
・ブラッド・ピット(サミュエル・バス)
カナダ人大工
映画『それでも夜は明ける』の見どころと感想
1841年、ニューヨークで自由黒人として暮らすソロモン・ノーサップ。バイオリニストとしての腕を見込まれたノーサップは、ある2人組の男たちに周遊公演の話を持ち掛けられます。が、その男たちに拉致され奴隷商に売られてしまいます。ソロモンは自由黒人であると主張しますが、聞き入れられることはなく”プラット”と名付けられます。
聖職者で温厚な農場主フォードに買われたノーサップは、材木を運ぶ水路を作ることを提案しフォードに認められます。が、これが農場の監督官ティビッツの妬みを買い暴力の標的に。ノーサップの身を守るため、また農場の資金確保のため、フォードはノーサップを別の農場主エップスに売却します。
フォードと違いエップスはかなり冷酷な人物。その農場ではー。
評)白人VS黒人だけではない複雑な社会背景を含むがゆえ
19世紀半ばまで続いた奴隷制度。この映画の舞台は、ヨーロッパからの奴隷貿易が停止され、奴隷不足を補うために国内で黒人の誘拐、売買が横行していた頃のアメリカです。
同じ時代の奴隷制度を描いた映画『バース・オブ・ネイション』(2016年)が、全編に渡って白人に対する黒人の抵抗を描き、奴隷制度の苛烈さを訴えるのに対し、この『それでも夜は明ける』は、白人VS黒人だけではない複雑な社会背景を含んでいます。それだけにちょっとモヤモヤしてしまうのです。
生きて還ってきた(から手記が残っているわけで)という前提で見てしまうからかもしれませんが、解放に向けてノーサップ自身がそれほど難儀したようには見えない。農場主エップスの非道っぷりや女性の奴隷パッツィーの苦境は充分に伝わる一方、ノーサップは、「自分は奴隷じゃない、自由黒人なんだ」の一点張り。運よくやってきたカナダ人に救われるというー。
ノーサップが農場を走るパケ写のイメージから、何度も逃走を図ったけど失敗してー、と思いきやそうじゃない。なんと、お迎えの車が来る。これに自分だけが乗っていいのか、パッツィーや他の奴隷はー、という逡巡も感じられず、サッサと乗り込むノーサップ。
ラストのテロップで、解放されたノーサップが奴隷解放運動に尽力したことや、死については謎(再度奴隷になったのでは、という匂わせ)という史実を伝えられてもこれで良かったとは思えませんし、映画のデキとしてもどうなんだ、と。これがオスカーを受賞、というものどうなんだ、と。
見どころは鬼畜農場主を演じたマイケル・ファスベンダー。で、その妻をサラ・ポールソン。この妻のパッツィーに対する女の嫉妬は、ある意味、奴隷への冷遇よりも怖い。そんなこんなで奴隷制度の問題を描いた作品としてはどうなんだ、という1本です。ぜひ。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?