『コロナ禍、貧困の記録』 雨宮処凛 2020年この国の底が抜けた
2021年。1年以上も続くコロナ禍は私たちの生活を大きく変化させました。
ソーシャルディスタンスやマスクの着用、リモートワークなどこれまでと異なる生活様式に不自由さを感じながらも経済的にはそれほどのダメージがない人たちがいる一方で、仕事や住む場所を失い生活に困窮する人々が増えている現実があります。
本書『コロナ禍の記録 2020年この国の底が抜けた』は、そうしたコロナ禍の貧困のルポルタージュです。
『コロナ禍、貧困の記録』の内容紹介
想像以上に厳しい、コロナ禍の貧困の現実
本書で描かれている貧困の現実は、想像以上に厳しいものです。
所持金が数百円しかない、数日まともに食べていない、住むところも失い路上にいるしかない人々。
こうした人々への支援として筆者は生活保護申請を勧める。が、申請に同行して直面する福祉事務所の対応は厳しい。コロナ禍であっても相部屋、大部屋の「無料低額宿泊所」に押し込められるケースも少なくないという。
生活保護を受給することに強い抵抗を示す人も多い。その背景には、実はそれほど多くもない(全体の2%ほどしかない)不正受給に対するバッシングと、それを煽動するかのような政治家の発言がある。理解なきバッシングは自殺に追い込むことになる。
一度路上生活になった人が再び職や住居を持つことは容易ではない。もはやこの国は「セーフティネットが機能しない社会」になっている。すでに底が抜けていたこの国の本当の姿がコロナ禍で明らかになった、と。
評)自己責任論に侵されない「助け合う」社会への希望
まえがきにもあるように、本書はコロナ禍の貧困の実態だけでなく、その「解決策」も示しています。経済的に困窮してもなんとかする方法、死なない方法はあるとし、利用できる社会サービスを丁寧に紹介する本書は、コロナ禍の「希望」の記録でもあるのです。
筆者は格差や貧困問題に取り組む作家、雨宮処凛氏。
以前読んだ、相模原事件を扱った対話集『この国の不寛容の果てに:相模原事件と私たちの時代』にも共通する、アンチ自己責任論。今読むべき1冊です。
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