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映画『アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判』(2022年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判
原題:Argentina, 1985
製作年:2022年 アルゼンチン・アメリカ
監督:サンティアゴ・ミトレ

映画『アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判』は、

民政化後もなお軍が強い影響力を持つ1985年のアルゼンチンを舞台に、その軍による犯罪を暴く検事らの戦いを描くヒューマンドラマです。とにかく正義がほとばしっている、熱い1本です。

キャスト

・リカルド・ダリン(フリオ・セザール・ストラッセラ)
検察官

・ピーター・ランサーニ(ルイス・モレノ・オカンポ)
副検事

・アレハンドロ・フレッチナー(シルヴィア・ストラッセラ)
フリオの妻

映画『アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判』の見どころと感想

(C)Amazon Studios

軍事政権が崩壊し民政化され2年が経った1985年のアルゼンチン。圧政下で行われた軍による犯罪の責任追及はビデラ元大統領まで及ぶことに。そして軍法裁判ではなく司法裁判で裁かれることになります。

が、今なお軍が強い影響力を持つアルゼンチン国内。
この危険な裁判の担当を打診されたフリオ・ストラッセラ検事は、家族の身を案じながらもこの裁判を引き受けることを決意します。

補佐を務めるのは副検事のルイス・モレノ・オカンポ検事。裁判の経験がほぼないオカンポ検事を軽んじるストラッセラに対し、オカンポは「筋金入りの人権派検事であるストラセラでは共産主義者という印象を与えかねない。むしろバックグラウンドを持たない自分を起用するべきだ」と説得します。

さらに思想的にも中立なロースクールの学生たちをサポートスタッフとしてリクルートし、裁判の挑むことにー。

評)アルゼンチンの近代史を踏まえて味わう「正義」の映画

アルゼンチンの近代史についてザックリとした補足を。

元スペインの植民地であった南米アルゼンチン。1800年代に入り革命運動の後、内戦を経て1862年にアルゼンチン共和国を設立しました。

近代化が進み政治や経済も安定。が、1900年代に入ると急進派と保守派の対立が鮮明に。前年の世界恐慌による経済の低迷も加わり1930年に軍事クーデターが勃発し、イリゴージェン大統領(当時)は失脚。その後第二次世界大戦を経て、軍人で左派ポピュリストのフアン・ペロンが大統領に。(余談ですが、このペロンの奥さんがマドンナの主演映画でも知られる”エビータ”エバ・ペロンです)。

独裁者となったペロンはクーデターによって国を追われますが、1973年に復権。が、その1年後に死去。その跡を継いだのは2番目の奥さんのイザベル(エバは33歳で病死)。アルゼンチン初の女性大統領でした。

このイザベルもまたクーデターによって失脚。クーデターを起こしたのがこの映画で裁かれる側のホルヘ・ラファエル・ビデラです。

ザックリと言いながら結構な量になりましたが、こうした背景を踏まえておくことがこの映画の理解には大切(という私は後付けで確認しました)。

クーデターによって幾度も政権交代したアルゼンチン。ビデラ政権を倒した今の社会もやがて腐敗するのではないか、そうなったときにふたたび軍の力によってー、という懸念から裁判に後ろ向きな人々。当初ストラッセラが乗り気になれなかったのもわかります。

そこを変えたのはオカンポ副検事。名前すらまともに呼んでもらえなかった(このあたりにストラッセラのオヤジ気質が伺えます)経験の浅いオカンポ検事です。一つの思想に毒されていない若いスタッフたちとともに新しい感覚でストラッセラを動かし、やがて社会を動かしていきます。

そしてストラッセラには家族に対する変化もー。

"正義vs悪"というより、検事側の正義と正義のせめぎ合い、正義を見逃さない正義、正義を支える正義に心打たれる映画です。

とにかく正義がほとばしっている映画『アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判』 おすすめです。


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