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無限の樹

くそっ…再生さえしなければいいのに…


いいよな人間は。耐えられないぐらい死にたかったら安楽死できるもんな。

僕は不死身で、人の気持ちがわからない。

そのせいで気味悪がられ、人に嫌われて生きてきた。

もう限界だ。不死身だって傷つけ続ければいつか再生が追いつかなくて死ねるはず…そう考えた俺は全身を切り刻もうと思い、手始めに腕を切り落とした。

あれっ…?いつもだったら普通の人間の肌に再生するはずなのに今日は変だ。

まるで木の表面のようにゴツゴツした肌に再生されていく。色も変だ。

ちょっと待ってくれ…俺は死んでしまうのか…嫌だ…こんな死に方嫌だ…

そうこうしているうちに切れた部分の再生が終わり、僕の腕の一部は木になった。

実験中止だ。

どうしよう…隠さないと……

仕方なく冬用の革の手袋をはめ、身支度を整え家を出た。

死ぬつもりだったから会社に行く気なかったのになぁなんて思いつつ、いつも通りの道を進み、駅で電車を待つ。

すると突然、高校生ぐらいの子が急に線路の方に走っていった。

「危ないっ」

……

どうやら僕は子供を救った代わりに死んでしまったようだ。

まぁ子供を救って死ねるならいっか…

あ、、あ…なんだか眠くなってきた……

………

……

目を覚ますと僕はビルよりも高い巨木になっていた。

そばには神社があり、たくさんの人間が僕の足元で踊ったり、騒いだりしている。

「いつもこの街を守ってくれてありがとうございます。これからもどうかよろしくお願いします」

「ありがたやーありがたや。」

「ねぇ、この木ってなんなの?」

「この木はね、神様なんだよ。昔々おじいちゃんが車に引かれそうになったとき突然木が伸びて助けてくれたんだってさ。だからこうやって皆でお祈りして大事にしているんだよ。」

「じゃあこの神様がおじいちゃんを守ってくれなかったらお父さんはいなかったの?」

「お父さんもいないし、お前もいないだろうね。」

「いい神様だね!!」

………

なんだよ。人間ってこんなに優しかったのかよ…

今だって生きてるけど、人間だったときにこの優しさを知りたかったよ…

でも死ななくてよかった。こんなにたくさんの人が俺を慕ってくれているのだから。




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