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【#33】散歩

土曜日、起きたら籠にいた。

トイレを済ませて外に出る。ここがどこかわからない。所持品は左腕の腕時計、右手の指輪、のみ。朝10時。財布もスマホも家の鍵もない。とりあえず歩いてあたりを見回す。大体の場所がわかる。家まで電車で1時間くらいの場所にいるらしい。お金はないので歩いて帰ることにする。帰っても家の鍵はないから入れないけど。歩きやすい靴を履いていて良かった。北西に進めば良さそう。歩き始める。しかし喉が渇いた。公園で水を飲む。また歩く。知らない道。地図を見つける。いつからか南に向かっていたらしいことが判明。どおりで同じような地名が終わらないなと思ってたんだ。引き返して北へ。行き詰まったら西へ。また北へ。昼に差し掛かる。しかし暑い。よりによって快晴。日に焼ける。この夏日焼け止め塗り忘れたことなんてまだなかったのに。髪の毛も熱い。暑い。雨じゃないだけましか。

歩き続ける。途中3回くらいの公園水休憩を挟み、見覚えのある道に合流。自転車でいろいろなところを徘徊していてよかったなと思う。あとは道なり。計4時間強、家に到着。さて。家の鍵は閉まっている。足の疲れ。近くの公園のベンチに腰掛ける。水を飲みたいのに子供が水飲み場で遊んでいる。土への侵食がすごい。川が出来そう。待つ。隣のベンチに近くの工事現場で警備をしていたおっちゃんが腰掛ける。声をかけてみる。スマホを貸してもらう。不動産屋へ電話をかける。不動産屋の電話番号が建物に貼ってあってよかった。自動音声の後、オペレーター。鍵を紛失したので業者に来てほしいと依頼。本人確認書類がいるらしい。手元に財布はない。でも家にあることは知ってる。本棚の上。家の鍵開けてくれたら本人確認できるよ、と訴えたものの対応できないと告げられる。長電話すまんおっちゃん。スマホを返す。

土曜日、15時。

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