見出し画像

エリアリノベーションから変わる街

「エリアリノベーション」って言葉、聞いたことありますか??建築勉強している人はなんとなく聞いたことある人もいると思います。

2016年に発刊されたこの本がきっかけとなり、この考え方(概念)が広がりました。

エリアリノベーションとしての取り組み自体は2000年代から日本各地で始まっているようで、例えば尾道(広島)、善行寺(長野)、問屋町(岡山)など、エネルギーのあるまちとして盛り上がっています。

僕自身、この本と出会ったのは3年前で最初は「へぇ~、そんなまちの作り方もあるんや~おもしろいなぁ」ぐらいの軽い気持ちで読んでいましたが、今自分がいる愛媛県・目黒地区で(株)サン・クレアが取り組んでいるプロジェクトに関わっていくうちに、
「あの本に書いてたことってこういう事か!」と。

自分は将来こういうことをしたいのかもしれない(いや、したい!)と直感がはたらいたので読み直しました。

このnoteでは「エリアリノベーション」の考え方を改めて自分の頭に焼き付けるために、本の紹介を兼ねてまとめていきます。


エリアリノベーションとは?

行政主導の「都市計画」という名の手法でもなく、「まちづくり」という言葉の下で行われる助成金や市民の自発的な良心に依存した手法でもない、
デザイン・マネジメント・コミュニケーション・プロモーションなどがバランスよく存在する、新しいエリアを作っていく手法
参照「エリアリノベーション 変化の構造とローカライズ」

リノベーションは単体の建築を再生することをいうが、あるエリアでそれが同時多発的に起こることがあります。それらが共鳴し合い、面展開を始めることでそのエリア全体の空気を変えていきます。

例えば大阪・昭和町では、ある1件の長屋が文化財に登録され、

「それならこの街にいっぱいあるぞ!」

ということで長屋がリノベーションされ、店が入ってエリアが盛り上がり始めます。

それを見た他の長屋を持つ大家さんが
「うちの長屋もやってくれないか」
と広がっていき、そういった過程を発信していく中で徐々にエリアにそういった動きが広がっていきました。

実際に、長屋をDIYして改修してSNSで発信をし、それが新しい人を呼び新しい店が生まれるなどの広がりも見られます。

***

また尾道ではある1人の女性がボロボロの空き家を買い取り、改修を進めながら同時にまちや暮らしの発信を続けるうちに、同じように空き家を改修したいという連絡が来るようになりました。

空き家の情報を収集しつつ、同時に改修したい移住者と空き家をマッチングするような活動も始め、大工や左官職人を講師としてワークショップを行ったりしました。

そういった活動を続けていくうちに尾道の斜面にある魅力的な店や風景が生まれたのです。

特長

①空間ができるプロセスの逆転

戦後からこれまで、まちや空間、場をつくるときには建築家やコンサルタントが全体の計画を立て、次に工務店やゼネコンが計画に沿って建物や公園などの空間や場所を作っていく。そして使い手に渡される。そんな順序で街が作られてきました。

上記とは逆に、この本で紹介されている尾道や問屋町などの空間のつくられ方は、まず使う人が使う場所や土地を見つけてきて、使い方(飲食店、宿、公園…)を探し出し、実践的な使われ方の発想から始まります。
次にどのように作ることが可能か、いくらでつくれるのか、いくらまでかけられるのかが即興的に決められます。

そして最後にそれをまとめるために建築家やデザイナーが図面やデザインの線を引き始めます。

***

このnoteを書いている数日前にサンクレアのクリエイティブチームの現場に居合わせたのですが、もうとにかくカッコいいし、楽しそうやし、圧倒された

「こういうイメージでいこうか」「こことここを繋げたらよくない?」「あぁー、いいっすね」「このワードがしっくりくるねぇ」とかいった会話が飛び交っていました。

文字で表現できているか分かりませんが、まじでカッコいいんですこれが

いつかこうなりたいと強く思いました。

②職能を超えたプレイヤー

エリアリノベーションを行う主導者(チーム)はプロジェクト全体の当事者となります。

例えば計画する人が作る人の知識を持っていたり、つくる人が全体の計画をデザインできたり、つくる人が使う人(現場のオペレーションなど)の助言もできたり。

つまり、主導者(もしくはチームメンバー)は「つくる人でも使う人でも計画する人でもある」必要があります。

地方のプロジェクトは巨大なプロジェクトではないので、小さくスピード感が必要とされます。そういった理由もあり、当事者となることが求められるのです。

③まちを変える4つのキャラクター

 まちに変化が起こり、それが継続していくために必ず存在しなければならないキャラクターがいます。それは以下の4つ

1 不動産キャラ 
2 建築キャラ 
3 グラフィックキャラ 
4 メディアキャラ

1不動産キャラ
最も重要!!一般的な不動産事業者が行う売買仲介や管理、ディベロップメントを行うだけではなく、物件を自ら発掘したり、物件オーナーの状況に寄り添ってゆっくり話したり、まちの将来のことを思った持続可能な取引を行ったりしています。

なぜ不動産キャラが必要なのか。それは場所/空間と人を結びつける役割を総合的に果たしているからです。(知識はもちろん、法律や専門的な手続きまで)

大阪・昭和町で不動産をやっている小山隆輝さんは、契約する際に堅苦しい内容にするのではなく、その物件/空間のこれまでのストーリーや大家さんの思いを必ず記載するようにしています。

人(大家さん)と人(借りる人)を結びつける役割も担っているのです。


2建築キャラ
建築キャラに求められるのは設計、施工、簡単な見積もりまでをざっくりでも即興的に提示できること。限られた予算の中でいかにカッコいい空間をつくるか、いかに早く完成させて動かせるのかが重要となります。

空間の設計にじっくり検討する時間はないので、これまで学校で習ってきたような設計のプロセスを通らない。それよりも、どのような材料と工法でつくることが可能なのか、おおよそいくらでできるのかをその場で判断することを必要とされているのです。(昔の大工の棟梁的な??)


3グラフィックキャラ
エリアリノベーションにおいて、最も効果的にスピード感を持って街をアピールでき、その絵で多くの人に伝えることができます。空間は完成までに時間やコストがかかるので、グラフィックによって世界観をまず先に表現していきます。

多くの人に情報を届け、興味を持ってもらうために、この本で紹介されている昭和町では実際にこのようなグラフィックでまちを表現しています。

大阪・昭和町エリアにおけるマルシェのマップ


4メディアキャラ
TwitterやFacebook、Instagramなどでの個人の発信力を使い、多くの人に情報を届けます。最近では特に、知らないメディアよりも信頼できる個人による発信の方が情報は届きやすくなっています。

地域メディアを持っている街は強く、そのメディアを通して様々な人脈のネットワークが生まれる。例えば善行寺門前ではナノグラフィカという編集集団が「長野・門前暮らしのすすめ」というウェブサイトをエリアリノベーションが始まる前から作っていました。こうした媒介もあり、この土地の世界観が表現されていったのです。

SNSなどでその場のリアルタイムの状況を発信し、2次的・3次的な拡散が口コミなどで行われます。地域メディアがある場合はさらに重層的に、また丁寧に発信されるために説得力ある情報となっていきます。


まちの構造が変化する

2008年の1億2800万人をピークに、日本の人口が減少し続けています。最近では東京都の転出数が転入数を上回り始めました。どの町でも確実に都市が小さくなり始めているといえます。

この衰退する先に興味深い変化が世界各国で起こり始めています。イタリアの農村人口は2014年を境に急激に減少しており、今後、消滅集落が急増すると言われてます。(日本と似ていますね)

そんな中、アルベルゴ・ディフーゾといった形態の宿泊施設が生まれ、増加してきました。

アルベルゴ・ディフーゾとは、地域に散らばっている空き家を活用し、建物単体ではなく地域一帯を点在型ホテルとするイタリア発祥の取り組みのことです。
アルベルゴ・ディフーゾ インターナショナル 極東支部より

↑↑結構わかりやすく説明しているサイト↑↑ 

ここではあまり細かく説明しませんが、このような動きが衰退する都市やまちでは起こっているようです。

人口減少が特に激しい地方では、大資本は手を引くしかなくなります。地元の奈良では昔からよく行っていたサイゼリヤがなくなったり、今いる宇和島ではミスドが無くなったり。

そうやって大資本が次々と手を引く地方の急激な人口減少の中で、どのようにまちの構造を変えるべきなのか。

それは、産業を自分たちでつくり小さな経済循環を多く生む。それらが共鳴し繋がっていくことでエリアに面的な強さが生まれます。新しい風景はそうやって生まれていきます。

統一的な街のイメージではなく、個性が集結した雑多なイメージになるかもしれません。それが衰退するまちの選択すべき未来の姿です。



と、こんな感じで本の内容を実体験に基づきながら説明してきましたが、もっと細かい説明や具体的な日本の事例とか知りたい方がいたら本を読んでみてください!

超おすすめです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?