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「やながわ水辺の夜市」作る側のハナシ

2022年9月16日 3回の延期を経て、ついにやながわ水辺の夜市が開催することができました。

僕はこのイベントで「休む、食べる、話す」など、人のアクティビティを誘発する場づくりを行いました。

このnoteではどのようにしてこの景色が生まれたのかについて書いていきます。

熱い思いそのままに書いてしまったので長いです。すいません。全部読んでください。

参加に至るまで

水辺の夜市実行委員会へ

7月中旬、立花千月香さんに誘われ、第一回水辺の夜市委員会に同席させていただいたのが始まりです。

実行委員長 船頭の森さんはじめ、副委員長 御花の千月香さん、観光協会、佐賀大の建築サークルStepsなど夜市開催に関わる多くの人が揃いました。

この時からTOUCAとして、外部の自分に何ができるのか、何をすべきなのか。広くまちとの関わり方を考えながら常にアンテナを張っていました。

柳川でなにができるんやろか...

心を動かされた?のか?

後日、会場の空間デザインメンバーとのミーティングがあり、当時休憩所を1人で設計していた彼がその場にいました。

話の流れの中で、どういうイメージで設計を進めているのかという質問が彼に飛び、そのとき彼の口から出た言葉が衝撃だったのです。

「ピエロックのサーカステントに勝つようなものをつくりたい」

「何を言ってるんやこの人はwww」

同じ会場にやってくるサーカステントに調和するものをつくるのではなく勝つらしい。思考がかなりぶっ飛んでて面白くて。
だから一緒にしたい!って思いました。
(自分もぶっ飛んでるかもしれん)

そしてその思いそのままに
「一緒にデザインをさせてほしい」と伝え、参加することになったのです。

彼は構造が得意で僕はデザインが得意。互いが互いを補い合う形で設計していくことになりました。


空間をデザインする

限られた期間で

勢いそのままに飛び込みましたが、この時点でイベント開催まであと1か月。
ほぼすべてデザインし直すことになったので、コンセプト考えて、設計して、予算見て、相方に構造みてもらって、予算見て、設計し直して、プレゼン資料作って…
いや待てよ…間に合うんかこれ?という状態でした。

手前味噌ですが、この規模の建築を1から10まで、しかもこれほど短い期間でやり切るのは難しいです。って思っています。笑
とにかくスピード感がカギとなるプロジェクトでした。

どんな風景を生みたいのか

ここからは少し建築の専門的な話になります。
僕はデザインする時、どんな風景を生みたいのかから考え始めます。
それは人がどう空間を使いこなし、それがどういった絵を生みだすのか、ということです。

こういうことを考える時に「にぎわいを生むことが大事!」という声はよく聞きます。しかし僕は空間が活き活きする要因に「にぎわい」はあまり関係ないと考えています。

では空間を作るうえでなにが重要になるのか。

それは様々な人の居方が存在することです。

ある場所にいるということは、それ自体意味のある積極的な行為であり、建築や都市空間がサポートしてくれる最も基本的な価値である。人はその行為によって、他者・社会・環境とのさまざまな関係を認識し、自己を定位していく。このような、ある場所に人が居るときの様子、そのときに周囲の環境や他者ととっている関係を「居方」と総称することにする。

鈴木毅 / 都市のオープンスペースの「居方」より

思い思いに座る。
マルシェの様子を眺める。
物思いにふけるようにたたずむ。

その人の背後のストーリーが見えてくるような、多様な姿が生まれるようにデザインしていくことを心がけました。

空間デザインのコンセプト

柳川の静かな水面に浮かぶ満月の月明かり…そんな昔からある風景と、幻想的で、まるで空想の世界にいるような世界観をテーマにつくりあげました。

やながわ水辺の夜市公式HPより

これはやながわ水辺の夜市のブランドイメージのようなものです。

メイン会場ではピエロック一座によるサーカスショー、隣接するお堀ではランハンシャによる光の川下りが行われます。

水辺の夜市という名だけあって、ナイトタイムのイベント。

休憩所を計画しているメイン会場には、ピエロックのサーカステントがぼんやりと幻想的な光を放ち、マルシェは数十店舗が軒を連ねて刺されるような光を放っている。

そんな会場の雰囲気の中で休憩所はどうあるべきなのか。

光を放つ明るい場をつくるのではなく、ふとした時に光の美しさに気付くことがこの場所の価値になる。

僕はこう考え、
「多様な光の美しさに気付く」をデザインのコンセプトとしました。

アイデアを形にしていく

いよいよカタチを考えるフェーズです。
こだわりを書き始めるとキリがないのでここでは空間を作りあげるうえで2つの重要となった点を説明します。

①「多様な光の美しさに気付く」ための仕掛け
光の美しさに気付く仕掛けとして、ポリカーボネート寒冷紗の2つの素材をメインにデザインを考えました。
安くて丈夫。外で使える。その上で光が様々な見え方で透過される。半透明なので壁に使っても圧迫感はない…など非常に理にかなったものなのです。

寒冷紗 農業で使われる半透明の布

②古材を使う
古材を使うにあたって、もちろん新しく木を購入する必要がないという経済的なメリットもあるのですが、それ以上に空間に温かみが出ることが大きな価値だと思います。しかも手作り感のあるデザインのテーブルやカウンターなので相性が良いんです。

(ある面白いおじいちゃんから大量の木材をもらったのですが、その経緯を書くとnote1本出来上がってしまうので割愛)

このようにしてコンセプトがアイデアを生み、カタチとなっていきました。

完成した3Dモデル①
完成した3Dモデル②

休憩所を組み立てる

いよいよ現場へ

材料を購入して、木材をいただき、工程表をつくり、いざいざ現場へ。
もうとにかく現場監督となって指示だして、人を動かして、自分も動いて、というのを繰り返すだけでした。

佐賀大Stepsのメンバー

自分ごと化

僕がこの現場で感動し、同時にこの規模のプロジェクトを成功させるためにも必要だと思ったこと。それは自分ごと化すること。

僕が指示を出してそれ通りに動くだけではなく、こうした方がいいんじゃない?とか提案がどんどん飛んできました。

そういう人に囲まれた現場だったからか、完成したものは自分が構想したものよりはるかにいいものが出来上がりました。

「イベントを成功させたい」

彼らの思いが言葉ではなく行動で伝わってくるいい現場でした。

***

そして自分ごと化してもらうために、誰よりも考え、動き、声をかけることを意識しました
「やってることはほぼ部活といっしょやん笑」って感じですが、中学キャプテン、高校副キャプテンと経験して、そういったものが身についていたのか自然とできました。

自分が渦となって周りを動かしていくように、現場の作業は急ピッチで進んでいきました。

僕の経験不足もあり、作り上げるクオリティとかかる時間の感覚が分からず、完成したのは開催前日の夜遅くでした。みんなすいません...

このようにして休憩所という名の場が完成しました。


そしてついに

水辺の夜市当日

2022年9月16日 

僕の目に映ったものは
活き活きとこの場で過ごす姿
思い思いに座り、話し、食事する姿
イスを動かし、空間を使いこなす姿

言葉にすることができないほど色んな感情が溢れてしまいました。

「この感覚を忘れないように」

後日、御花の社員さんからこういう言葉をいただきました。今は分からないのですが、作った空間が使われるときに生まれるこの感動は時間と共に忘れてしまう人がほとんどらしいです。

イチから手掛けた場を人に使ってもらい、この景色を生み出せたことは自分にとって大きな財産になったし、決して忘れることはないでしょう。

場づくりがいかに魅力的なものであるのか、建築を勉強すること5年目にしてようやく気付くことができました。

最後に

このような場づくりの機会をいただいた夜市委員会メンバーと佐賀大Stepsメンバーに感謝しています。

またとんでもない量の差し入れをいただいたり、メンタルやられそうな時に支えてくれた人もいます。
水辺の夜市が終わった後に感動したことを伝えてくれた方もいます。

改めて周りに支えられてできたのだとこのnoteを書きながら泣きそうになっている自分がいます。

本当にありがとうございました!

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