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『予約して、遠出して…』

 前回までの「岡山日帰り一人旅」三部作の最終話の完成が見えてきた
2024年2月の一日、ふとイギリスの朝ごはんであるイングリッシュ・ブレックファストが食べたくなった。
 今年も3月初旬に新宿の伊勢丹で開催された「英国展」の告知をインターネットで目にしたせいかもしれない。
 伊勢丹の英国展といえば、神楽坂の行きつけのパブが2017年に出店した。バーカウンターを設えて、パブの一部を切り抜いてきたかのような立派な出店だった。
 その際に人気のフードメニューをイートインで実際に食べられるようにした。その中に当時その後のメニューに加わる予定だったイングリッシュ・ブレックファストもあった。
 以来「英国展」と聞くと、目に浮かぶのはスコーンなどの焼菓子の前に、イングリッシュ・ブレックファストだ。
 今年の伊勢丹での英国展は史上最高ではないかと思えるほどの入場者数だった。
 行きつけのそのパブは今年も出店。混雑を抜けて・・・というよりかいくぐってイートインエリアに辿り着いた。そこからさらに人混みをかき分けて今年も設えられたバーカウンターへ。スタッフに挨拶をして、ギネスをワンパイント啜るのが精一杯だった。

90分待ちが実際は60分。お知らせが届くまでベルクでゆっくり。
パブのカウンターにて。僕の背中がライブ会場のようだったイートインスペース。
スタッフA女史渾身のかなり人気だったスコーン。自宅で美味しくいただきました。


 SNSで出逢ったガストロパブが日曜日のブランチに出すイングリッシュ・ブレックファストがずっと気になっていた。
 ブランチは9時、11時、13時の完全予約制で入れ替え制だという。予約制かぁ・・・敷居の高さを最初に感じたが、間もなく期待が高まった。
 「岡山日帰り一人旅」の最終話がほぼ完成した2月のある日曜日の朝、SNSにそのガストロバブのその日のブランチのメニューがアップされた。メニューのいの一番に「イングリッシュ・ブレックファスト」とあった。
 キャンセルで空席が出てまだ埋まっていないという。そのガストロパブがイングリッシュ・ブレックファストを出すのは日曜日のみ。翌週以降の自分の日曜日のスケジュールはどうなるか分からない。ずっと気になっているこの気持を早く断ち切りたいのもある。
 「早起きは三文の徳」、「思い立ったが吉日」、様々な場面でトラベラーの背中を押すこの二つのことわざが浮かんだ。予約が間に合うならこれから行ってみようと思った。DMでキャンセルが出た13時の空席を予約したい旨の連絡を入れた。
 予約が取れた旨の返信がすぐにきた。用意し始めていた朝ごはんはコーヒーだけにして13時のブランチに備えることにした。

SNSでこのメニュー板を見て行ってみることに。ん?クロックマダム?



 目指すガストロパブは新宿の少し先にあった。その前にガストロパブって何?パブとどう違うの?と思った方は少なくないだろう。気になる方は是非調べてみてほしい。何かで読んだ記憶がある2012年のロンドンオリンピックがポイントとなっている説を僕はずっと信じている。

 東京の東端で育っていまでも住んでいるので、新宿を超えるとなるとちょっとした遠出だ。新宿までは「お出かけ」なんだが。西荻窪に行くときは遠出よりも旅に近いものを感じる。
 駅からまさに「目と鼻の先」とはこのことという距離にそのガストロパブはあった。店構えはSNSで見た通りだった。
 約束の時間より少々早く到着。満席の店内からガラス越しに店側にはこちらの到着が伝わった様子。
 店の前のベンチに座ってしばらく待って、L字型のカウンターと奥にテーブル席がひとつの店内に入った。通されたカウンター席はオーナーシェフ(これはきっと和製英語。英語ではシェフオーナーのはず)が調理しているのがよく見えた。左右を常連と思しき方々に挟まれる格好となった。
 先ずはエールをワンパイント頼んだ。いきなりエールとなるのはやはりパブ。エールを啜りながら店内をさっと見渡すと、一見ではない様子の欧米人と日本人のご夫婦とお見受けした方々が僕の左側に。一見ではない様子の欧米人がいるということでここは期待できるかもしれないと思った。

先ずはエール。都内で作っているものとか。おかわりは自粛…。

 カウンター席なので調理の様子がよく見えた。目の前でイングリッシュ・ブレックファストを作ってもらっている形だ。これまで都内各所でイングリッシュ・ブレックファストを食べてきたが、調理の様子がハッキリ見えるのは初めてだった。遠目に見えることはあっても、料理人の手元まで見えるのは初めてだった。
 全てひとりで切り盛りしているオーナーシェフが、同時進行で複数のメニューを料理しながら、思い思いに話しかけてくるそれぞれの客の対応をしているのを見て「大変だな」と思った。チビチビとエールを啜りながら店に自分が馴染むのを待った。
 エールを啜っているとスクランブルエッグの出来上がりが見えた。目玉焼きもいいが僕の中では、朝ごはんの卵といえば、ずっと「スクランブルエッグ > 目玉焼き」。
 フライドトマト、ベーコン、マッシュルーム、ビーンズがプレートの定位置に盛られていった。盛り付けが終わるタイミングで目の前のトースターからトーストがポンとその姿を現した。
 ここのイングリッシュ・ブレックファストの写真を事前にSNS等で見ないようにしていた。あえてメニュー板の「イングリッシュ・ブレックファスト」の文字だけでどんな様子か想像を膨らませていた。
 待ちに待ったずっと気になっていたイングリッシュ・ブレックファストが目の前に。「ああ、これだったんだ。」

トーストが別皿。朝ごはんですが、エールの肴にしようかと一瞬迷いました(苦笑)。



 これまで出逢ってきたイングリッシュ・ブレックファストとは違ったタイプだった。きっとオーナーシェフがイギリスで経験して日本で再現してみようと思ったイングリッシュ・ブレックファストがこうだったのでは?と思った。僕が経験していないタイプだったので、違って感じたのだ。 
 ロンドンやコルチェスターで意識してイングリッシュ・ブレックファストを食べ歩くと、ローカルのお店で出逢うのはこのタイプなのかもしれない。ああ、だから欧米の方が食べに来ていたのかと勝手に合点がいった。 
 遠出をした(旅をした)先で初めてのものを食べる。想像と現物とのギャップを経験する。旅先でこれまで経験してきたあの感覚が甦ってきた。そうそうこの感じ。 
 食べ終わって落ち着いたところで、残っているエールを啜りつつ周りを再度チラリと見てみた。欧米の方のお一人は僕と同じくイングリッシュ・ブレックファストを。もうひと方はその日のメニューにあった「クロックマダム」を召し上がっていた。クロックマダム? 気になり始めていた。 
 初めて訪れたガストロパブでのサンデーブランチは楽しめた。いい休日・いいブランチとなった。再訪決定。

再訪時のメニュー。この日クロックマダムはなし。焼菓子も人気で買いに来た人多数。
エールを啜りながら待っていた様子が伝わるでしょうか?
皆さんにつられて焼菓子をテイクアウト。アップルパイを母のお土産に。



 タイミングを合わせてパブの時間にも訪れてみようと思った。パブとなった同じ店がどんな別の顔を見せるのか?パブフードも興味深い。

 コロナが終息したら凄まじい円安。バブルの残り香と1USドル100円前後を経験している身には、この円安は海外へ旅するとなると二の足を踏む。正直二の足を踏む足すらピクリともしないくらいの円安だ。
 海外の旅先で出逢ったもの、海外の旅先で通り過ぎてしまったものを都内で探して食べてみる。そしてその旅先に想いを馳せる。この「旅」は僕にとってはもうしばらく続く様子。これはこれで結構楽しい。
 しかし、「クロックマダム」がずっと頭から離れない。トラベラーの嗅覚で次に探すのはクロックマダムか? クロックマダムを追ってみよという旅の神様からのお告げなのか?
 いつの日か「クロックマダム」というタイトルでここに旅にストーリーを公開したら「ついに探し歩いたのか」と思いつつ是非ご笑覧を。
 クロックマダム、クロックマダム・・・。

追記;
イングリッシュ・ブレックファストに関しては以下の通り、これまで二作書いています。合わせてご笑覧ください。



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