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『旅先で食べたもの・11』

 この話は2016年6月にトラベラーズノートのウェブサイト「みんなのストーリー」に掲載された旅のストーリーです。現在も掲載されています。そのままここに掲載いたします。現在も「みんなのストーリー」に毎月一作旅の話を書いています。これは掲載第104作目です。

 昨今の国際情勢の影響で、観光で行くにはちょっと恐いと思う場所が増えてきた。行きたいと長いこと思っているトルコがあのようになるとは思いも寄らなかった。エジプトも同じだ。怖がっていたらどこへも行かれないというのはいつの時代も同じだが、怖さの質は確実に変わってきている。

 書店の海外旅行のコーナーに行くとアジアでは台湾に関する本が以前に比べて物凄く増えた。テレビの旅番組で台湾を取り上げる頻度も激増したといえるかもしれない。理由はいくつか思いつく。以下はあくまでも私の勝手な、さらには大雑把な推測だ。

韓国・・・韓流ブームが落ち着いてネタがある程度出尽くした。北のほうから何か飛んできそうでちょっと怖い。

香港・・・中国本土からの観光客が激増し、街の雰囲気が変わってきた。 そしてホテル代が高騰。リピーターという方々もリピートし尽くしてきた。私のように返還前の楽しさの名残をどこかに求めながら訪れているトラベラーにとっては辛い状況になった。

シンガポール・・・そもそも一度訪れれば十分と思われがちなところ。物価もホテル代も上がり、日本から時間をかけて行く魅力が半減。私はまだ何度も訪れたいが・・・。

 ベトナムを語るには私的にもう少し馴染む必要がある。タイもかつてより身近になってはきたが、まだまだ台湾を受け入れているのと同じ層、特に我々の親の世代に受け入れられるにはもう少々時間が掛かりそうだ。そうなると残る選択肢は台湾になる。食事も文化も日本人には取っ付きやすく、それに地理的にそれほど遠くない外国だ。安全であることも大きいだろう。
書物にもテレビ番組にも比較的しやすいのではと推測する。

 それから、日本でアジア人の心地良いもてなし(最近ではホスピタリティという言葉もそのまま普通に使われるようになった)を知った欧米の観光客が次に目指して後悔しないところも台湾かもしれない。

 たまにチェックする旅の本に特化した書店のウェブサイトがある。そのサイトで「美味しい台湾 食べ歩きの達人」(光瀬憲子著 光文社知恵の森文庫刊)という本に出逢った。しばらくしてその本を手に取り読み始めたら本が付箋だらけになってしまった。旅に関する本を読むときは、無印良品で買ったインデックス型の付箋をその土地を訪れたら行ってみよう・食べてみようと思ったところのページに貼りながら読むからだ。その本で知ったことをまた別の本でチェックする時間は結構楽しい時間となった。

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ここは行ってみたいと思ったところに付箋を貼りながら読み終えたら本がこのようになってしまいました(笑)。私の持っている旅の本はこういう状態になったものが多いです。

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行ってみたいと思って付箋を貼った場所の所在地はこの本でチェックしました。“かわいい”は私には必要ないのですけど・・・(苦笑)。常宿の最寄りの駅を起点とすると距離が何となく掴めました。しかし、メトロは便利だな〜(笑)。

 旅先で出逢った食べものでたまに無性に食べたくなるものはいくつもある。香港で食べたお粥は朝ごはんとして日本でも食べたいとずっと思い続けてきた旅先での朝ごはんの筆頭だった。ここ数年その筆頭の座には台北で食べた朝ごはんが就いた。どんな朝ごはんだったかは「旅先で食べたもの・1」で以前書いた通りである。それは2007年の再訪でそれぞれを再び食べることができたときの話だ。それから7年経った2014年の再訪で初めて食べたものもあり、台北の・・・というより台湾の朝ごはんがますます好きになった。

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これは到着翌日の朝食です。温かい豆乳はそのとき初めてでした。ほんのり甘くミルク臭さも感じず気に入りました。温かさが程よく、身体に染み渡って行き胃腸がゆっくりと目覚めるのを感じました・・・と表現したらグルメ番組みたいでしょうか(笑)。

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すっかり気に入ってしまった豆乳を翌朝も。少々トッピングをしてみました。豆乳が冷めてくると程よく固まって来て具入りのスープみたいになって美味しかったです。グルメ本ぽく表現するならば“台湾の朝ごはんに豆乳は必須!”というところでしょうか(笑)。

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トッピングはクルトンみたいな油條(揚げパン)と田麩を少々。

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台湾の朝ごはんで一番好きなのがこれです。飯團(ファントワン)です。 詳しくは「旅先で食べたもの・1」をどうぞ。どれだけ好きかはこの話を最後までお読み下さい。

 「美味しい台湾 食べ歩きの達人」と後に参加したこの本のイベントで得た旅先で美味しいものに出逢う大きなヒントは、著者の光瀬憲子さんがおっしゃるところの“行列と人集りを見分けること”ということだ。これは旅人の嗅覚に依るところが大きく、経験をある程度積まないと出来ないことだ。行列は観光客の行列の場合があるから気をつけるべしということだろう。この感覚はトラベラー各位には何となく分かるのではないかと思う。

 2000年以来台北に遊びに行く際の常宿であるハワードプラザから徒歩10分強のところにあるお気に入りの“朝ごはんスポット”では、訪れる度に地元の人達で行列とも人集りともいえる賑わいを見せている。遠目にそれが見えて来たときのワクワクといったらない。

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調理場から常に出ている湯気と店内の熱気が写真伝わるでしょうか。時期は12月初旬です。この写真を撮っている私の背中は大通りで、このお店に朝食を買いに来た多くの人達がこの列が落ち着くのを見守っていました。見守っている様子は人集りに近かったです。列は店内で1回U字に折り返してやっと注文する位置まで来ます。日曜日の朝でこの状態でした。平日はきっと職場へ向かう人達がこの状態を作っているのだということは想像に難くありません。異国での日常を垣間見ました。

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これが全て解読できて説明出来るようになったときには台湾の朝ごはんの達人になっていると思います(笑)。しかし、安いな〜。台湾ドルの対日本円の現在のレートで計算してみて下さい。

 この行列は観光客が作っているものなのか、それとも地元の人達が並んでいるのかを見極められるだけでガイドブックに載っていない美味しいお店に辿り着けるかも知れない。台湾では次回食事に関しては人集りを頼りに食べるお店を決めてみたいと思った。例えハズしても台湾なので大ハズしはないだろう。この感覚が鍛えられれば、他の国に行っても活かせるのではないだろうか。

 先日台湾から友人が1人休暇で日本にやってきた。その友人とは「再会・6」で思い出に残る食事会を仕切ってくれたVincentだ。北海道・青森を回って台湾に帰る数日前に立ち寄った東京で会食した。Vincentに次の再訪に備えて台北市内で朝ごはんの美味しい場所を10箇所ほど選んでリストにして欲しいと頼んだ。そんなのお安い御用とばかりにあっさり引き受けてくれた。きっとガイドブックには載っていないところがほとんどのリストを用意してくれるだろう。仕事柄長いあいだ顧客のありとあらゆる要望に応えてきたVincentにはそんなリクエストなど朝めし前なのかもしれない。

追記:                               2014年12月の再訪時、東京への帰国便は朝6時出発だったのでホテルを4時に出発しなければなりませんでした。当然朝ごはんのお店に行ってゆっくり食べている時間はないので前日に飯團を買っておいて空港もしくは機内で食べることにしました。

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楽しい会食を終えて夜10過ぎに家族の分も私が買いに行きました。

結局早朝の空港では食欲が湧かず機内では爆睡。自宅まで自動的にテイクアウトになりました(苦笑)。その日のランチに台湾の朝ごはんを食べました。しかし、どれだけ好きなんだ飯團(笑)。

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自宅で堪能しました(笑)。

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