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【ブックリスト】霊長類は……お好きですか?サルを知り、ヒトについて考える6冊

■「霊長類は……お好きですか?」


    動物園や水族館に意識的に足を運ぶようになってから、特に心惹かれてきたのはサルの仲間でした。

    オランウータンやチンパンジー、フクロテナガザルといった類人にはじまり、日本モンキーセンター(愛知県犬山市)を繰り返し訪問する中で、関心はヒトを含む霊長類全般へと拡大していきました。
     いつしか私の本棚の多くのスペースはサル関係で占められるようになり、「霊長類関係の絶版本が読めないか」と、「サル文庫」を擁する犬山市立図書館へ足を運んだ日もありました。


    この記事では、心惹かれた「霊長類本」を6冊セレクトしたいと思います。ここに挙げていない本にも魅力的なものはたくさんありますが、読みやすいものと切り口が珍しいものをこの記事ではご紹介します。

■ 日本モンキーセンター(編)『霊長類図鑑 サルを知ることはヒトを知ること』(京都通信社,2018)


    まずは写真入りのこの本から。

    「図鑑」と銘打たれてはいますがコンパクトに纏まった薄手の本で、携帯にも便利。霊長類の特徴の図解や研究史も付録されており、はじめの1冊として最適です。


■ 井田徹治『霊長類 消えゆく森の番人』(岩波新書,2017)

    

   野生下での霊長類たちが絶滅の危機にあることを理解するための入口になる1冊。

   新書なのでとても読みやすいです。筆者は環境問題を長く取材してきた記者であり、保全活動の理想と現実にも忌憚なく触れられています。


■ 黒鳥英俊『オランウータンのジプシー』(ポプラ社,2008)


    動物園で出会える霊長類の暮らしを考える糸口になる1冊。 

     児童書ですが長年上野動物園や多摩動物公園で類人の飼育担当をされた黒鳥さんが執筆されており、奥行きは深いです。この本から派生し、小学校の国語教科書に掲載されたエピソードもあります。

■ デズモンド・モリス『サル――その歴史・文化・生態』(白水社,2015)


   『裸のサル』などの著作でも古くから著名なデズモンド・モリスの1冊。

    生物としてのサルに加え、ヒトがサルという生きものを歴史の中でどのように受容してきたかを辿る文化史的な視点が特徴の1冊です。


■廣瀬鎭『ものと人間の文化史 猿』(法政大学出版局/1979)


    西洋文化を中心としたサルの受容史をまとめあげたモリスに対し、廣瀬鎭先生のこの1冊は、日本人にとってのサルについて民俗学的に掘り下げた内容です。

     少し古い時代の発刊ですが決して今も色褪せません。ニホンザルがいた日本と、霊長類が野生下に生息していなかったヨーロッパとで比較してみるとまた新たな発見があるかもしれません。


■E.J.H.コーナー『ボタニカル・モンキー 植物の先生 猿に助けられる』(八坂書房/1996)


    最後は変わり種。前述の犬山市「サル文庫」で読んだ本です。この本の主役は東南アジアに生息するブタオザル。植物学者に馴致され、標本採集を補助し活躍する様子が描かれています。

    印象的なのが巻末で、筆者は『鏡の国のアリス』に登場するジャバウォックの詩になぞらえブタオザルを主人公にした一篇の英語詩を詠んでいます。生けるものたちと関わった時間が創作のインスピレーションに繋がることを再認識させられます。

■ ……ちょっと本棚、拝見します!


    ここに挙げた本以外にも、霊長類や霊長類学を扱った魅力的な書籍は沢山あります。霊長類に関心を寄せる他の人の本棚もちょっと覗いて見ましょう。


      霊長類に関する情報を集積しているキュレーションメディア「猿.com」さんのレファレンス棚です。バランスよくサルについての基礎研究書が並んでいます。


       日本モンキーセンターの公式HPでおすすめされている本は、サルに限らず生命の不思議を見つめる内容が目白押しです。いのちを預かる現場である動物園ならではのチョイスが鮮やかです。

 


   動物園・水族館・博物館に足を運んで得た学びを、書物を通じてまた違う角度から再検討すること。家に居る時間が増えた今だからこそ、ゆっくり試してみてもよいのかも知れません。


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