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「高等部の生活に期待することは何ですか」という問いから考えたこと

先日、娘の入試(特別支援学校高等部)があった。
保護者も面接があり、その中の質問の一つが、タイトルにある「高等部の生活に期待することは何ですか」だった。

学校って、安全、安心な生活の上に、楽しさ・充実感があると思っている。だから、そんなことは私にとっては「前提」に過ぎない。(そこは、保障しなければいけないものかな、と、教師サイドとしては思っている。)

だから、私は「三年後の卒業に向けて、必要な力を身につけること」と答えた。

家庭でできることと、学校ができることは、別物である。家庭では教えきれないこと、学校でしか学べないことを、しっかり教えてほしい。

娘は、机に向かって一人でする勉強なら、家でもできる。
でも、友達や大人の考えを聞きながら、自分の意見を形成していく、というのは、学校の大きな魅力だと思う。何しろ、人がたくさんいるのだ。自分と合う人もいるし、合わない人もいる。それでいい。その中で、自分の考えを、これからの自分の「芯」になる部分を固めていってほしい。

そして、学校の魅力としてはもう一つ、「設備が整っている」ということがある。安心して走り回れる広いグラウンド、体育館。いろいろな種類の作業に取り組める作業室など、家庭ではとてもできないような活動がたくさんできる。その恵まれた環境の中で、自分が得意なこと、苦手なことを感じ取ってほしい。

あと、もう一つ挙げるとするならば、「先生」というある種の「聖職性」である。
忘れもしない、娘が小1の頃、インフルエンザにかかった。しかし、娘は「学校は行くものだ」という強いこだわりがあるから、40℃の熱があるのに「行く」と言ってきかない。とうとう泣きだしてしまった。親の私も、説得に困った。でも休ませなければならない。それが学校の規則だ。朝、小学校に電話して、担任の先生に変わってもらった。「インフルエンザにかかっちゃったんですけど、学校に行くと言って泣いてます」と伝えると、先生が「電話、代わってください」と言う。娘に電話を渡すと、「・・・はい、わかりました。○○日まで、お休みします。」とあっさり答えた。これには驚いた。電話をもう一度代わってもらい、先生に何を言ったのか尋ねた。「○○ちゃんは、インフルエンザだから、学校の決まりで、○○日までお休みしなければなりません、わかりましたか? と言いました」・・・先生の言葉って、すごいんだな、とそのとき思った。何を言うかじゃない、誰が言うかだ。
高等部でも、先生には、大人になるために大切なことを語ってほしいと思っている。

今自分で書いた「高等部の生活に期待すること」は、裏返せば、自分が教師として職場で心がけていることと同じである。
協同、協働を大事にすること。
体を動かす活動を大事にすること。
生徒に対しての言葉を大事にすること。
私自身も、娘の入試を通して、改めて、自分の教師としての「在り方」を見直す機会となった。

追記。
先生の言葉の偉大さ、と言えば、入試当日の朝、受検する学校まで様子を見に来てくれた中学校の担任の先生が、娘を見て「少しの緊張は?」と言った。娘はすかさず「力がつく。」と返した。どうやら、合い言葉のようである。緊張しやすい娘に、3年間かけて、こうして関わってきてくれたんだな、と思うと、胸が熱くなった。先生って、やっぱりすごい。


特別支援教育に興味を持つ教員です。先生方だけでなく、いろいろな職業の方とお話して視野を広げたいし、夢を叶えたいです。いただいたサポートは、学習支援ボランティアをしている任意団体「みちしるべ」の活動費に使わせていただきます。