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野菜愛あふれる店主が手がける和やかな空間とまるごとおいしい大地の恵<ウチヘオイデヨトーキョー_小川東町>

小川駅東口のロータリーからすぐそばの、ちょっと変わった名前のお店で、野菜本来のおいしさと野菜の妖精のような店主にすっかりハマってしまった話。

2023年の暮れに、のしてんメンバーで忘年会を開催した『ウチヘオイデヨトーキョー』は、あらゆる面にこだわり抜いた、旬の食材を使った料理が楽しめるお店。
契約する農家さんからその季節、その日においしい野菜が届き、届いたものに合わせてメニューを決める。農家さんと店主さん、店主さんとお客さん、それぞれの信頼で成り立つお店だ。
野菜は長野県のものを中心に、季節によって埼玉県からも届く。

店主のなぎさんはフェアトレードに関わる仕事や福祉関係、新宿での飲食業経験を経て、2021年にこのお店をオープンした。
店名の由来は1950年代に江利チエミが歌った「家へおいでよ」。小平の地で「トーキョー」を潔く名付けるあたりに、なぎさんのまっすぐな人柄を感じる。

1階はカウンター、2階は貸切もできるテーブル席。この日は貸切予約があるとのことで、カウンターに3人並んで乾杯した。
ぼんやりとした灯りの下、ハイボールのグラスにささるマドラーはローリエの木。なんだか妖精の晩餐会みたいな、メルヘンチックに浸るミドルエイジたちの宴なのであった。

最初に運ばれてきたサラダボールには生野菜とバケットにリエットがあいのり。美しい彩りに、そろって「わー!」と思わず共鳴する3人。
シャキシャキと口いっぱいに生命力を感じ、野菜のおいしさに何度も唸りながら、ドリンクもぐいぐいとすすんだ。

次は大きな鍋で野菜のしゃぶしゃぶ。さわやかなポン酢が野菜の甘味を引き立てて、ほっとするおいしさだ。
「おやさいさん」と敬称を付けて呼ぶ、野菜への愛がダダ漏れのなぎさんが、鍋にやさしく野菜を浮かべる姿は、沐浴みたいに愛おしい光景だった。

この日は忘年会ということもあって、おまかせコースでお願いしていて、次々に素材を最大限にいかした料理が運ばれてきた。ホクホクで甘いポテトフライに、焼き豚は長ネギのうまみと甘味が抜群の相性。
終始感動しっぱなしで、こんなに素材に向き合いながら味わったのは初めての体験かもしれない。

一人で切り盛りするなぎさんは2階にも料理を運び、終始忙しくしていたはずなのに、なぜか忙しなさを感じさせない、不思議な空気をまとっている。
独自のセンスが店内と料理にも魔法をかけているような、受け答えのやわらかさも相まって、やっぱりここは「おやさいさん」の妖精のお店?と、ほろ酔いで夢見心地のカウンター。

飲んで食べて、だいぶお腹も膨れた頃に、やさしいスープカレーとごはんが登場した。
使用するお米は栃木県で栽培する無農薬。自然の中で微生物たちと一緒に育った稲穂を、季節に合わせてブレンドしている。
野菜の根っこもおいしくて、余すことなくまるごといただく。煮崩れしないギリギリの、一番おいしい歯ごたえの根菜たちが、体の芯からあたためてくれた。
本来の食事ってこういうことだよね、と食育の大切さを再確認する忘年会となった。

気づけば開店と同時に入店してから、驚くほど時が経ち…後から入った2階の貸切さんたちが「お先に〜」と家路へ。

店名の通り、友人の素敵なお家に招かれたような、肩肘張らない居心地の良さで時を忘れた宴。すっかりなぎさんと「おやさいさん」に魅了されてしまった。

なぎさんは料理人ではなく、素材の作り手をリスペクトし、愛を持って提供する伝え手だという。
噛みしめるほどに体に染み込んでいくような、作り手と伝え手の想いがこもった料理は、お腹の底から元気が出る。
今日はどんな「おやさいさん」との出会いがあるか、行ってからのお楽しみ。
(お)

【ウチヘオイデヨトーキョー】
東京都小平市小川東町1丁目21−8


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