乃下未帆

お歌を歌っています。此処には、自作の歌詞を膨らませたショートショートを書き綴っています…

乃下未帆

お歌を歌っています。此処には、自作の歌詞を膨らませたショートショートを書き綴っています。よしなに。

最近の記事

FAKE

人の生が終わる時、病室に響く規則的な電子音が止まる。 気がつけば私は無機質な白いベッドに横たわり ぼんやりと規則的な生の音を聞いていた。 わずかに霞みがかる視界の端に、キュッと縮こまる彼を見つけた。 あぁ、また私は理想の私になれなかったのね。 あなたから消えてあげられなかったのね。 彼が「ごめん…」と呟きながらキリキリと泣いてしまっているのがわかる。 ううん、違うの。違うのよ。 また失敗しちゃった。 また消えられなかった。 謝るのは私のほうなの。

    • JUST GET LOST

      真夜中に彼から連絡が入るのは珍しいことではなかった。 その度に私は新しい下着に着替えて入念に化粧をした。 洋服を彼の為に新調することも、量産型のワンピースをまとう事も私の世界にはなくて、ただ「気の強そうな女」「自我が強そうな女」 きっとそんな風に見えるだろう。 でもその「自立した女」という風貌は結局「彼の好み」であり…いや、正確には違ったのかもしれないな。 何もかもを勘違いしていたのかもしれない。 「彼の為に」なんて所詮自分を守る為の言い訳だ。 呼び出された通りに

      • 君だけがいない冬

        「さようならの日」から一年が過ぎていた。 ユニットバスの入り方にもだいぶ慣れたなあ。 そんなことを思いながらシャワーで寝汗を流す。 付けっぱなしのテレビから天気予報が聞こえて来る。 このお天気キャスターのお姉さんも毎日「なるべく明るく」振る舞っているのだろうか。 そんなことをだらりと考えてしまう。 もし「なるべく明るく」振る舞っているのであればとても親近感が湧くなあ、なんて。 こうして少し斜に構えて捉えようとするところは自分でもあまり好きではないし、 きっとそ