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「編集力」とは何か

「編集」とは「誰かに何かを魅力的に伝えること」と最初に定義しておきたい。

雑誌でいうと、読者に、取材した内容を、いかに魅力的に伝えるか。例えば、芸能人Aさんに何を聞くか、その内容をどう伝えるか、タイトルや文章や写真でどう表現するか。結果、読者がAさんに好感を持ち、ファンになれば大成功。例えば、ファッションページで、どんなイメージで撮るか、モデルやスタッフはどう組むか、構成はどうするか。結果、読者が「わぁ、カッコいい」「この服が欲しい」と思えば大成功。ビジネスでいうと、消費者やユーザーに、自社の商品やサービスを、いかに魅力的に伝えるか。どのメディアでいつどのように伝えるか。結果、消費者が商品を知り、欲しくなり、購入し、ファンになれば「編集」は大成功だ。

しかし、考えてみると、日常の業務のほとんどが、「誰か」に「何か」を「魅力的に」伝えることの連続だ。自己紹介、営業トーク、打ち合わせ、上司への説得、他部署へのメール、部下への説明、プレゼンテーション、スピーチ、企画書、報告書…、すべて「誰か」に「何か」を「魅力的に」伝える作業。仕事以外でも、家族、友達、恋人、地域社会、あらゆる人間関係で発生するコミュニケーションは、「誰か」に「何か」を「魅力的に」伝えることでずっと上手く回り出す。だから、「編集力」は「人間力」と言われることもある。

「編集力」も定義しておくと、「編集」する力、「誰かに魅力的に伝えるために何かをコンテンツ化する技術」のこと。「コンテンツを作る力」と「コンテンツを見せる力」に分けて考えてもいい。企画力、発想力、取材力など「コンテンツを作る力」と、表現力、文章力、デザイン力など「コンテンツを見せる力」の総合力が「編集力」だ。

コンテンツという言葉も多用されるわりに、人によってイメージが違う。記事ひとつひとつをコンテンツと呼んだり、メディアコンセプトや空気感のようなものをコンテンツと言ったりもする。もともとの意味は「中身」なので、どちらも正解であり、大事なことは、どちらも関連しているということ。例えば、ホテルのコンテンツは、客室、レストラン、バー、ロビーであり、その設備、調度品、アメニティ、フード、酒もコンテンツ。モノだけでなく、従業員や客も、周囲の環境や接客サービスや歴史もコンテンツで、すべてが関連している。すべてがコンテンツだが、ただし、コンテンツ化して初めてコンテンツになるという側面がある。情報を伝えたい「誰か」に「魅力的に」価値を感じてもらえるように、どのコンテンツをどう見せるかコンテンツ化して初めてウリになるわけだ。

コンテンツといえば、『anan(アンアン)』の「SEXでキレイになる」特集のように、雑誌には爆発的に売れるキラーコンテンツがある。そういうキラーコンテンツを並べてみると、最初に登場したのが大体90年代までで、それ以降は強力なコンテンツが生まれにくくなっている。逆にいうと、コンテンツありきで、「編集力」をつけてコンテンツさえ正確に発信できれば、メディアが後からついてくる時代になったのかもしれない。

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