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カンラン(キャベツ)・ブロッコリー・カリフラワー育苗「効果的な徒長抑制方法」

アブラナ科苗、特に胚軸が伸びるキャベツ系の苗は育苗途中で倒伏しやすい。後々作業性が落ちるため是非とも回避したいところだ。
簡単に徒長防止する方法としては、
スミセブンP液剤を使用する/夜温を10℃付近まで下げる方法があるが、
スミセブンはブロッコリーやカリフラワー苗に2022年現在は使用できない。
夜温を下げる事は、最も倒伏しやすい梅雨時期は使用できない。
どうすればよいか?
食塩を使用すれば新人が管理しても良い苗が出来る。

ここからは徒長の原因と具体的な塩の使用方法を記載して行きます!

先ず始めに、何故徒長するのか考えてみよう。
徒長原因は主に2つ
①日照不足による光合成低下>>>糖の不足
②毎日の過剰な水やり>>>余分な窒素肥料の吸い上げ
が原因だ。

①は、梅雨時期と秋の長雨で発生しやすい。
植物の体を構成・エネルギーの元となる糖が不足する為、軟弱に育ってしまうのだ。
もやしをイメージしてもらえばわかりやすいと思う。
育苗時遮光する方も居ますが、これは行わないほうが良いでしょう。
紫外線量の多い、日照時間が長い場所で育苗した経験がありますが、
夏場も遮光は一切したことがありません。

②は、過剰な水やりによって、日照がない夜も水分と窒素を吸収し、持て余した過剰でバランスの悪い養分で無理やり植物体を作ってしまう為だ。
対策として、夜に成長しずらい温度で管理し無理に身体を作らせなければ良い。これは抽苔のリスクを負わない程度の温度10℃くらいで夜温を管理することで達成できる。だから、秋~春の育苗は徒長していない良い苗が作りやすいのだ。
また、そもそも日照の無い時間帯に身体を作るのに必要な水や養分を切らす方法もある。これは育苗の鉄則「夕方には過剰な水を切って、表面の覆土がパラパラ落ちるくらいにする」というものだ。
だが、これは経験が物を言う。セルトレーを数枚管理している程度であれば簡単だが、一人で何千枚、何万枚管理するとなると熟練の技術を要する。
水分過剰であれば徒長するし、不足すれば萎れ一度萎れると培土も乾燥しやすくなりその箇所のみが生育が遅れる。

上記で徒長抑制の参考になる考えを色々書いたが、
結局、簡単に出来る対策は「水分を過剰に吸わせなければ良いのだ」
ここからは、実際に試してみて効果があった食塩を使った誰でも簡単に出来る育苗の具体的な方法を記載したい。


過剰な水分が徒長原因と記載したが、水かけ量判断は技術がいる。
ではそもそも、潅水に使用する「水」そのものを弄り、過剰な水だろうがなんだろうが少ししか植物が吸収出来ないようにすれば、考えなく潅水しても上手くいくはずだ。

試験した結果から言うと、
塩分濃度0.85%~1%が効果がはっきりと現れ無難だと思われる。
これなら、梅雨時期でも毎日午前中にたっぷり潅水してしまっても、勝手に引き締まった苗ができる。

他の濃度も試してみたが、
・海水と同じ塩分濃度3.5%では、
発芽や生育に影響があり、品種や作物によっても違うが発芽遅れ、薬害のような葉の異常、徒長抑制しすぎて極端な生育遅延が見受けられた。
・塩分濃度1.75%(≒海水の2倍希釈)では、
カンラン・ブロッコリーはおおよそ発芽に影響なく、目に見えて徒長が抑制、葉の厚みも増したため、低日照・多湿・過剰潅水下でも物凄いガッチリした苗ができた。ただし、作物として繊細なカリフラワーは若干の発芽遅延が生じた為、リスクが高いように感じた。
・塩分濃度0.85%(≒海水の4倍希釈)では、
発芽遅延も発生せず、徒長抑制も見受けられ、葉の厚さもある程度確認が出来た。無難な濃度だと思う。
・塩分濃度0.42%(≒海水の8倍希釈)では、
普通に真水を潅水した苗よりは、僅かに徒長抑制されたが、手で触った感じでは葉の厚みまでは変わらなかった。

最後にこの試験結果は、とある地域の水を使用した試験結果です。実際に育苗に使用する際は生計に影響ない範囲で小規模試験を、育苗~定植後1ヶ月くらいは自身の慣行栽培苗と比較して「これならいける!」と確認してから大規模に採用したほうが良いと思います。
ちなみに、希釈した食塩の潅水(≒1%)ですが
・小規模であれば、如雨露
・中規模であれば、サカタのタネ 液肥希釈器ニュースプレックス(約0.4%の食塩濃度しか散布できませんが…)や液肥混入器ドサトロン
・大規模であれば、潅水用タンクに直接食塩を混ぜ込んで置く等が考えられます。

余談ですが、今回の試験では他の作物も試験していました。
キク科は塩に弱いですね。
塩分濃度1.75%(≒海水の2倍希釈)では、徒長せず葉の厚みも増しましたが、薬害のような焼けが一部見受けられ、生育速度が遅く育苗に2倍くらい時間がかかりそうでした。
塩分濃度0.85%(≒海水の4倍希釈)では、徒長防止効果も含めバランス良さそうでした。しかし、上記の症状がありアブラナ科より塩に弱いため、育苗には0.5%程度が無難な濃度だと思います。
今回の試験結果をまとめると、カンラン・ブロッコリー>ハクサイ≒カリフラワー>レタス類とだんだん塩に弱くなりますので濃度にはご注意を。

また、食塩を散布・潅水するとカンラン・ブロッコリー・カリフラワー苗は表面のブルームやクチクラ層が発達しやすいそうで耐病性向上や害虫による食害も幾分か抑制されるかもしれません。参考文献には、真夏の定植時の活着も向上するそうで、まだまだ隠れた良い効果が眠っているのかもしれません。

ほかに、食塩ではなく、実際の海水や人工海水、また類似する塩を使用した方がマグネシウム・カリや他の塩類も吸収される為、更に良い苗が出来ると思います。しかし、懐に優しくないので私の育苗では使用していないです。ただし、徒長抑制以外の効果を充分見込める際は、各種試験を行い採用するかもしれません(笑)。

※ちなみに、タイトルで使用している写真は借り物ですので実際の苗とは違います。
※参考:ルーラル電子図書館

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