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内定を辞退して大学院に行った時の話

リクナビによれば、24卒の就職内定率が、5月1日時点で65%と発表した。

19卒の僕の時代と比べるとこのスピーディーな就活スケジュールに驚いている。この数字を意味するものとして、ここ数年、企業と学生のマッチングがうまくいっていることの証左である。売り手とする学生にとって、買い手にあたる企業の多くの求人から選べる有利な状況であるといえる。

以前、こちらの記事を投稿した。

意外にもたくさんのスキを頂いた。過去の新聞記事から当時の就活事情について書いたものである。結論からいえば、大学生の数に対して募集している企業がそんなに多くなかったこと。とくに文系大学生のほとんどは官庁への就職を希望していたために、激しい競争の末、大学まで出たのに就職ができない若者が続出したわけである。青田買い、リーマンショック、コロナ不景気とあったが、世界広しといえど、日本ほど仕事に困らない国はないであろう。(時の政権と経済に左右されるため、年代によって就活事情は大きく異なるため、なんとも言えないところはある。)

「18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移」文部科学省発表の統計

18歳人口はここ数年横ばいなのにも関わらず、大学進学率は年々上昇している。企業側からすれば、未来ある若手を欲する時代にあることから、学生の需要があるならば企業は喉から手が出る人材であることに違いない。

僕もその時代にいたにも関わらず、内定を辞退して大学院に進学した。以降、その経緯や進路、ときには思い出を、ときには大学院に行こうか迷っている学生にアドバイスしていきたい。

大学3年3月1日、僕の記憶では就活解禁日だったような気がする。そこから僕の就活は始まる。当初、教員志望だった僕は教員採用試験の勉強と並行して、あわよくば教育実習前に内定がほしかったのだが、就活を始めども中々「この会社にどうしても入りたい!」という強い希望もなく、内定がまだ出ぬまま5月に入り、3週間の教育実習を受けることとなった。

この教育実習が幸か不幸か、教育実習が明けた僕はすっかり就活する気をなくしていた。それでも夏前には1社内定をいただくことができた。僕の中で志望度もあったので「もういいや」と思って、就活をやめた。

夏休み明けの9月、本格的に「このまま就職していいか」悩み始める。なぜならこのまま卒業したら「もっと勉強しておけば良かった」と後悔するのではないかと不安に苛まれていたからだ。決して学業を疎かにしていた訳でもないが、もっと学問を究めたい欲が出てしまった。ただでさえ就職予備校と揶揄それがちな大学をそのまま卒業するわけにはいかなかった。そう思った僕は10月、内定辞退を申し入れた。

Tips
ここでアドバイスだが学部で公務員試験に受かった者は絶対に大学院に行かない方がいい。時の運と景気に左右される官公庁の採用を蹴るのはもったいなさ過ぎるので。ただ、教員採用試験が受かったら場合、教員としての採用を抱えたまま大学院に入学し、修了するまで猶予がもらえるので、もしその気があるなら大学院まで修了すれば専修免許がもらえる。

両親も大学院に進むことに対しては快諾してくれた。たぶん大学院に行こうか悩んでる学生のネックはここだろう。もし両親を納得させたいのであればあれば「奨学金を借りてでも行く」という誠意を見せるといい。僕はそうした。

大学院に行こうか悩んでる学生へ。大前提に大学院に入ったら就職しやすいとか新卒の給料が高くなるとか、まずそんなことはない。では大学院はどんなところか。おおよそ以下の3つである。

・勉強ではなく研究をするところ。つまり論文を書くことが主となる。
・インプットではなくアウトプットができないと厳しい。「勉強がしたい」だけだと大学院に入ったあとかなり苦しむ。僕がそうだった。
・大学教員からすれば「学生」ではなく、「研究者のたまご」としてみられる。つまり、学部よりかなり先生からのご指導は厳しくなる。

僕の大学院生としての生活を振り返ると、学問に対して真摯に向き合うことが出来た反面、学問が嫌いになった。僕の場合、歴史学専攻だったのだが、あんなに好きだった歴史が大嫌いになるほどに。

当時のテキスト。思い出したくないものである。

大学院に対するネガキャンをするつもりはまったくなく、結果的にいえば人生のなかでとても濃く、忘れもしない良い思い出になった。大学院時代に出会った学友は財産になったし、社会人となった今でも交流が続いている。同じ学問を修めた絆というやつが生まれたのだ。学部では味わえない交友関係を育むことができたのは、僕の人生の中で大きな転機となった。

もし大学院に行こうか「悩んでいる」くらいなら僕は絶対に行った方がいいと思っている。自分が納得できるまで学問に向き合える経験はここ(大学院)にしかないのだから。それこそ「もっと勉強しておけばよかった」と後悔しないために。

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