満ち足りた気持ちで過ごす夜

「天の足り夜」という言葉があるのを最近知った。出典は『万葉集』の詩だということがわかった。

現には 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天之足夜を

現代語訳するとこういった感じだろうか

現実にはあの方には逢えないでしょう。せめて夢の中に出てきて逢って下さい。満ち足りた夜にするために。

これの何が良いと思ったかというと「天の足り夜に」というオシャレさだ。意味としては「満ち足りた気持ちで過ごす夜」になる。自然に定まった運命に身を任せた結果、とても満ち足りた夜なのであると。うん…いいなぁ。

時折、僕も自然の流れに身を任せた結果、うまくいったこともあれば、失敗したこともある。どちらかといえば失敗が多い。「もういいや♪明日になったら考えよう♪」という切り替えが大事だとわかったのは社会人になってから。「明日は明日の風が吹く」という慣用句考えた人、まさにそれな。良いことがあっても、悪いことがあっても、その日、家で過ごす夜は満ち足りた気持ちでいさせてほしい。

僕の夜の過ごし方(“夜のルーティーン”といったら仰々しいが)といえば、18:00頃帰ってきて一通りの家事を済ませたあとは大体YouTubeを観て眠くなったら寝る。

クセすご動画を送り合う仲のフォロワーさん(出会いはSNSだが、僕はもうフォロワーさんじゃなくて友だちだと思っている)からいつものようにクセすご動画が送られてくる。大体の動画は僕のツボに刺さる。たとえばこれ。

「コスメティック田中」というチャンネルだ。基本、感情がない。行ったら行ったで楽しいはずのディズニーをこんなに悲壮感漂わせているVlogを僕はまだ観たことなかった。

古今東西の都市伝説を紹介しているチャンネルだ。僕はオカルト、民俗学とか好きなので、めちゃめちゃ僕の嗜好にささったチャンネルだ。信じるか信じないかはあなた次第である。とくにピラミッドは都市伝説の塊だと思う。古代文明として突如発展した都市の“なぜ“にせまったチャンネルといえよう。

「DTも守れない男に何も守れないんですよ」と「バキバキ童貞です」で、ネットのおもちゃにされた2人のコラボ動画だ。最近めちゃめちゃ観てるのがこの「バキバキDT【バキ童】」だ。「最近何のYouTube観てるの？」と聞かれたら、本当は「バキバキDT」と答えたいところだが、人にオススメするのはキワドイ。どちらかというと1人でこっそり楽しみたい。なので無難に「QuizKnock」と答えてしまう。ちなみにQuizKnockの東大生が本気でバカをやっている動画が好き。オススメはこちら。

仕事から帰ってくると基本的に考えることを辞めてしまう。そうすると、上記のような動画を観てゲラゲラ笑ってしまう。そう、IQが2の状態で観ていると大抵どんな動画でも笑ってしまう。なんでもない普通の夜なんだけど、僕にとって心地よい夜を過ごしている実感がある。そして寝るときはラジオをかけながら寝る。これが今の幸せだ。

以前、佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』という小説を読んだことがある。

明るい夜に出かけて (新潮文庫)

富山（とみやま）は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢（かざわ）、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田（さこだ）、ワケありの旧友永川（ながかわ）と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。

新潮社HPより

深夜ラジオとコンビニバイトの青春を描いた群像劇だ。自分もあの頃、｢青春していたんだなぁ｣と気付かされる。ラジオ好きにオススメしたい小説だ。そしてめちゃめちゃエモい。

閑話休題。夜の僕の過ごし方は大体決まってYouTubeを観て寝落ちする。僕の生息地はTwitterで、読書垢と称したアカウントを運営しているが、ここ数ヶ月、活字を追うのを止めている。理由はわからないが、よくある、｢活字が入ってこなくなる｣スランプになっている。そうなってくると、最近読んでいる本といえば俳句か歌集になる。最近は種田山頭火を読んでいる。1日1句でもいいから読み進めていこうと決めて読んでいる。

種田山頭火の俳句で好きなのは

曼珠沙華咲いて ここが私の 寝るところ

曼珠沙華……ヒガンバナのことだが、山頭火のように自由奔放に生きられないけど、お昼寝くらいは……そんなことを思う一句だった。

僕の過ごす夜はどうってことない普通の過ごし方ど、なんでかなぁ。僕は今の日常がこのまま続けばいいなぁと思う。明日のこと考えたり、将来のことを考えたりしないで、今の夜時間を楽しもうと思って生きている。それ僕の活力の糧になっている。普段Twitterで言わないことや言えないことをこうしてnoteに書いているそんな夜。