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NEO表現まつりZ|クロストーク【辻村優子×テヅカアヤノ(TeXi's)】

6月21日から2週間にわたって開催される『NEO表現まつりZ –技術開放!芸術家たちがなんかやる!!』。13組のアーティストが参加し、10の演目+5つのWSが開催されます。
「まつり」開催に向けてそれぞれ準備を進める参加アーティストの方をマッチングし、普段の活動や「まつり」に向けての心境などを伺うクロストークを実施。
今回は、辻村優子さんと、TeXi’sのテヅカアヤノさんをお迎えし、それぞれの創作状況や心境を伺いながら、まつりの全貌とそれぞれの取り組みに迫ります!

-辻村さんとテヅカさんは初めましてですか?

テヅカ:実は意外と前に出会ってて、私が(いわき総合)高校三年生の時の二年生のアトリエ公演に「悪魔のしるし」の危口さんと一緒にいらしてくれてて。私はスタッフとしてついててその時からつじこさん(*辻村さんの呼び名)だっていう認識をずっとしていて。そこからだいぶ時間が空いて、2022年の冬に北千住BoUYで公演をやっているときに、2階で円盤に乗る派の稽古されてて。「つじこさんや!」って思ってて。でもあまりにも久々だったので声かけらなくて笑。絶対覚えてないと思ったので。その後、STスポットで篠田(千明)さんの譜面を起こすみたいなWSでお会いしたんですっけ?

辻村:ちょうど去年にDr. Holiday LaboratoryのWSがあって、(山本)伊等くんがチェルフィッチュの企画で一般向けのWSをやるための内々のWS検討会みたいなやつに呼ばれてそこで再会しましたね。

-普段の活動と、今回「まつり」で実施すること、それぞれ繋がってたり違ったりする部分があるかと思うんですがそのあたりを伺えたら。

辻村:実はですね、全然準備できてなくて笑。私は一人でやってるタイプの人なので、壁打ちさせてくれる人を見つけて、何するわけでもないんですけど話聞いてもらったりみたいなことをするんです。
4月の末に『ほぐしばい〜読みほぐし実践編〜』が終わったので、その疲れもあったのと、人生の毒だしなのかなっていうぐらいいろんなことが起きててちょっとぼーっとしちゃってて笑。

「読みほぐし」とか「ほぐしばい」とか言って活動してて、『なんぞや?』ってなるじゃないですか。常に説明をしなきゃいけないので、去年はスライドを使ったプレゼンの練習をめちゃくちゃしたんですよ。なので今回の「まつり」では、パフォーマンスをやるというよりあらためて自己紹介をちゃんとしようかなと。「ほぐしばい」がなんなのかをちゃんとお客さんにプレゼンして、後半にはゲストトークをしようと思ってて。ゲストは贅沢貧乏の山田由梨さん。山田さんはこの前『ほぐしばい〜読みほぐし実践編〜』にきてくれた時にすごくいいってなってくれてお呼びしました。もう一人は新国立劇場演劇研修所時代の先生だった山中結莉さんを呼んでお話ししようと思ってます。
私は新国立演劇研究所の研修生だったんですけど、その前は多摩美に在籍していて、価値観の振れ幅が大きい中で演劇をやってるんですけど、でも個人的には「ほぐしばい」でやってることと、新国で教わったことって見え方が違うだけで全然離れてないんですよ。それをちゃんと説明したいなと思ってます。いろんなところに点在した自分が通ってきた演劇観みたいなものを、一本繋ぐようなトークイベントにしたいなと思ってますね。

テヅカ:公演疲れますよね笑。プライベートが安定してないと演劇とかパフォーマンとかイベントとかできないなっていうことを最近よく考えてます。

-自己紹介ってことは、このイベントから辻村さんの活動を追いかける人が現れると面白そうですね。

テヅカ:私は、普段TeXi’s単体で自主公演としてやらせてもらってるので、どれだけ毒々しいものを作っても、空間の作りとかからお客さんもそういうものだと思って見てくれるんです。だけど今回は野外でやるし、「円盤に乗る場」の枠がある中でやらせてもらうので、「まつり」とかアートフェスの中で、『ちょっとこれ見ていいのかな?』みたいな立ち位置になるかなと思ってます。結構毒々しいというか、怖めの語彙だったり、カラーの使い方してるので。でもそういうものが一個あってもいいかなって思いながら、下駄さんと畠山さんと作ってます。
だから、どこでも誰とでも私が作りたいものを作るにはどうしたらいいんだろうなということは、自分の内側のテーマとしてあります。誰とでも私がやりたいことを嘘つかずにやるっていうことは俳優の皆さんにとっても大事だと思っていて、演出が嘘ついて曲げたこととかわかると思うので。伝えたいことを伝えていくにはどうしたらいいかなっていうことを作品作りではトライしてる最中です。

-テヅカさんは最近「乗る場」に入って、辻村さんはだいぶ初期の頃から入ってるんだと思います。テヅカさんが言った「毒々しいもの」みたいなものは、これまでの「乗る場」メンバーの変遷や「まつり」の様子を見ても新しい要素な気がします。辻村さん的に、これまでの様子を見てる中で新しいメンバーが入ってくるというのはどのように見えていますか?

辻村:意外と劇団をやっている人が来るんだなとは思っていて。初期の頃だと、演劇に限らない色々なジャンルの人を誘っていたんだと思うんだけど、最近は割とはっきり演劇という感じで。変な言い方になっちゃうんですけど『みんな集団で創作をしようとしてて偉い』ってめちゃくちゃ思ってて笑。テヅカさんTeXi’sって一人ですか?

テヅカ:今活動してるのは2人です。

辻村:公演になると人を巻き込んでやりますよね。私は公演を打つことを引き受けるってすごく大変だよなと思っていて、事業としても大きくなっていくし。だから私は人のふんどしを履いて行きたいって思って20代を過ごしていたし、それによる弊害を30代で受けて、結果的に自分で作ることを始めざるをえなくなってしまったみたいなところがあるので。(「乗る場」も最初は)一人で活動する人が多かったように思うんですけど、劇団で公演という形を打ってる人たちが来るようになって。
さっき、公演って大変ですよねっておっしゃってたじゃないですか。そんなに大変なのにどうして公演という形を繰り返しているんですか?

テヅカ:見たい景色があるから......?。集団創作めっちゃ大変だし、向いてないなとも思うし、毎回やめようかなとか思うんですけど、その集団がないと私は本当に誰とも喋らず人と関わらなくなっちゃうタイプの人間なので、あまりコミュニケーションが得意じゃないし、自分がパフォーマーになって何かを表現するっていうことはやりたいことではない。やっぱり人の身体を使ったりとか、誰かを媒体として何かするっていうことに今はすごく興味があるし、やりきれてないなっていうことをすごく思うので、せめて自分が満足して終わりにしたいなみたいなことは思ってます。できないからやめるにはなれないくらいにはやりたいことあるなぁ、みたいな。それはスタッフワークも含めていろいろ見たいこととかやってみたいことがまだあるから、結果集団になっちゃうみたいな感じですね。この人のここ面白いから、一緒にやりたい。あなたと作りたいよって集めていくと手段になっちゃって、なんか責任があるぞっていう方が、順路として正しい感覚です。

辻村人を媒介にしてっていう言い方をされてて、改めて聞くと結構すごい音だなと思います。すごい暴力的なことしてるなって思いながら(俳優を)やってますね。私はどっちかっていうと使われることが好きなんですよ。自分でなんか作りたいって思ってなくて俳優をやってる。やってるけど、一方で使われてる側面もある。そのどっちもが自分にとってやりたいことなんですよね。ってことが、自分のやりたいことだったりしてて。この辺がちょっと交錯してるんです。だから、すごい誤解されることもある。何でもじゃあやらせていいって思われると、それは違うなという感じで。だから難しいんですよね。自分がやらされたい、主体的に思ってるってどういう状態なんだよみたいな。

-お二人の話を聞いていて、作品のテーマや興味として、演劇とか舞台という構造の中で身体を使うことへの意識が共通しているなと思います。具体的なモチーフや雰囲気が似てる人は割と出会える気がするけど、その手前の大きなテーマが似てる人と出会えるのは、アトリエで集まっているという点が生かされている気がします。

辻村:西尾(佳織)さんと話していて、俳優やってて嬉しい瞬間って、パフォームしてる時間の中にしかないって気づいたんですね。正直誰とも共有してなくて。体の内側にあるものだから。やってる時間の中にしか喜びがないから、やれさえすれば何でもいい、とにかくやれる状態に自分を持っていくとかキャスティングされるためにっていう欲望の方が強くなっちゃう。構造を捉えながら集団にいるってことで見失うことがあったりしたんですね。だから、構造の中で体を使うことに確かに興味はあるんだが、構造の中での体に興味があるというよりも、構造の中に入り込んでその体になることが目的になってるっていうのは、なんかちょっともしかしたらテヅカさんと違う視点なのかも。
テヅカさんはどういう視点で俳優のことを見てお声がけしてるんですか?

テヅカ:まず体を動かすことにネガティブじゃない人であることは前提にあって。あとは道歩きながらそのまま舞台に上がれる人と、舞台からそのまま道に歩ける人。この行き来がシームレスな人が好きです。でもそういう人たちはたぶん我が強いので、内にいろんなものを秘めながら稽古に来てくれる笑。私それぞれの正義があって、すごいなって思いながら、どうしたら全員の正義を守りながら良いクリエーションってできるのかなっていうことを考えたりとかします。創る作品は接触が基本的に多いので、絶対一人でやった!にはなれないですね。台本が上下二段に分かれたりしてて、ここのセリフとここのセリフ合わせたいみたいことがいっぱいあるので、あなた一人だけがやるべきことやってもやれないんだよっていうことはずっとある課題です。掲げたミッションに対して、全員で頑張っていくしかないみたいな状態が面白いですね。うまくいった時にアイコンタクトしてるなみたいな。それを外から見るとやっぱ感動するので、いいな〜って思いながら見てます。身体の動きとかもうまくいくと、やっぱニヤニヤしながらお互いのこと見たりするから、今のお互い気持ちよかったんだなとか思うと素敵ですよね。

-最後に、「まつり」に来てくれる方たちに一言お願いします。

テヅカ:暑いと思うので、お水を持ってくるといいのかなって思ってます。野外ですし。作品は、TeXi’sを追ってくれてる人には、6月の公演終わってすぐですけど、だいぶ前から本は書いていたし頑張って作っているので、ぜひ見てもらえたらなって思います。
男性の一人芝居って、今までなかったので、面白いのかなとは思います。ポジティブな雰囲気をまとっている企画にちょっと黒いものがあるのも面白いと思うので、その辺も見てもらえたら嬉しいなと思ってます。

辻村:分かりにくい作品をやってるって思われてるのは重々承知なんですけど、それでも分かりやすくしてるなと思っていて。自分では人に渡しても大丈夫な形にしてます。
私今年の6月で、「乗る場」やめちゃうんですね。常に自分の中にあるわかりにくいものや葛藤を、そのまま人にぶつけないようにすごく気をつけてたと思うんです。アトリエでの振る舞い方もそうだけど、場を共同で運営するっていう時にすごく大事なことだと思ってたんですね。だけど自分の話しないように気をつけすぎてたなって思ったんですよ。だからなるべく新国でのキャリアとか、自分が商業をやってきたこととかをなるべく並べないようにしてた。ここではここの感性を優先しようと思ってたんだけど、やっぱ20代の頃は商業の仕事もやらせてもらったし、新国からスタートしてるので、そういう自分をアトリエでは出してないっていうことはすごい矛盾してると思ったんですよ。最後の最後ですけど、ここで受け入れられる感性だけを表現してきたことに後悔がちょっとあったなと思って。『私全然俳優訓練を受けてるし、商業もやりました』みたいなことを言うみたいな、ここに来る客層に向けて分かりやすく何かをするっていうことを一旦やめて、自分が納得するように組み立ててみようって思っています。なので、見る人が楽しんでくれるかどうかはちょっとよくわからないんですけど、思い残すことがないように準備しようかなと思ってます。楽しみ、楽しみですね。

インタビュー・編集:中條玲

TeXi's『どうブツ園』

動物園で飼育されているキリンとライオンと、その飼育員の話。 キリンが動物園の外に出ることに強く憧れ、その憧れはやがて死へと繋がっている。 キリンの死を止められなかったライオンの後悔と、 飼育されていることに強い嫉妬をもつ飼育員の叱責が生きづらさを感じることなく生きていくことができる人間への強い批判を描く。

日程(上演時間35分)
6月21日㊎17:00〜(出演:日和下駄)
6月23日㊐13:00〜(出演:畠山峻)
6月28日㊎17:00〜(出演:畠山峻)
6月29日㊏13:00〜(出演:日和下駄)

会場|旧小台通り防災スポット

辻村優子『ほぐしばいほぐす会』

自分の知覚の特性を見つめ、自身にあった演技法を探究したこの5年(乗る場では3年)……自身の演技論の言語化、作品化を繰り返す中で見えてきたものとは……?ほぐしばいとは一体なんだったのか⁈そのアーカイブも含めたプロジェクトの全容を一挙公開!!すべてのNEO表現者に送る、辻村の魂が叫ぶトークイベント!!!

日程(上演時間90分)
6月29日㊏15:00〜
6月30日㊐11:00〜

会場|おぐセンター 2F


辻村優子
新国立劇場演劇研修所三期修了。舞台を中心に俳優として活動。自身のセラピストとしての体感をもとに演技ともみほぐしの相互関係についての探求中。見ているだけで体がほぐれる演技「ほぐしばい」の実践を目指している。これまでの作品に「乗る場のもまれ処」「サロン乗る場」「ほぐしばい~実話怪談編」「ほぐしばい~よみほぐし実践編~」など

TeXi's
テヅカアヤノが主宰を務め、演劇・ダンス・ファッションショーなどシームレスな創作を行う団体として2021年に設立。当事者性を軸とする被害・加害関係の複雑さをテーマに、傷つきながら自己と向き合う時間をつくる「優しくないけど優しい芸術」を指向する。俳優・観客の安全を確保する線引きを行いながら、身体・空間への特徴的アプローチで堂々巡りや対立のフラストレーションをうず高く積み上げてカタルシスへと導く作風が特徴。


『NEO表現まつりZ­ –技術開放!芸術家たちがなんかやる!!』
会期|2024年6月21日(金)〜6月30日(日)

『NEO表現まつり』は2023年、アトリエ「円盤に乗る場」のメンバーが中心となって、東京・荒川区の西尾久エリアにて開催されました。アーティストによるいつもとは一風違った表現≪NEO表現≫を多数展開した『NEO表現まつり』は、多数のメディアに紹介されるなど大きな反響を呼びました。

そして2024年、よりパワーアップした『NEO表現まつりZ』となって帰って来ます! 同じ西尾久エリアを中心に、個性の異なる5種類の会場をご用意。ステージパフォーマンスやワークショップ、分類不可能なものまで、あらゆる表現が展開されます。

今年のテーマは「技術(ギジュツ)」。アーティストが日々アトリエで磨いている「技術」は、普段は作品の奥底に隠されています。しかしそこには、あっと驚く発見や思わず「自分も表現したい!」と感じてしまうような「何か」があるはず。それを掘り起こして、みなさんの前にお披露目します。

ここにしかない体験にあふれた6日間、あなたも未知に出会いに来ませんか?

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円盤に乗る場

¥500 / 月

演劇プロジェクト「円盤に乗る派」が運営する共同アトリエ「円盤に乗る場」情報ページです。詳細はhttps://note.com/noruha…

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