見出し画像

ノルウェーの日常 #1 ストライキで中学がしばらく休校⁉

これはノルウェーに住む僕の日常生活のお話。

平日の朝、中学生の弟が友達と海に遊びに行く準備をしていた。家から徒歩15分の所に小さな島があり、夏になると地元住民が集まる人気スポットだ。

ちなみに、6月の気温は20度前後で日本人にはまだ肌寒い気候だ。だが、 ノルウェー人は気温が15度くらいになると海で泳ぎ始める

画像1

しかし、どうして弟は平日の朝から海へ遊びに行ったのだろう。まだ夏休みは始まっていない。平日だから8時半から14時まで授業があるはずだ。

弟に事情を聞いてみると驚きの事実を聞いた。なんと、中学校の先生が現在ストライキを決行中でしばらく休校になるらしい。そういえば、数日前も弟が学校で授業を一時間だけ受けて帰ってきた。ストライキの影響で他の授業が無くなったらしい。

いつ労働組合と雇用側の交渉が成立するか分からないため、学校が再開する日もまだ未定の様子。弟は夏休みの三週間前に突如現れた「スト休み」を嬉しがっていた

学校の先生がストライキを決行するなど日本では聞いたことがない。しかも2ヶ月間の夏休みが始まる直前にストライキを決行するとは、タイミングが少しオカシイと思う人もいるかもしれない。

しかし、ノルウェーでは毎年様々な業界でストライキが起きている。僕も以前、バスの運転手のストライキで一週間バスの運行が止まった事を経験している。

ノルウェーでは毎年5月頃に労働組合と雇用側が団体交渉を行う。そこで、労働環境の改善や給与アップなどの交渉が行われる。意見が一致しないで 交渉が決裂するとストライキが決行されるのだ。

画像2

ストライキ中の先生は「先生はストライキ中!」と書かれたT-シャツを着て街中の至る所に立っている。

ストライキ中で仕事がないため、駅前でダンスを披露したりロータリー交差点の真ん中に座っていたりショッピングモールを歩いたりしている。

では、ノルウェーの世論は先生のストライキをどう思っているのだろう? 「生徒が授業を受けられなくて困っている」「先生が授業放棄とはどういうことだ」などと批判的なコメントがあると思いきや、世間ではあまり話題になっていない。ストライキ慣れしたノルウェー人からするとそこまで驚きの出来事ではないみたいだ。

多くのノルウェー人は労働組合に加入している。組合員は年に一回行われる団体交渉が決裂した場合にストライキを決行する権利を持っている。今回のストライキも先生が労働者としての権利を行使しただけと楽観的に見ている。

もしかしたら「先生が一社会人として自らの権利を行使する姿を生徒に見せることも教育の一環」と考えていいのかもしれない。このような考え方は現在の日本に必要なのかもしれない。

日本の労働者は、有給や育児休暇などの取得をためらう。制度上では認められているのにも関わらず、社会の雰囲気や同調圧力で実際には休みを取らない。政治家が作り上げた制度に社会が追い付けていない日本特有の社会問題だ。もしかしたら、ノルウェーのように子供の頃から身近な大人が権利を行使する姿を見たらこの事態は変わるのかもしれない。

一週間後、先生のストライキは終わって学校は再開した。そして、二週間後には2ヶ月間の夏休みが始まる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?