ある書店のはなし

みなさんは本屋に行ったことがあるだろうか

たいていの本屋は、ジャンルやカテゴリー別に整列されていて、目的の本に一直線で向かうことのできる構造をしている。わたし自身も何度もお世話になっている。



わたしの地元に面白い本屋がある。それがこの「山本書店」である。

地域NEWS号外ネット市川市『【市川市】日本全国からお客様がいらっしゃる「山本書店」をご存知ですか?』https://ichikawa.goguynet.jp/2021/09/29/yamamotoshoten/、2024年1月9日閲覧

京成八幡駅南口から徒歩30秒、建物の外にはみだした本棚が少しミステリアスな雰囲気を醸し出している。
この山本書店は、web通販サイト「日本の古本屋」にも登録されている正真正銘の古本屋である。自分が物心ついたころからすでにそこにあった。

当たり前のようにあるこの山本書店だが、実は以前はそこまで読書をする人間ではなかったこともあり、あまり足を運んだことはなかった。
最初に足を運んだのは数年前だろうか、そこに広がっていたのは無秩序に並んだ本の山である。それがどんな光景なのかは、こちらのweb記事に写真があるので参照していただきたい。

この山本書店で取り扱っているのは「哲学宗教、歴史、社会科学、国語国文、古書一般(その他)」とある(『日本の古本屋』ホームページより)。特に郷土史関係はかなり充実しているようだ。


実際に足を踏みいれると、一応ある程度はジャンル別になっているが、全ての本が棚にしまってあるわけでもなく、中には床に平積みになっているものもある。
必ずしもそこに自分が最初から欲しいと思ったものがあるとは限らない、けれども何かしらの本と出会える、そんな場所である。

あいにくわたしは文学や郷土史歴史には疎いのでどれほどの価値があるのか断定できないが、お宝本もある。

このように昭和期だったりそれ以前の本も、もしかしたら売っているかもしれない。しかも破格の安さで。何なら国立国会図書館の蔵書レベルかもしれない(詳しい人ならわかるかも)。


わたしは芸術書道音楽関係の本やクラシックCDをよく買い漁るのだが、「偶然」前々から見つけられなかった本や、尊敬し手本とする書家である柳田泰雲の手本を何冊も見つけることができた。

それ以外にも何となくふらつきながら見つけて手に取った本は何冊あったか見当もつかない。

そんな山本書店は、自分にとっては目立った境界のない世界、「自然界」や「宇宙」のような姿であった。自然界や宇宙とは、特にこれといって視覚で目立って認識できる境界は、本来はない世界である。
山本書店の本棚は無造作に見えるかもしれないが、それなりの秩序を持って集まっていて、来るものを拒むことはない。

そんな自然界や宇宙のような場であるからこそ、自分はその空間に足を運び本と出会い、買うという行為に対して、他のモノやコト、娯楽などで代替不可能な、言葉に言い現わせないような不思議な快感、何か自分が物質的なもので満たされる心地よさを感じていた。


しかし、遅かった。わたし自身が積極的に本を読もうと思ったのはここ最近数年のこと。
加えて、そもそもの読書するスピードがとても遅いので今までもそこまで頻繁に本を買う方ではなかったが・・・

もっと早く足を運べばよかった、そんな後悔が未だに残っている。
というのも

2024年3月でこの山本書店は閉店する。

八幡のシンボルとして、文化都市市川を陰から支える姿のようなこの光景はもう見られなくなる。
実は子供のころは謎に満ちたあやしい雰囲気だったことに妙な存在感と得体の知れない底知れなさを感じていたのか、一度も行ってなかった。もっとも、子供向けの本があるかは怪しいが。
それでも、京成八幡といえば、と思いついて二番目くらいに出てくるのがここ山本書店である(一番目はかつて存在していた京成百貨店)

寂しさよりも、この果ての見えない世界をもっと早くから探検すればよかった、その思いが今では強い

だけどせめて後悔のないように、この世界が消えてしまう前にまた行っておきたい。

わたくしは文学には疎い(2回目)けど、発禁だった本とか謎本は沢山あります。
ネットの世界でも偶然の出会いはあるかもしれない。けれど、ここ山本書店はネットの世界や区切られた世界では出会えない何かと出会える貴重な場所である。

もっと早く教えろ、と言われればそこまでであるが、わたしにできることは山本書店を探検して本と出会い買うこと、そしてこの文章を読んでくれた方に是非とも一度騙されたと思っていいので最後に足を運んでほしいと願うことである。

今日ゲットした本 特に買うあては最初なかったけど何となく買った。

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