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【医師が回答】子育て家庭向け麻疹Q&A

ここ数週間感染者が報告されている「麻疹」。

  • 定期接種のタイミングがまだ先で、ワクチンが接種できておらず不安

  • ワクチン不足と聞くけど大丈夫なの?

  • 感染が疑われるときはどうすればいいの?

など、キッズドクターご利用者さまからも不安や質問が多く寄せられています。今回はそんな子育て家庭のご不安に、キッズドクターでオンライン診療を担当する三宅医師が回答します。

【監修医師:三宅 優一郎】

日本外科学会認定外科専門医、日本小児外科学会認定小児外科専門医。初期研修終了後、順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科に入局。大学病院やこども病院で研修。カナダで横隔膜ヘルニアの胎児治療の研究にも従事。専門は小児外科疾患。2児の父。

ーそもそも麻疹ってどんな病気ですか?

三宅先生:麻疹(ましん)ウイルスが原因で発症する病気です。感染力が非常に強く、感染者と同じ空間にいるだけでも空気感染で感染する可能性があります。特徴的な症状は下記のとおりです。

  • 38度前後の発熱

  • 倦怠感、不機嫌

  • 咳、鼻水、くしゃみなどの気道症状

  • 目の充血、目やになどの結膜炎症状

  • 口の中の白い斑点(コプリック斑)

高熱が2〜4日ほど続いた後一旦解熱し、再度高熱が出ると同時に全身に発疹が出現します。発疹は顔から始まり、首、胴体、手、足へと広がります。
発症から7〜10日ほどで熱が下がって発疹が消失しますが、色素沈着が残ります。

麻疹にかかると、30%の割合で合併症が起こるとされています。麻疹の合併症には、肺炎、中耳炎、クループ症候群、心筋炎、脳炎などがあります。特に発生頻度が高いのが肺炎と中耳炎で、脳炎が合併するのは1,000例に0.5〜1例ほどの割合です。また1,000例に1例ほどの割合で死亡する可能性があります。

ー合併症や死亡率のことを聞くと怖くなってしまいます

三宅先生:そうですよね。だからこそしっかりと麻疹を理解して、正しく対応したいですね。むやみに怖がりすぎず、正しい知識をもっておくことが大切ですよ

ーどのような対策をすれば感染を防げるのでしょうか?

三宅先生:麻疹は感染力が強いため、手洗い、マスクなどの基本的な感染症対策では予防できず、ワクチンの接種が最も有効な予防方法とされています
ワクチンを接種することによって、 95%程度の人が免疫を獲得することができると言われています。 通常、接種後約2週間で抗体が形成され始め、感染を予防する効果が出てきます。

麻疹のワクチンは定期接種です。1歳と小学校入学前1年間の2回接種することが推奨されています

ー1歳未満でまだワクチンを接種していない場合は、早めに接種したほうがいいのでしょうか?早く接種すると副作用があるのでしょうか?

一般的には1歳未満で接種しても重大な副作用のリスクは高くないとされていて、1歳未満でも接種することはできますが、免疫の付き方が十分ではないとも言われています。もし身近で麻疹の感染者が確認された場合は、一度かかりつけ医に接種について相談してみても良いかと思います。ただし定期接種以外のタイミングでのワクチン接種は自費になります。

ーワクチンを1回しか接種していない場合、感染しやすいのでしょうか?2回目を早めに接種することはできますか?

麻疹のワクチンは、1回目の接種で約95%の方に免疫が形成され、2回目の接種が完了することでより高い効果が期待できるとされています。予防接種を1回しか受けていない場合、感染のリスクは若干高まる可能性があります。

海外転居や麻疹が流行している地域に訪問するなどの特定の理由がある場合は、定期接種で予定されている時期よりも早く予防接種を受けることも可能です。身近で麻疹が流行している場合などは、2回目の接種のタイミングを医師と相談することをおすすめします。ただし定期接種以外のタイミングでのワクチン接種は自費になります。

ーワクチンが不足しているというニュースも目にします。予防接種ができないのではないかと心配です

三宅先生:たしかに現在麻疹含有ワクチンの不足が報告されており、供給が追いつかない場合があります。とはいえ、定期接種のワクチンが不足することは今のところない見込みです
ただこのような状況下では定期接種の実施が優先されることが多く、追加接種や早めの接種を検討している方は影響を受ける可能性があります。お子様やご家族の健康状態、ワクチンの在庫状況を考慮し、かかりつけ医と相談しながら最適な判断をしていただければと思います。

ー妊娠中のママはワクチン接種してもいいのでしょうか?妊婦さんがかかったらお腹の赤ちゃんに影響はありますか?

三宅先生:妊娠している方はワクチンを接種できません妊娠中に麻疹にかかると流産や早産を起こす可能性があるので、現在妊娠していて麻疹に対する免疫力がない方は、麻疹流行時は人込みや流行地域に近づかないようにしましょう

これから妊娠を計画されているママ・パパは、予防接種の記録を確認したり、採血で抗体価(免疫があるかどうか)のチェックをされたりするのが良いと思います。特に1972年10月1日〜2000年4月1日生まれの方は定期接種が1回のみだったため、1回しかワクチンを接種しておらず免疫が十分ではない可能性があります

ー保護者から子どもにうつることもありますか?保護者ができる対策があったら教えてください。

三宅先生:麻疹は感染力が非常に強い病気なので、保護者様からお子様への感染も十分に考えられます。保護者様ができる対策として最も重要なのが、自身の予防接種歴、感染歴を確認し、必要であれば追加のワクチン接種を受けることです。先述の通り1972年10月1日〜2000年4月1日生まれの方は定期接種が1回のみだったため、1回しかワクチンを接種しておらず免疫が十分ではない可能性があります

ー春休みですが、旅行など避けたほうがいいですか?

たしかに春休みのような多くの人が移動する期間は、感染症のリスクが高まる可能性があります。必要以上に外出を控える必要はありませんが、ワクチンを接種していないご家族がいらっしゃる場合は麻疹の流行状況を確認し、特に流行している地域への移動は慎重に判断してください

ー麻疹にかかっている人と接触した可能性がある場合や、麻疹のような症状が現れた場合は、どうすればいいですか?

三宅先生:まずはご自身やお子様のワクチンの接種歴や感染歴を確認しましょう。ワクチン接種歴がなく、麻疹を疑う発熱や結膜炎などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に相談してください。ただし麻疹は非常に感染力が強いので、直接医療機関にはいかず、医療機関に電話で症状を伝え、受診方法について相談することが重要です。これにより周囲への感染リスクを低減できます。

ー麻疹は感染力が強く心配なママ・パパも多いです。最後に保護者様にメッセージをお願いします

三宅先生:麻疹は非常に感染力が強い病気ですが、適切なワクチン接種により予防が可能です。お子様だけでなく保護者の方も接種歴を確認し、必要であれば追加接種を受けることをお勧めします。また麻疹のような症状が現れた場合はすぐに医療機関に相談しましょう。

必要以上に心配に思う必要はありませんが、流行情報はニュースなどで確認し、流行地域への不要不急の外出は控えるなど、できる範囲での対策を行いましょう。感染拡大を防ぐためにも、私たち一人ひとりが予防に努めることが大切です

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