伝統製法のバターを作り続けるワケと、持続可能な酪農との関係
まだまだ極寒のおこっぺより、広報を担当している松本です。
ちなみに、2月のおこっぺの平均気温は-7度。最低気温は-20度以下になることもあります。ロシアからやってくる流氷が接岸することで、一層寒さが厳しくなるんですよね。
こんな寒い季節は、ホットミルクやシチューもオススメなのですが、この時期、特によく作るのがグラタンです。
隣の西興部村にある瀬戸牛農園さんから夏に収穫をお手伝いしたおすそ分けで、熟成カボチャを頂くので毎日せっせと消費に励んでいます。
そんなグラタンの材料に、牛乳と並んで欠かせないのがバター。
そこで今日は「オホーツクおこっぺ醗酵バター」についてお話したいと思います。
醗酵バターの作り方についてはこちらをどうぞ↓
おこっぺ産生乳のバターを
守るべく始めた醗酵バター作り
「オホーツクおこっぺ醗酵バター」といえば、「なんてことないパンも醗酵バターをぬると格段においしくなる」「料理やお菓子作りに使うと腕前がワンランクアップしたかのような仕上がりに」「贈り物にすると必ず喜ばれる」
……などなど、みなさまから熱いお声をいただく安定の人気商品。
ノースプレインファームでその製造が始まったのは、創業3年目の1991年のことです。
当時、おこっぺには大手乳業メーカーのバター工場があり、地元の生乳を使って製造されていました。
ところが、バターの製造を別の場所に移すことに。
そこで、その工場でバターをつくっていた方をお招きし、ノースプレインファームでもバターをつくることにしました。
熟練の技術を要するバターチャーンによる製法を続け、さらには原料となる地元産のクリームも、そちらから分けてもらえることになりました。
結果的に、地元産の生乳を使ったバター製造を受け継ぐかたちになりました。
その後、原料のクリームは興部産と限定することが困難になり、生クリーム不足の時期には産地の指定もできないことがありました。
現在は比較的放牧が多く粗飼料の割合も多い北海道東部産のクリームを使用し、おこっぺで製造しているのが「オホーツクおこっぺ醗酵バター」です。
当初は自社牧場のクリームも混ぜて作っていましたが、やがてノースプレインファームで有機認証の商品製造に取り組み始め、バターについても自社の有機生乳のみを原料にした「オホーツクおこっぺ有機醗酵バター」が誕生しました。
長期保存できるバターには
生乳を余らせない役割が
ところでちょっと難しい話になりますが、酪農・乳業界では一般的に、バターには生乳の需要量と供給量の調整をする役割があります。
これはどういうことかといいますと……
乳牛から搾られた生乳は、鮮度が重要な牛乳から優先的に加工されます。生鮮食品である生乳の余剰分は、クリームと脱脂乳に分離し、クリームはバターに、脱脂乳は水分を除いて脱脂粉乳にすることで、長期保存ができます。
脱脂粉乳は常温で、バターは脂肪分が多いので冷凍して保管しておけるんですね。
簡単に言うと、生乳の生産量が需要を上回って余裕があるときはバターの製造量を増やしてストックしておき、生乳の生産量が少ないときなどはバターの製造量を抑えて、在庫のバターを市場に出します。
そのようにして生乳が余らないように調整しているのです。
ところが、つい最近も「牛乳(生乳)余り」が問題になりましたね。
余った生乳はバターにすればいいのでは?と思われるかもしれませんが、そう簡単にいかない理由がいくつもあります。
そのうちのひとつは、余る場所と作る場所の問題。実はバターの8割以上は北海道で製造されています。もし北海道外で生乳が余った場合、それを北海道まで運ぶのは、運送費などのコストの面からみてもなかなか難しいことです。
また工場の処理能力の問題も。ほとんどの場合、工場の製造キャパシティを無駄にすることはないので、急に追加で生乳が運び込まれたとしても処理しきれないのです。
他にもバターの輸入や保管などのさまざまな理由が複雑に絡み合って、生乳が余ったからバターをつくればよいとは、簡単にはいかない現実があります。
生乳を大切に使い切るためにも
作っているチーズとバター
幸いなことに、ノースプレインファームでは生乳を使いきれないという事態になったことがありません。
これはもちろん、たくさんのご注文をいただいているおかげですが、「搾った生乳は大切に使い切る」というのは、私たちが常に意識し実践してきたことでもあります。
原料生産から乳製品製造までを一括して行い、小規模で小回りが効くため、牛乳などの生鮮品の需要が減ったらすぐに他の加工品に回すことができます。農協にも出荷したいのですが、そこまでの生産量がありません。
もし生乳の量に余裕が出たら、私たちの生乳の保存手段であるチーズに加工をしています。熟成タイプのチーズを製造するときに、生乳から乳脂肪を一定量分離させるのですが、その乳脂肪分(クリーム)を使ってバターを作るのが現在のやり方です。
この方法だと、生乳を分離する際の脱脂乳の余剰もありません。
また、バターをつくる時の副産物であるバターミルクも、クレープや生パスタの原料として活用していただいています。
札幌、日晴堂さんの、北海道産バターミルクを使ったシンクレープや、ノースプレインファーム牧場内に併設されているミルクホールのナポリタンで使用している麺など。
生乳を使い切ろうという努力の産物でもあるバターですが、仕上がった製品は食卓の主役になりうる存在感(と自負しています!)。
まずはパンにたっぷりぬってその味を確かめていただくのがおすすめですが、クッキーやパウンドケーキなどバターが味を左右するお菓子作りにもぜひお試しください。
さあ、今日は熱々グラタンに醗酵バターをたっぷりのせたパンも添えて、残りの厳しい寒さを乗り切ろうと思います♫
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