【後編】乳牛のライフサイクルとは?ノースプレインファームの⽜について
皆さんこんにちは。ノースプレインファームに入社して2年目の内山と申します。普段は乳製品プラントで製造を担当しています。
今回は前の記事の続きです。牛の妊娠、搾乳…そして牛は最後どうなるのかというところまでお話ししたいと思います。前回の記事はこちらをどうぞ。
牛たちのライフサイクル
●種付け・妊娠(約16~27カ月齢)
16カ月齢を過ぎたあたりから発情をみて人口受精を開始します。一般的な酪農家さんだと12カ月齢ぐらいで妊娠が可能な体格にさせるようですが、ノースプレインファームでは16カ月以上かけゆっくりと成長させています。
これは有機JASによる飼料の基準や各農家さんの飼い方による違いによって生まれる差です。妊娠期間は約280日間と人間よりもちょっと短めです。
●初産準備・分娩(約25~29カ月齢)
分娩の約4カ月前になったら、育成舎から再び車で運ばれて北興地区の牛舎に戻り、搾乳舎に入ります。
搾乳舎にはお姉さんからベテランお母さんまで搾乳牛が約50頭で生活をしています。搾乳の作業などなかった育成舎とは違った雰囲気の牛舎で生活することになるので時間をかけて順応させていきます。
子牛が生まれるのは搾乳舎が多いです。分娩の目途がたったらいつでも補助に入れるよう農場スタッフは準備を進め、子牛が生まれたら哺育舎の子牛用のゲージに運びます。そしてすぐに母牛の初乳を与えます。
●搾乳(分娩~次の分娩予定日の約2カ月前)
朝と夕方の一日2回搾乳をします。春から秋にかけては放牧地で過ごしますが、搾乳のタイミングで牛舎の自分のベッドに戻ります。
放牧がない積雪期でも、パドックと呼ばれる運動場に日中は出られるように常に除雪をしておきます。搾乳牛はそれ以外の牛に比べ、乳の生産のために栄養価の高い配合飼料を多く食べさせています。
といっても、配合飼料は一般的な酪農家さんの搾乳牛が一日に10kgほど食べるのに対して、ノースプレインファームでは有機牛乳を生産するための基準により1/3程度です。
●授精
分娩をしてから40~60日の間にくる発情のサインを見極めて、次の分娩に向けた人工授精を行います。授精が成功すれば、母牛は280日間の妊娠期間中に搾乳を続けます。
●乾乳(次の分娩予定日の約2カ月前~分娩まで)
ノースプレインファームでは次の分娩予定日の約2カ月前になったら搾乳を止めます。止めてから次の搾乳までの期間を乾乳と言います。乾乳の目的は乳生産に使われる栄養を胎児の発育のためにまわしたり、母体を休息させて乳腺の細胞の再生を図り、次期の乳生産に備えたりすることです。
一般的な酪農では分娩の約1カ月前に乾乳に入りますが、ノースプレインファームではより長い約2カ月の期間を用意します。
お肉としての出荷
乳牛としての役目を終えた牛は、肉用として業者さんに引き渡されます。
廃用牛の出荷という表現をしますが、その判断は、乳質や乳成分が低下したり、病気の治りが悪くなった、次の分娩のための受精がうまくいかず乳量も減り搾乳自体を嫌がりだした、出産を重ね足腰が弱り次回の分娩に体が耐えられるか怪しくなった牛などです。農場スタッフが様子を見ながら決断します。
乳牛として働いてくれた牛たちは、次はお肉となって私たちの生活を豊かにしてくれることになります。
ミルクホールで提供しているハンバーグは、敬意を込めて北海道内で育てられた経産牛のお肉を使っています。
牛たちの社会性の育成
育成牛として生活する約2年間は体を大きくしていく期間です。しかし、それだけのための期間ではありません。実は牛たちの社会性を鍛えるというとても重要な意味合いのある期間でもあるそうなのです。
牛の社会はかっちりとしたヒエラルキーのある社会です。青草が生えた放牧地に放たれた直後には牛たちはその解放感を喜んで跳ね回るのですが、それと同時にヒエラルキーの順位付けも行われています。
お互いにぶつかり合ったりして上下関係を決定しているようで、一度決められた階級は一年を通してめったに変化しないそうです。
群れが大きくなればなるほど、順位が下の牛はヒエラルキーの影響を強く受けることになります。経産牛になると50頭以上が24時間一緒に暮らすようにようになります。
このような段階を踏むことで、目上の牛の間を分け入り自分の力でたくさん草を食べるといった「積極性」や「競争力」、自分が目上になったときに上下関係を維持しつつも必要以上に目下の牛にちょっかいを出さない「協調性」、目上の牛に餌を食べるのをじゃまされたり、いじわるをされたりすることなどに対する「ストレス耐性」が備わった牛に育てていきます。
また、経産牛となった後でも、不必要なストレスを牛同士が与え合わないよう、相性が悪そうな牛と牛がいたらベッドの位置を変更するなどして、より良い生活が送れるような手助けもします。
これができるのはつなぎ牛舎のメリットですね。
放牧という酪農のスタイルは、人による牛の生活への介入が少ない分、人から受けるストレスは少ない方法です。そして四季を感じのびのびと生活できます。一方で、牛たちの群れ動物としての性格が色濃く表れやすくなります。
ノースプレインファームは基本的に一年を通して放牧を実践する酪農場ですので、放牧自体が牛たちのストレスの原因にならないよう、飼料や清潔な住環境を整えることにとどまらず、牛たちの社会性を育むという育成の点から、おいしい牛乳を皆さんにお届けするために農場のスタッフは牛たちを観察し、管理をしています。
終わりに
普段は私は農場から運び込まれた生乳を受け入れ、乳製品を製造しているので、それらの生乳がどのように育った牛たちからきたものかまでは、意識したり知ったりする機会を持ってこなかったので、道坂農場長からのお話はとても興味深かったです。
そして、農場のスタッフが牛たちの様子を観察し、手を差し伸べながら、幼いころから社会性を育てていくことが、彼女たちの生まれてからお肉となるまでの休む間もなく続く長い長い集団生活の質を決めるうえでとても大きな要素で、生活の根幹に関わってくることなのだろうと思いました。
さらに、その生活の質は、ストレスによって品質が敏感に変化する牛乳という製品のおいしさ決めるためにも大切で、「牛たちの社会性」を育てるということは、品質の高いノースプレインファームの牛乳を皆さんにお届けするためには欠かすことのできない重要な仕事なのだと今更ですが知りました。
少し仰々しくなってしいましたが、牛と大地と人が一緒につくり上げた"おこっぺ有機牛乳"のおいしさを、牛たちの成長と生活を想像して楽しんでいただけたらありがたいです。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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