パルメニデス以前の哲学者たち④ ピュタゴラス(前6世紀)

ピュタゴラスはミレトスに近いサモス島にて生まれた。よって前回まで紹介したミレトス学派の自然学には通じていたものと推測される。
やがてピュタゴラスは地元の圧政から逃るために、南イタリアのクロトンに移住し、そこでピュタゴラス教団を設立する。

ピュタゴラス教団は極めて閉鎖的な団体であり、具体的にどのような教団であったのかは謎が多い。またピュタゴラス自身の著作がないので、これから記す内容は果たしてピュタゴラス自身の業績であるのか、それとも教団としての業績であるのか、今一つはっきりとしない。
この教団は宗教団体であり、かつ学術団体でもあった。そしてピュタゴラスの死後もしばらく活動を続け、紀元前4世紀頃に入ってからは弾圧を受けて多くが離散したらしい。

ピュタゴラス(ないし教団、以下省略する)は、アルケーを「数」であるとした。彼は数とその比例に美を見出して、そこに世界の秩序を見出したようである。
彼は整数を好み、無理数を嫌った。整数には整然たる秩序があって、無理数はカオスの象徴である。この世界は、整数による秩序で満たされている世界である。その最たる象徴の一つが、例えば三平方の定理であった。現代の日本人教育では中学三年生の数学で学ぶことになるこの定理は、ピュタゴラスの発見によるものである。この定理が発見された当時、教団内は異様な興奮に満ち溢れたらしい。なんか想像するとエモくてウケる。

他に有名な発見として、音楽の和音の振動数の比が挙げられる。例えば1オクターブの音同士は1:2である。これは最も調和の取れた和音であり、それに次いで調和の取れた和音である5度は2:3、更にそれに次ぐ4度は3:4である。
このような数の比例による調和、すなわちハルモニアは宇宙全体に満ちており、それをもってピュタゴラスはアルケーとしたのである。

以上は数の代数的な考察であるが、ピュタゴラスは幾何学的な考察もしていたようであり、その代表例がテトラクテュスである。これは教団のシンボルマークだったようで、上から並ぶ1~4の点はそれぞれ上記の和音の振動比を構成する数値である。また1+2+3+4の和は10であり、10は完全なるものをイメージさせる。

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ここまで書いて、一体どこが哲学なんだろうか?とワケが分からなくなってきた。しかしピュタゴラスは哲学の結論に非ず、通過点として触れておかねばならない人物であることは間違いないので、もう少し我慢する。

ピュタゴラスは、魂(プシュケー)の不死を信じた。私たちの魂は、肉体という牢獄に閉じ込められており、輪廻転生を繰り返す。そこから逃れて神性を回復させるためには、数学を中心とする学問を真剣に学ぶことによって、魂を清めて浄化すること(カタルシス)が必要であるとした。この辺りの宗教色は、同時代のオルフェウス教の影響が強いとされている。

さて、次回はいよいよパルメニデス直前のヘラクレイトス・・・にするつもりだったのだが、その前に、クセノパネスについて少しだけ触れておこうと思う。エレア派の元祖はパルメニデスではなくクセノパネスである、という説もあるので、無視はできないからである。


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