44.天風姤(てんふうこう)~忍び寄る影②

六十四卦の四十四番目、天風姤の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/naa8cd06c0f2a

44天風姤

主爻

成卦の主爻は初六、主卦の主爻は九五です。初六の小人がひょっこりと顔を出し、その小人を九五の天子が寛大なる心をもって処置するのです。

初六

金柅(きんじ)に繋ぐ。貞にして吉。往く攸有れば凶を見る。羸豕(るいし)孚に蹢躅(てきちょく)たり。
象に曰く、金柅に繋ぐは、柔道牽(ひ)けばなり。

金属(乾卦の象)の杭をもって(豚が動き回らぬよう)繋いでおく(縄は巽卦の象)。それ(柔なる小人が剛なる君子に牽制されること)が正しい道であり吉。(小人が)進めば凶となろう。瘦せ細った豚(坎卦の象、初六と九二で坎卦の下半分を成す)はまことに飛び跳ねること甚だしい(ので抑え込まねばならぬ)。

君子の隆盛に陰りが見え始め、陰なる小人がひょっこりと顔を出し始めたところです。巧言令色にして物腰柔らかく、人に取り入ることが巧みな者ですが、これが勢力を伸ばして天下を乱していくのです。今のうちに十分警戒しておくべきです。

九二

包(ほう)に魚(うお)有り。咎无し。賓(ひん)に利しからず。
象に曰く、包に魚有りとは、義、賓に及ばざるなり。

つと(藁包み)をもって魚(初六、陰の象)を包み込む(余計な動きをさせぬよう取り押さえる)。さすれば咎はない。賓客にこれを刺し出してはならない。

姤の時でありますので、初六は遠方と応ずるよりも近隣と比することを優先します。そこで中徳ある九二は、これを過激に処することなく、優しく包容するが如くして抑え込むのです。外に出して暴れ回らせないようにするためであるので、賓客にこれを見せてはなりません。

九三

臀(とん)に膚(ふ)无し。其の行くこと次且(ししょ)たり。厲(あやう)けれども大いなる咎无し。
象に曰く、其の行くこと次且たりとは、行くこと未だ牽かれざるなり。

(初六に会いたくて堪らず)臀部の皮膚が破れる(が如くじっと座っていられない)。進んで行ったところで(九二が初六を抑え込んでいるので)何もすることができない。(軽挙妄動なること)まことに危なっかしいが、結果として大いなる咎はない。

沢天夬の九四の爻辞とよく似ております。陰陽は惹かれ合うのが常であり、陽剛に過ぎたる九三は初六に会いたくて仕方ありません。しかし会うこと叶わず、それが結局は九三のためでもあるのです。

九四

包に魚无し。起(た)てば凶。
象に曰く、魚无きの凶は、民に遠ければなり。

つと(藁包み)の中に魚(応爻の初六)がいない。しかし(初六を九二から奪い取ろうとして)軽はずみな行動を起こせば凶。

本来は初六と応ずる立場ですが、九二が性悪なる初六を抑え込んでおり、これと会うことが出来ません。しかし九二の行動は正しいものであり、無理やり初六を奪い取ろうとする行為は凶でしかありません。

九五

杷(き)を以て瓜(うり)を包む。章(あや)を含む。天より隕(お)つる有り。
象に曰く、九五、章を含むは、中正なるなり。天より隕つる有りとは、志、命を舎てざるなり。

杷柳(かわやなぎ)の籠の中に瓜(初六、地上に生えたる陰の象徴)を優しく包み入れる。麗しき徳を(ひけらかすことなく)心の内に隠す。(陰の勢力が伸長することは世の習いではあるが)(その志は決して最後まで諦めることはなく)やがて天上から何らかのものが軌道を外れて堕ちてくるような奇跡があるやもしれぬ。

初六の瓜は、徐々に蔓が延びて柳の木を覆い尽くすほどの勢いに至るのですが、瓜はやがて爛熟して落ちるものであり、九五はこれを過激に処置することなく、あくまでも優しく処置するのです。陰窮まることは天の摂理ですが、しかし九五の熱い志が天に届いて想定外の奇跡が起こるやもしれないのです。

上九

其の角に姤(あ)ふ。吝。咎无し。
象に曰く、其の角に姤ふとは、上、窮まりて吝なるなり。

(頭の最上部にある角をもって突っかかるように)人と姤う。恥ずべきことである。しかし(遠い初六に姤うことはないので)咎はない。

姤の窮まりにあって、剛に過ぎており、過激なること甚だしく吝なるものです。しかし初六の小人とは距離が遠くして遭うことはありませんので、咎は逃れ得るのです。

まとめ

初六はこれから勢力を伸ばしていく小人であり、その勢いを避けることは出来ませんが、九二と九五は共に優しく包容して勢いを弱める努力をします。

九三と九四は初六の危うさに気付いておらず、これを会おうとするのですが、いずれも九二に阻まれて会うことが叶わず、結果としてはそれがよろしいのです。

上九は初六に会おうとも距離が遠すぎて、これもまた結果はよろしいのです。

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