気温上昇で加速する、精神疾患の時代
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:この暑さで精神疾患を患う方々の体調悪化が世界的な現象。精神疾患と気温上昇の新たにわかった際どい関係。メンタルヘルスを守ることが、これからの人事のカナメという提言。
熱波で症状が悪化
下図はちょっと見にくいですが、精神疾患の外来患者数が毎年増加していて、一番右の棒は614万人に達したことを示しています。
精神疾患は認知症、気分障害、ストレス関連障害、双極性障害、神経症性障害、統合失調症など多岐にわたりますが、図(水色の棒)は年々増加傾向にあることを示しています。
昔と違って今は神経内科、精神科の看板が街で普通に見られるようになり、企業のメンタルヘルスに関する意識も向上し、精神疾患に対する特別な意識は薄れています。
しかし、未だ日本人の間では精神に関する不調は、社会的に表にしないほうが得策との意識が強く、通院などを嫌がる傾向があり、このデータは実際の精神疾患の現実をあらわしているとは言えないでしょう。
しかし、僕はメンタルヘルスこそ、最もケアが足りない分野であり、日本経済の発展は国と企業のメンタルヘルス政策いかんである、との考えを持っています。
暑さで精神疾患が悪化している
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年8月20日号は、Extreme heat affects our mental health (異常な熱波が我々のメンタルヘルスを悪化させている)との見出しで、この異常な熱さがすでにメンタルを病んでいる方々の症状を悪化させ、そうでない人の精神の健康をも蝕みつつあることを警告しています。
最新の科学的知見によれば、この止まらない気温上昇は我々の肉体のみでなく、精神にもダメージを与えることがわかっています。
しかし、この研究はまだ緒についたばかりで、米精神医学協会(American Psychiatric Association )のチェアマン、ジョシュア・ワーセェル氏(Joshua Wortzel)は「この熱波の恐ろしいインパクトに気がついたのは、つい5年前だ。気温上昇が心身に与える影響の研究は、まだ幼児段階」と話しています。
熱さによる気温上昇は、入院、自殺率、重大犯罪、暴力事件、緊急救命室(ER)への搬送の増加と関連があることが最近の研究で明らかになっています。
特に統合失調症、認知症、精神障害、薬物依存の患者にとっては、この熱はよくありません。
ボストン大学スクール・オブ・パブリックヘルスのノリ・サルマ博士(Nori-Sarma)によると、「この異常な熱さは外部のストレッサー(ストレスを加える要素)であり、人々のメンタルヘルスを悪化させる」と警告しています。
不安障害も
神経伝達物質のセロトニンは、身体が温度を感知する能力をつかさどっています。
しかし、太陽熱と光線量が上がりすぎると、セレトニンの温度感知センサーを破壊してしまうのです。
セレトニンのレベルが上がると、気分の振れ具合、攻撃性や怒りっぽさを増幅することも、最新の研究で明らかになっています。
野菜も栄養不足に
前述のワーセェル氏によると、食物もこの熱さで鉄や亜鉛といった微量栄養素を吸い上げる力が弱まって、栄養不足になっています。
これがメンタルヘルスを悪化させ、神経発達障害のような疾患につながるのです。
夏は鉄、亜鉛のサプリを摂るのが合理的、かもです。
ダニが精神病を招く
気温が上がりすぎると、意外な原因で精神疾患につながります。
例えばダニ。
ダニが活性化し、病原菌を運ぶ力が強化されるので、それが原因で精神疾患、脳神経疾患になることが多くなります。
企業への提案
秋以降、あなたのお会社も、熱波のもたらすこうした後遺症に悩まされる社員が続出すること必至です。
ポストコロナ時代に勝つ企業は、メンタルヘルスで勝つ企業です。
まずは、アンケートで社員のメンタルヘルスを定期チェックする習慣をつけましょう。
現場で事故が起こる可能性が強まりますから、休憩を多くし、秋の残業はゼロにしましょう。
事故があればしっかりデータ化し、精神疾患との関連も調査すべきです。
企業は、50日以上も猛暑日が続くようなご時世ですから、社員に秋休みをあげましょう。
そして、リモートワークです。
あなたの会社も、昭和の方々が甲子園に熱狂しているようなら要注意です。
暑い中頑張るのが日本人のロマン、なんて思っている慶應卒の管理職が多いのは問題です。
若手人事部員のあなたが、こういう時期だからこそ、リモートワークを増やして下さい。
本来ならば、夏は2ヶ月、全部リモートにすべきだったのです。
読者の皆様も、メンタルをやられる前に、熱を避ける勇気と工夫をもちましょう。
野呂 一郎
清和大学教授
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