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日本の美術教育のダメさ。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:下手、上手だけを勝手に決めているだけの美術教育が、才能を殺し国を滅ぼすという暴論。

お絵描き天使サチコに救われた話

先日、巨匠・松本清張が取材旅行ではスケッチを心がけている、というエピソードを紹介しました。

僕はスケッチだとか、お絵描きだとかという話になると、苦ぁーい、小学生時代の美術の授業を思い出すのです。

外の風景をスケッチして、クレヨンで絵をつける課題だったのですが、僕だけ居残りさせられたのです。

理由は「下手だから」

僕が居残りで別の絵を描かされて、こころここにあらずでぼっとしているのを見かねて、サチコという女の子が、手伝ってくれました、と言うより、代わりに描いてくれたのです。

その絵は、あのビートルズのアビーロードのジャケットを彷彿させる、横断歩道を少女たちが渡っている絵で、黄色が強調された、なるほど僕の原画(笑)よりもずっと上手に見えました。

https://qr1.jp/Ne8ttu

サチコの絵とは知らずに出した作品を、先生はほめちぎり、「野呂くんやればできるじゃないの!」なんて言ったのです。

僕はサチコに感謝しつつも、自分で描いたものじゃない絵を出したことへの恥ずかしさ、ちょっとした罪の意識、そして何より自分の芸術(笑)が否定されたことへの理不尽さに打ちひしがれたのです。

だから、松本清張の絵のような、上手な作品を見ると、まるで反作用のように、子供の頃のその悪夢がフラッシュバックするのです・・って大げさかな。

芸術とは何なのか

今思うと、自分の絵を否定されたあの瞬間、僕の芸術的才能は葬られたのです。(笑)

ヘタ、ウマい、って誰がどういう基準で決めるのでしょう。

僕はこの事件以来、美術評論家がしたり顔に絵を解説するのを見ると、吐き気がするようになりました。

ゴッホが生前、作品を酷評され失意の中でなくなった話は有名です。

https://qr1.jp/NrBH9w

彼の死後、ゴッホの芸術が評価されたというわけですが、芸術の評価は時代だとか、運だとかに左右されます。

結局は芸術のよしあしとは、主観や偶然がきめるのです。

いや、今日の論点はそこじゃないんです。

芸術をうまい、へたで決めるな、そうすると僕みたいな絵に背を向けて、世をすねる美術キライという犠牲者が出るぞ、と言いたいのです。

興味をもたせることが教育

美術教育の目的とは何か、それは美術に親しませることではないでしょうか。

だから、キミの絵がウマい、下手などを言う必要はないのです。

上手な絵とほめるならば、まだ罪は少ないけれど、僕のように「どうしようもない下手な絵、かきなおせ!」は美術教育の根本理念に違反しています。

それより何より罪深いのは、「下手くそ」という暴言はその子の美術への取り組みを台なしにし、やる気をなくさせ、絵をキライにする結果をもたらすことです。

そもそも、「下手」というのは、先生の主観に過ぎません。

本当は、僕は絵の才能があったのかもしれないのです。

ほめなくてもいいから、けなすな

考えてみれば、これは美術教育に限りません。

教師はいついかなる時も、生徒の才能に対してマイナスの言葉を発してはいけないのです

僕は教室でも、廊下ですれ違う時も、学生にはいつも笑顔で接することを心がけています。

あからさまにサボるために、足早に逃げていく学生にも、「待て、授業はどうした!」などと言わないようにしています。

人間は感情の生き物です。

こちらが正しくても、叱ったら最後、嫌われます。

嫌われるだけならいいけれど、僕の教える経営学も嫌いになるのです。

それだけは絶対に避けなければなりません。

えっ?

「その美術の先生はお前の才能を認めてたから、もう少し頑張らせるために、居残りをさせたかもよ?」ですって?

それもあるかな(笑)、いや冗談ですってば。

子供は大人の言ったそのままを受け取りますからね。

絵を描くことはこれから重要になる

今の日本の美術教育がどういう内容なのかは、知る由もないのですが、絵を描くことは、少なくともビジネスにおいては、これから大変重要なスキルになるのではないでしょうか。

なぜならば、現代は権利関係、特に著作権の問題が複雑で、デリケートだからです

誰かの描いた作品を使うとなると、高額の著作権料を支払うケースも珍しくありません。

パワーポイントの立派な資料を作っても、使った絵が著作権フリーの適用外で訴えられた、などの問題が極めて起きやすいのが現代という時代なのです。

そんな時に、パワポの資料に自作の気の利いたイラストやスケッチが入れられたら、どんなに素晴らしいことでしょう。

そして時代はAI。

AIの描いた無味乾燥な絵やイラストが氾濫している時代だからこそ、あなたの手描きのスケッチが燦然と輝くんです。

美術教育は、芸術とは何かなどはどうでもいいから、まず、実践的に絵を描けるスキルを教えてほしいなあ。

いやその前に楽しく絵を描かせることですよね、出来栄えの点数など絶対につけてはいけません。

ましてや「下手だから、上手い絵を描くまで、お家に帰さない!」
などは論外です!

自作マンガの一コマでも、プレゼンに入れたら、色んなところで反響がありますよ。

遠近法の講義などいいから、人間のベーシックな動きを描いて表現する、実践的なスキルを教えろよ、学校!

そして絵がスキになったら、美大受験の相談にでも乗ってあげればいいよ。

野呂 一郎
清和大学教授

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