ゴジラでわかった、リアリティというエンタテイメント
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞で、日本の作品として初めて視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」。その秘密は「リアリティ」にあった、という仮説を検証する。
ゴジラの受賞理由
ゴジラがアカデミー賞を受けた理由は、リアリティです。
つまり、ゴジラが海からでてきて人々を襲う、あのシーンが真に迫っているからです。
これは、ゴジラの体長や体重、歩幅や馬力に海の荒れ具合、なぎ倒す家屋やビルの作りなどを数量的に把握し、科学的な衝突シュミレーションをした挙げ句、このシーンが描け、それをCGと実写で映像化したのです。
つまり、リアリティを追求して、エンタテイメントとして評価される映像ができたというわけなのです。
ゴジラと言えば、初期のゴジラにこんなシーンがありました。
ゴジラが東京湾を襲ったときの、東京がどの程度の被害を受けるかについてのシュミレーションで、出演者の地震学者が黒板にその数式を書く場面です。
あれは東大教授に実際に演算をしてもらい、その数式を黒板に写したものなのです。
ゴジラ自体が「リアルじゃねえよ」と言われればそれまでですが、リアルでないものに、リアルな分析や描写を写し込むと、観客はそのシーンにリアリティを感じ、自分が怪獣に襲われているがごとくの切迫感を感じるのです。
情報というリアリティ
僕もこれから世界に出かけて、どうやって日本を世界に理解させるかという取り組みをしようと考えているのですが、そのポイントはリアリティだと思うんですね。
このあいだ、テレビで忍者の特集をやっていたんです。
忍者ショーの演出をしている男性が、インタビューで、こんな質問をうけていました。
「外人の観客が多いですが、ショーで一番大切にしているのは何ですか?」
男性の答えに、僕は唸ったんです。
「忍者の歴史の勉強です」。
彼が言うには、外国人は確かに忍術のデモンストレーションを見て喜ぶ、しかし、その次には「どうしてこういう術が出てきたのか」という質問が出てくる、というのです。
歴史の勉強をして、なぜ、忍者がこういう術を使うようになったかの必然性を説明できなくてはならない、のです。
歴史という事実に基づいた説明を聞き、納得して初めて、外国人はエンタテイメントを感じてくれるのです。
リアリティとは情報のことである
歴史という情報が、エンタテイメントになるのです。
それはその情報がリアリティだからです。
リアリティは、それが真実ゆえに人を納得させる力を持っているのです。
言い換えれば、人は情報を与えられ納得した時に、満足感や楽しさを感じるのです。
さあ、日本的現象をもう一度あなたの調べた事実で解釈し直して、外国人に提供しましょう。
それは自然にストーリーを奏で、興奮を呼びます。
真実のストーリーであればあるほど、あなたのその表現はアカデミー賞に近づくのです。
野呂一郎
清和大学教授
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