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市場経済最大の弱点をついた習近平の笑いが止まらない

市場経済の盲点

昨日の補足をしておきます。

「マーケットに任せておけば大丈夫、市場は人よりも賢い。
このアメリカが信じてきた自由市場の法則が、いま揺らいでいるのだ」
このBusinessWeekの記述ですが、

いまさらですが、ここで言葉の定義をしておきましょう。

マーケット(市場)の定義
あらゆるものがお金で売られる交換のシステムのこと。(出典:US Economy P207)

市場経済の定義:
消費者、資源の供給者そして企業がどうやって 資源を分配すべきかを決める経済であるが、たったひとつ条件がある。それは政府からの限られた介入があるということだ。レッセフェール (原義は『勝手にさせろleave alone』)とも呼ばれることがある。 (出典:Economics for dummies P359)

BusinessWeekが主張しているのは、自由市場に任せているアメリカ経済は中国ほどうまく言ってないということですが、経済学はこれを市場の失敗として、このように定義します。

市場の失敗の定義
市場が最適でない社会的な結果をひきおこしてしまう状況のこと。市場の失敗の共通の原因は 非対称な情報、独占、外部要因。 (出典:Economics for dummies P359)

人権無視という”最恐”兵器

要するに市場は自然の需給いわばパワーバランスで動くわけですが、非対称な情報、つまり市場の価値や将来性、動向に関して情報がバラバラだと、不適切な値段で売ったり、買ったりが生じ、社会を混乱させるということですね。

少数の強すぎる企業が市場を独占することも競争原理が働かず、社会を不幸にします。また地震やコロナの様な外部要因が市場のメカニズムを麻痺させることは、読者の皆さまが今回痛感したことでもあります。

コロナ中国起源説が未だ根強く主張されていますが、その中国は今回、この市場経済の欠点をうまくついてきましたよね。

この”外部要因”という欠点です。中国は市場の自然な回復力なんて待たずに、徹底的なロックダウンで一気にコロナ感染を激減させて、世界で最も早く経済再開を果たしました。

欧米のロックダウンなど、中国に比べればその徹底さ加減で天と地です。集合住宅では、住民間に違反者を密告せよとの命令が出て、網の目をかいくぐる情報網で新規感染者を特定し、外に出さないようにドアを木材で塞ぐなどの、暴力すら厭わぬその国家規制の凄まじさ。

もちろん、政府の強権的な人民への規制は、規制などという生易しいレベルではなく、まさにナイフの切っ先を首に突きつけている感じです。

市場が失敗する要因である、非対称な情報と独占について、少し付け加えましょう。これも自由が前提としてある欧米だから、自然発生的に起こるワナと言えます。

非対称な情報とはカネが原因で情報が取れるものと、取れないものが存在する、ということです。市場に関する情報は正確であればあるほど利益につながることはもちろんですが、金持ち企業が有利なのは言うまでもありません。すでにそこで競争が損なわれています。中国の情報は国家が一貫して管理するから、非対称な情報の問題は起こりえません。

独占は世界経済の最大問題ですよね。実際フェイスブック、グーグル等に独占を許して、公平な競争が邪魔されています。これは以前論じたとおりです。中国は活動している企業=実質的な国営企業ですから、独占も何も国家が企業を運営しているわけです。一部企業の私利私欲の欧米型独占という問題もありません。

中国はアメリカ、いや世界が信奉してきた市場原理の泣き所を攻めてきたのです。

それは自由だからこその副産物です。それはワクチンが副反応を伴うがごとき、自由の代償ともいえる人類が受け入れるべき当然のコストなのですが、中国はそれを”なし”にしちゃっているんです。人権というものを代償に。

これじゃあ、勝てるわけないですよね。

だからアメリカは、中国のまねをして、政府主導で経済活動をやるってことにしたわけです。でも、人権弾圧はできないから、勝てるわけないでしょ?

構造的に勝ちにきている中国

しかし、僕は案外時代の読みとテクノロジー発展の可能性という点で、中国がアメリカよりもすぐれているんじゃないかという仮説というか、懸念があるんですよね。

中国がアメリカの脅威になっているのは、要するに先端分野でしょう。チップとかAIとか電気自動車とか。その分野にカネをどさっと投資したからって、中国の業界がそれに応えて結果を出せなきゃ意味がないですよね。

そのポテンシャルをしっかり中国は判断できる力があるんですよ。それは勝つための壮大なシステムがあるからです。

中国の優秀な頭脳を欧米に留学させ結局は国に戻す、産業スパイを張り巡らせる、欧米の優秀な頭脳を超高給で雇う、エンジニアになると人生が有利になるキャリア設計を構築するなどです。

僕も15年前に書いた拙著「ナウエコノミー -新・グローバル経済とは何かー」で、中国の今の幹部たちがほとんど欧米で学んできている、これは米国を出し抜くための国家戦略だ、みたいなことを書いたんですが、今思うとそのとおりかなと。

中国人を力で排除するしかないのか

カナダにいる友人に聞いたんですが、カナダの超一流大学の外国人枠は、ほとんど中国人でうまるそうです。日本人は入れないんですって。でも、あまりに中国人で固まるので大学も差別と言われるのを承知で、中国人学生を排除する方向なのだそうです。

この問題、論じているときりがないので、これで今回は切り上げますが、僕の皮膚感覚的な暫定的結論は、中国の今の強さは人民を外に出しているからだと思うんですよ。

優秀な中国人が、また欧米の合理的な知見を得て、ますます賢くなる。それは、欧米の強みを知るということと同時に、弱みも知って帰ってくるということです。

その一つが、自由にまつわる構造的な欠点です。人々の自由意志に反して強制ができない、ということです。

欧米の強みも弱みも知ってますます賢くなった中国人が、燃えるような愛国心を持って、いまアメリカを叩きのめしに動きはじめた。

アメリカはそれに中国のマネをすることで対抗し始めました。

もうかくなる上は、自由も奪わないと中国に勝てないのでは。

日本はどうすべきか、次回一緒に考えましょう。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それではまた明日。

                       野呂 一郎

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