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プロジェクトXの時代は終わり、かな。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:かつて日本中を熱くさせた”プロジェクトX”にみる日本の組織の強さと弱さ。その強さは時として危険であり、現代において特に危惧されるという論。
プロジェクトX復活で毎回泣かされてるけど
最近、例のNHKのプロジェクトXが再放送されてますね。でも、正直違和感しかないです。
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企業のプロジェクトの成功物語ですが、要するに実現不可能と思われたプロジェクトを情熱とチームワークで成就させた、という奇跡のヒューマンストーリーという体です。
何が違和感かというと、きのうも申し上げましたが、「乾いたぞうきんを絞る感」です。
無理、無茶を理想、使命、夢やロマンという言葉で正当化し、関わる人に精神的肉体的な限界労働を強いていることです。
こう言うと、「お前は仕事の何たるかを知らない。無理して限界を超えようとしてプロジェクトに関わるものが一丸とならないと、差別化できる製品やサービスなど生まれないのだ」。
そう怒鳴りつけられるに、決まっています。
確かに美しい話ですよね。ロマンを掲げてやると宣言し、周りから不可能を突き付けられても、幾多の困難を乗り越えて、道なき道を切り開く、しまいにはダメ出ししていた仲間も感化され協力者になりやり遂げ、みんなで泣く。
最後に「苦労をいとわなかったものだけが、プロジェクトの成功を味わえる」という例の、これも涙を誘う煽情的なナレーションが入り、大団円。中島みゆきのテーマソングが流れて、見る方も涙。
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しっかしねぇ、たしかに泣かせる演出はさすがNHKですが、泣く方もダメと言うか、みんなそこは日本人なんですかねえ。
でも、再放送を見ているあなたも、なにか違う感を感じていらっしゃると思うんです。
それが時代の移り変わりというものでしょう。
プロジェクトXのプロジェクトマネジャー評価
経営学的に、このプロジェクトの価値を考えてみましょう。言葉を変えると、プロジェクトマネジャーのマネジャーとしてのスコアです。
たとえば、仮にこのプロジェクトの推進役だったAさんが、この実績をもとに外資系企業に転職を図ったらどうでしょう。
前提は外資企業は、客観的、合理的にマネジャーの能力を判断できる、ということです。
僕が転職エージェントだったら、即座にNoを突き付けますね。
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なぜならばそのプロジェクトには、再現性がないからです。
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その成功はあくまでAさんの情熱と、それに動かされた仲間たち、そしていくつかの偶然が重なったからです。
そしてAさん自身そして仲間も、自分達の生活を長期間犠牲にして、働いた。これも偶然にすぎません。
Aさんの人柄や熱意が周囲を動かしたとしても、それはどんな状況でも起こるとは限りません。
一番ダメなのは、自分と周囲に生活に影響を与えるほどの負荷をかけていることです。
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でも、これがまだ美談になるのが日本の企業風土なのです。
滅私奉公、お上(会社)のために尽くす、情熱を注いで仕事をする、使命感を持つ。
![](https://assets.st-note.com/img/1652279960830-hl5Rhqk25y.png)
この過剰ともいえる思い入れ、言い方を変えれば会社に対する忠誠心は、終身雇用、年功序列という日本社会に根付いているシステムがなければ、ありえません。
会社は尽くしたものに報いてくれる、クビになどしない、そう信じているからプロジェクトに賭けられるのです。
プロジェクトマネジャーのあるべき姿
では、どういうプロジェクト経験だったら、転職エージェントの僕がOKを出すのでしょうか。
それはつぎのような要件を満たす、プロジェクトの企画書を用意することです。
1.社会性を備えたプロジェクト(倫理性、公平性)
2.プロジェクト実行にあたって、関与する人々にフェアワーク(適正で無理のない働き方)を保証すること
3.プロジェクトのゴールまでのプロセスが合理的、論理的に組み立てられていること
しかし、プロジェクトXを見ていると、1はともかく、2と3がでたらめなことが多いです。
それでも成功にこぎつけたのはプロジェクトマネジャーである本人の熱意と情熱に周りが感化された、幸運、偶然などが重なっただけです。
そもそも、日本にはこの3つを備えたプロジェクト企画書が書ける人は少ないし、そもそも、こうした論理性に富んだ青写真を正しく評価する能力も風土もないのでは。
精神論より論理を優先させる欧米
アメリカ人のプロジェクトマネジャーであれば、1から3までを兼ね備えた、隙のないプロジェクト企画書を作ってくるでしょう。
でも、そんな能力があれば、定時に仕事を終えて夜間のビジネススクールに通いMBAでも取り、その修了書をもって転職に臨むでしょう、プロジェクトの企画書じゃなくて。
良くも悪くも、会社と一心同体感などないからです。
そもそも無理して、会社と運命共同体よろしく、ロマンを追及するなどという姿勢はないからです。
欧米は、会社と自分は常に敵対しており、信賞必罰が基本で、会社とともに理想を追いかけるなどという風土がないのです。
いい悪いの問題ではありません。
僕は、プロジェクトXに見る日本のやり方を否定しているのではありませんよ。
ダイバーシティ(diversity)そしてワークライフバランスの時代、そろそろ個人の夢やロマンを追っかけて、他人まで無理をさせるようなやり方を賛美するのはやめませんか、ということです。
解決策?ですか。
アメリカ行ってMBA取ってくること、そう言いたいところですが、今のアメリカのMBAの最大の弱点は、国際性がないことなんですよ。どうしてもね、アメリカの価値が絶対という前提が変わってない。
ヨーロッパのMBAのほうが、その意味では絶対にいいと思います。
でも、MBAを取るよりも、現実的で手軽なのは・・・
またそれは別の機会に。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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