見出し画像

病院vs看護士。ワクチン接種強制は是か非か


いま、アメリカではラムダ株とやらの猛威で、再び感染急増の局面にあり、またワクチン接種も行き詰まりを見せており、病床は再び逼迫しはじめ、看護士不足が深刻になっています。

BusinessWeek2021年8月30日号は、ワクチン接種に反対する看護士と、看護士にワクチン接種を受けてもらって患者に安心を与えて利益を伸ばしたい病院の思惑が交錯する、生々しい現状について報告しています。同誌が指摘している問題点を列挙してみます。

問題1:看護士ら病院スタッフに強制ワクチン接種は限定的

American Hospital Association の調べでは、8月19日現在でスタッフにワクチン接種を義務付けている病院は、アメリカ国内では全体の35%にすぎません。

National Academy for State Health Policy のデータによればワクチン接種を一部のヘルス・ケアワーカに強制している州も、まだ22に過ぎません。

現実はワクチン接種を強制すればやめていくし、自由意志に任せれば、コロナにやられて仕事ができなくなるし、未だコロナ禍にあるアメリカの病院は大きなジレンマを抱えています。

問題2:ワクチンのイメージ問題

ジョンソン&ジョンソンのワクチンが一時出荷停止になりました。ごくまれに女性の血管につまりをおこさせることが確認されたからです。ほどなくして、規制当局は出荷停止を解きましたたが、一度ついた危険なイメージは取れないままです。

画像1

起こりがちなこうしたイメージ問題について、製薬会社はマーケティングで立ち向かう必要に迫られています。

問題点3:コロナに関するフェイクニュースがSNSを駆け巡っている

ワクチンは妊婦に影響があるなどという、科学的根拠のないウソ情報がSNSを中心にまわっていて、それを信じる人々がワクチン反対にまわっているとの説があります。

現在インターネットで、最も問題になっているのはこのディスインフォメーション(ニセ情報)です。しかし、これを根絶やしにするのは相当困難です。

問題点4:規制当局や製薬会社は安全だというが、それでも信じない看護士が多い

薬害エイズ事件でも同じようなことがありました。

画像2

その当時は安全とされていても、あとになってそうではなかったとわかる事例は世界にもたくさんあります。

もし、何年かあとに死亡例や後遺症などが起こったらどうなるのでしょうか。いまエビデンスがあるから信じろ、信じるべきだという世間の常識は疑われても仕方ないでしょう。

問題点5:最前線で働く看護士のバーンアウト

ワシントンポストとカイザー・ファミリー・ファウンデーションの共同サーベイによれば、約30%の看護士が仕事を辞めることを考えたことがあります。

画像3

1年半のコロナ禍で感染者のケアをたえず行った結果、バーンアウト(燃え尽き)になっている例が多いのです。

ある若い女性看護士は、精神的、肉体的、感情的にバーンアウトになっているので、ワクチンの是非ではなく、とにかく心と体がワクチンを受け付けないと悩みを打ち明けています。

問題点6:都会と田舎の病院ではワクチン希望者の数にギャップがある

田舎では都会に比べ就労機会が少ないので、病院からワクチンを打つように命じられたら断れないケースが多いのです。この場合の強制は果たして妥当なものかという議論があります。

個人の自由と社会の安全は両立するか


やはりこの問題は、自由と社会の安心安全は共存できるか、という民主主義に挑戦するような、テーマを我々が突きつけられていることだと思います。

マスク問題は、世界で決着したかのように思えます。それは「マスクをしろ」ということです。

画像4

相手にうつさないことの社会的利益のほうが、マスクをしないという些細な不愉快よりも遥かに大きいからです。コロナがエアロゾル、空気感染ということもはっきりしたこともこれに追い風になりました。

しかし、ワクチン接種となると、これはまだ100%安全の担保がないので、当然打たない権利は認められるべきでしょう。

しかし、ワクチン接種の有効率は具体的に科学的数字があるので、ワクチン接種をしている従業員が多ければ、お客は安心して来店でき、したがってビジネスが良くなることが確実なわけです。お店、病院などは従業員ワクチン接種を義務化したいでしょう。

しかし、命に関わることの選択を強制するのは、公共の利益、経済全体の利益からみて、やはりおかしいでしょう。

ワクチン強制反対のデモはやればいい。

しかし、経済的理由で職場を離れられない看護士たちは、実質ワクチン接種するかしないかの自由がない。こういう人たちを守る社会的手だてが必要と考えます。

きれいごとにすぎるかな。

バーンアウト問題も大きいですね。

休もうったって人がいない。給料を上げるか、くらいしかないが、バーンアウトで心と体がやられたら、元も子もないし。

人材って、ジャストインタイムシステムのように、必要な時、必要なだけ供給できないから困りますよね。

でも、政府が気づいてやっているように、看護士のOB、OGの方にお出ましいただくことはいいことですね。それくらいしか考えつきません。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

じゃあ、また明日。

                            野呂 一郎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?