ジョブチューンは近視眼的マーケティングなのか?
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:昨日既報でジョブチューン出演は外食チェーン店にとってプラスと言った。しかし、それは限定された意味でしかない。企業にとって、優先順位はジョブチューンではなく、3Dだ。
ジョブチューンじゃない
きのうの記事では、ジョブチューン出演は、企業の頑張りとこだわりをドラマとして見せており、そのストーリーテリング(物語性)が視聴者を引きつけ感銘を与えるから、消費者と企業の距離を近づけるマーケティングとして、効果ある、と申し上げました。
一方で、高級店のプロは高級グルメ視点でしかジャッジできず、ある意味「下世話な」大衆料理の採点をするには、見当外れのキャスティングであり、あれをありがたがって、あまつさえ「泣く」などはやりすぎの演出だ、と文句を申し上げました。
さて、しかし、現在のマーケティングの王道は、味を改善するよりも、消費者に近づくよりも、まずは社会的要請に応えることではないでしょうか。
一見直接利益につながらない企業行動こそが、長期的なマーケティング利益をもたらすのです。
味より安心安全のほうが大事
例えば、おとといのジョブチューン、ドミノピザの巻でしたが、ドミノはマルガリータのチェリートマトをもっと酸っぱい品種に変えるなどどうでもいいから、イタリアンソーセージを無添加にしたらどうでしょうか?
これは、今ネットで流行ってる「味の素論争」ではないですよ。
添加物が身体にいい、悪いという問題ではなく、企業として「イメージ的にも実際も、より安心安全でお客様のカラダに良い、と思われる食材を使う」という姿勢の問題、なのです。
ピザはソーセージやハムなどの加工肉の使用割合が多く、現代人は添加物がたくさん使用されているそうした食材に不安を持っていることは、紛れもない事実です。
もしドミノが「よりお客様の安心安全のために食材を変えました」とやったらどうでしょう?
ジョブチューンで、10回不合格の末、合格を勝ち取って女性開発者が大泣きする絵、よりもサステナブルなマーケティング効果がありますって。
味よりも3Dを意識せよ
今までことあるごとに、現代は3Dの時代だ、と言ってきました。
1. Deglobalization (ディグローバリゼーション 脱グローバル化)
2. Digitalization (デジタライゼーション デジタル化)
3. Decarbonization (ディカーボナイゼーション 脱炭素化)
これは企業が直面する現実であり、社会的な要請でもあり、マーケティングの大局的なヒントでもあります。
ドミノはジョブチューンで、味へのこだわりを見せるよりも、まずこの3つをクリエイティブに実行したほうが、いいマーケティングができます。
地産地消で地域に貢献せよ
まず、Deglobalization (ディグローバリゼーション 脱グローバル化)ですが、これはピザの原材料を地産地消することに、かじを切ることです。
ディグローバリゼーションとは、外国に原材料を頼れない時代の現実ということであり、それに備えて外国から輸入する安さよりも、長期的な安定供給を考えることが重要になってきます。
「地産地消のドミノ」って、なかなかカッコイイ、キャッチフレーズだと思いますよ。
デジタル化の逆説
次に、Digitalization (デジタライゼーション デジタル化)ですが、個人的にはドミノのパソコンや携帯での注文はわかりにくいと思っています。
Lサイズ頼むと、Sが2つついてくるっていうけど、Sの値段が違ったりするし、サイドメニュー2つ選びにくかったりします。
デジタル入力中にわかりにくかったり、めんどくさくてやめちゃう人たちが一定数いると思うんですよ。
ドミノはシステムを改善して、途中で入力を諦めた人を自動でフォローする仕組みを作るべきです。
この機会損失は案外、大きいはずです。
デジタル化を「逆説」と読むこともできます。
つまり、デジタル化からこぼれ落ちた人々こそが新しいマーケットとして存在している、ってことです。
ピザに限りませんが、外食ビジネスはまだまだシニアの開拓が進んでいません。
デジタルはめんどくさいから、ピザは頼まないという、顧みられてないビッグな市場がそこにあります。
電話のみの、アナログ対応のラインも作りましょう。
そうすると、シニア向けの今までなかったピザの開発に拍車がかかり、そしたら、「老人向けピザ」を引っ提げて、またジョブチューンに出れば、企業イメージもぐんとアップしますよ。
天ぷら油で配達せよ
さて、さいごはDecarbonization (ディカーボナイゼーション 脱炭素化)ですが、要するに、配達バイクにガソリン(石油)を使うな、ということですね。
天ぷら油、いやピザを焼く時に使う食用油で動く、バイクを作りましょう。
地球温暖化と戦うドミノ、として、「3キロ以内は自転車を使っております」とやれば、大きな脱炭素化のアピールになりますね。
僕は思うんですけれど、消費者はバカじゃないと思うんですよ。。
社会の動きや要請に企業が応えているか、ちゃんと見てます。
美味しいことも大事です。
しかし、企業の社会的行動をどうすべきか、これをおろそかにすれば、企業として本末転倒ではないでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授
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