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松本清張に学ぶ現代における情報収集

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:スマホ全盛時代に、忘れ去られようとしている情報技術が、あなたを一流作家にする可能性について。

”嫌人症”の時代

社会派推理という前人未到のジャンルを切り開いた巨匠、松本清張の作品創造の秘密について調べているのですが、そのエッセンスは一次情報を大事にしていることではないか、そう思うのです。

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一次情報とは自分が直接体験し、聞き取り、調査して得られた情報のことです。

とりわけ清張は取材で訪ねる土地の人々と積極的に接し、その耳と五感で情報をとり、作品作りに生かしてきました。

僕はこのことを知り、現代人は一次情報を得ることをないがしろにしているのではないか、と強く感じるのです。

人は情報によって動くのです。

情報ほど大事なものはないのに、現代人ときたら情報元はインターネット一択です。

作家の文章も躍動感が心なしか感じられないのは、自分で人にあたり情報収集をするという物書きが少数派になっている、からではないでしょうか

いや、それは自分を振り返ればよくわかります。

何でもスマホで調べれば事足りるから、人に聞くとか、人を訪ねてものを聞くという行為がめっきり減っているのです。

いや、減っているというのではなくて、嫌いになっている、のです。

知らず知らずのうちに、現代人は”嫌人症”になっているんです

清張のコンサルタント軍団

昔は「おばあちゃんに聞く台所の知恵」なんて言う本がベストセラーになったものですが、今では「おばあちゃん」が「グーグル先生」に代わっています。

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現代人は人に道を訊くこともしません。

グーグルマップがあるからです。

人に話しかけもしません、暇さえあればスマホとにらめっこです。

松本清張氏は、電話で話を聞ける専門家の知己がたくさんおり、「作家はみなそういうコンサルタントがいるはずだ」と述べています。

たとえば、彼のライフワークともなった古代史の研究を著作にまとめるときなど、古代史の研究者の知識やアドバイスを活用するというのです。

清張の言葉とは裏腹に、多くの作家は専属コンサルタントなぞを抱えてはいません。

人を動かす清張の魅力

こんなことを書くと、読者の皆様はふーん、という感じかもしれません。

しかし、僕はここに松本清張の真骨頂があると思うんです。

彼はこうした専門家に話を聞いても特に謝礼などしない、といっています。

しかし、世の中にただで手に入るモノなどありません。

清張と清張に情報を与える者の間には、確固たるgive & takeの法則が働いていることを見落とすわけにはいきません

清張にとっては実利であり、専門家にとっては、あの清張から頼まれたという光栄感であることは想像がつきます。

しかし、僕はもう2つあると思うんですよ。

一つは清張の話を引き出す技術、もう一つはその好奇心です。

この2つの共通することは、清張の熱、です。

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どうしても知りたい、だから関係者はその熱にほだされるように、時に隠しておきたい情報も開陳するのです。

情報を聞き出す、そんなことは新聞記者や作家の仕事だろ、俺達には関係ないわ、とおっしゃるのですね。

いいえ、どんな仕事をしていても、話を聞き出す技術や相手がつい話してしまう魅力を持つことは、喫緊の企業の課題といえるのです。

なぜか、ひとえにこれはいい推理小説を書くためだけではありません、よい製品、サービスを創るために絶対に欠かせない行動だからです。

真に有用な情報は、インターネットなどには存在しません。

それは人が握っているのです。
 
野呂 一郎

清和大学教授


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