デパートの年末商戦はマーケティングをやめて福島のホタテを売って欲しい件。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:客が吸い込まれるムード創りこそ、新しいマーケティング。いや、それより新しいのは時折利益を捨てて、社会貢献することだ。マーケティングを捨てることこそ、あたらしいマーケティングなのだという主張。ムードとは企業の価値観の反映である、助け合いという社会が一番欲しいことを、企業がやるべきときに来ている。
クリスマスツリーに惹かれた
きのう、用事で新宿を訪れたら、あるビルの中にクリスマスツリーを見つけました。
もう11月の後半だしな、クリスマスツリーを見かけてもおかしくないなと思ったのですが、何か急にそのビルの中に入りたくなったんです。
そのツリーに魅了されちゃったんですね。
きのうの話の続きで言うと、そのビルはクリスマスツリーで「ムード」を創っていたんです。
客がのぞきに来たくなるようなムードです。
雰囲気は宣伝に勝る
ムードは日本語に訳せば、雰囲気です。
人が思わず足を止める、中に入りたくなる雰囲気作りは、昨日書いたように
マーケティングのプッシュ戦略とは正反対ですが、かと言ってプル戦略でもありません。
お客さんが自然に吸い寄せられるように店に入ってきて、自然に商品に目を留め、買ってくれるような雰囲気を作るのが、ムード戦略です。
このシーズン、冒頭に出てきたクリスマスツリーや、オーナメントなども、思わず魅入ってしまうような新しいデザインは、まだまだ研究の余地はあると思います。
ムードとは全体の統一感のことです。
例えば、これからデパートのクリスマス商戦を考えると、今年の陰惨な世相には、どんなコンセプトがいいでしょうか。
「大人のクリスマス」などはどうでしょうか。
通常のけたたましい宣伝や広告が耳目を塞ぐ、というのではなくて、邪魔をせず静かに、大人しく、それでいて心温まるようなムードつくりを各店舗、各フロアが展開するのです。
あえて、キャンペーンのネーミングはつけなくていいかもしれません。
キャンペーン臭が少しでもあると、せっかくの静かで大人なコンセプトが生かされないおそれがあるからです。
マーケティングに背を向けよ
ムードとは、ある意味「売らんかな」のマーケティングとは正反対の概念だ、と申し上げました。
それでも、やはり集客や売上を考えているなら、マーケティングの範疇にはいるかもしれません。
しかし、ムードを創ることは、企業側の価値観が反映されることであり、その一つの選択肢に「商売抜きで社会貢献」というのもあると思います。
例えば、百貨店のクリスマスキャンペーンで、「福島産の魚介類しか扱いません。お値打ち価格でホタテ大放出!」などのムード作戦はどうでしょうか。
処理水問題で、もう政府に頼るのはやめましょう。
あいつら何もやってくれないし、これからも何もしませんよ。
代わりにデパートが、資金に余裕のある大企業が、中国に行けずに行き場を失っている海産物を全部買い上げ、庶民価格で放出するのです。
折しもクリスマスシーズンは、歳末助け合いの季節でもあります。
黙ってこんなことをやれば、それこそデパートは「静かな大人のクリスマス」を演出できるというものです。
野呂 一郎
清和大学教授
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