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イーロン・マスクのまっとうなMBA批判

あのイーロン・マスクがMBA批判

2020年12月10日のThe Wall Street Journalの記事で、ちょっと古いんですけれども、これは読者の皆様と共有しなくてはいけないと思って、紹介します。あのイーロン・マスク氏がMBAの猛批判を繰り広げたのです。マスク氏と言えば、電気自動車企業テスラの共同創設者にして、宇宙開発企業スペースXの創設者およびCEO。2019年にフォーブスが発表した「アメリカで最も革新的なリーダー」ランキングでアマゾンCEOのジェフ・ベゾスと並び第1位の評価を受けた、今世界で最も注目される経営者の一人と言っていいでしょう。

そのマスク氏が公然とMBAをそしてそれを運営するビジネススクールを批判したのですから、反響は大きいものがありました。

今日はこの記事を、マスク氏の言い分と専門家の反論という形でお見せしたいと思います。いつものように”超訳“でいきますね。

クリエイティブに欠けるMBA経営者

マスク氏の言い分はこうです。

アメリカ企業の経営者にはMBAが多すぎる。

MBAホルダーの経営者達は、企業からクリエイティブに考える力を奪い、カスタマーが何を本当に必要としているか理解する力を奪っている。

MBA経営者たちはもっと製品、サービスそのものにフォーカスすべきだ。

取締役会いわゆるボード・ミーティングはもっと短く切り上げるべきだ。財務についても時間をかけて熱中する必要はない。経営者はボード・ミーティングなどやめて現場に、工場のフロアに出ろ。

この発言は2020年ウォールストリートジャーナルが主催するCEOサミットでリーダーシップについての議論の関で飛び出したものです。訳しきれませんが、マスク氏はpollute(汚染する)という言葉を使って、MBAの悪影響を強調していることは補足しておきます。

反論1:現実を知らないマスク氏

スタンフォード大学・ビジネススクール講師ロバート・シージャー氏(Robert Sieger)

マスク氏はビジネススクールの現実をご存じない。ビジネススクールの学生は以前にも増して企業家精神そしてテクノロジーに興味をもってきている。ウォールストリートという言葉に代表される金勘定よりもむしろそっちの方に熱心である。 マスク氏が成功者なのは認めるが、 MBA を責めたてるのはお門違いだ。

MBAの新コース

氏はそういいつつ、スタンフォード大学ビジネスの新しいカリキュラムを紹介しています。それは新しいコース(様々なコースの中から選択できる)で、新製品開発コース、カスタマー・エンゲージメント(消費者をいかにファンにするか。ファンベースを維持するにはどうするか等の研究)やプロフェッサーと学生たちがチームを組んでのワーク、他分野例えばエンジニアチームと共同開発を行い、エンジニアにアドバイスをするなどのコースが新設されているとのことです。

反論2:MBAはビジネス成功の根本

コロンビア大学ビジネススクールの 元学部長グレン・ハバート(Glenn Hubbard)氏

MBAはアントルプルヌアー(企業家)に成功するために必要な根本を与えるものだ。カスタマーのニーズにあった製品をイメージすること、戦略を策定すること、ファイナンスの計画とチームビルディングを一体化することなどがそれだ。

マスク氏は確かにビジョナリーだ(ビジョンを明確に上手に描いてそれを経営の動力にする)。しかし、多くのCEOはMBAの学位のおかげで、またMBAホルダーのチームの力を利用して、ビジョンと実行の両面でうまくやっている。

数字で見るMBA

フォーチュン500企業のトップの100社のうち、3分の1はMBAを持っている。その中でもハーバード、スタンフォード等5つのビジネススクールが突出しており、フォーチュン100企業の一人以上は5つのビジネススクールプログラムの出身である。

しかし、全てのフォーチュン100企業のCEOがランキングの高いプログラム出身というわけではない。アメリカン・エクスプレス(American Express) の CEO ステファン・スクェリイ(Stephan Squeri)氏は無名のマンハッタン・カレッジのオーマレー・ビジネススクール(Manhattan College’s O’Malley School of Business) 出身だ。

反論3:MBAは経営の鳥瞰図を与えてくれる

ノースイースタン大学ダモア・マキンビジネススクール(Northeastern University’s D’Amore-McKim school of business)学部長 ラジ・エシャンダビ(Raji Echambadi)氏

マスク氏の「企業は利益ばかりを追っかけるべきではない」という主張は疑問だ。MBAプログラムはリーダーにホリスティック(全体的)な経営の理解をうながす。サプライチェーン、オペレーション(生産、業務管理)、そして製造からマーケティング、さらにカスタマーサービスからヒューマンリソース(人的資源資源)までの包括的な理解を与えるものだ。

反論4:MBAは財務偏重ではない

カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクールオブビジネス前学部長リッチ・ライオンズ(Rich Lyons)氏

投資家が財務ばかり気にするようにしたことが、MBA教育の問題点だ、とは思わない。じゃあ、MBAをもっている取締役の数を減らし、取締役会をシニアメンバーばかりにすれば会議の時間が短くなるのだろうか。そうじゃないだろう。

野呂の分析:変化のスピードにMBAは追いついていけない

マスクさんの常日頃の正直な気持ちを述べたんでしょう。ポイントはMBAはクリエイティブじゃない、市場の本当のニーズがわかってないというところです。

財務諸表の見方はわかるけれども、数字やデータや統計で市場は読めないと言いたいんですよね。会議をやめて製造フロアにでろ、という叫びがその象徴的なことです。要するにMBAは机上の空論にすぎないということだと思います。

MBAに限りませんが、少し教育のある人ならば、まず会社と経営に関するデータを揃えて、そこから問題点を発見し、解決策を提示するという鉄板のプロセスを踏むでしょう。

しかし、それをやっていると変化のスピードが早すぎる現在は、解決策ができたときは環境が一変してしまっている、だからMBA的な解決策はダメなのではないでしょうか。

現場に全ての答えがある、マスクさんはそう言いたいのはないかと思うのです。なぜならば、そこに変化そして変化の本質があるからです。

彼の生き方は奔放そのものだから、それは誰もまねできないけれども、自由さがなければ発想も行動も飛躍がない、下手にMBAなんかで考える癖をつけると俺の飛躍マインドは持てないよ、と言いたいのではないでしょうか。

MBAについては僕も言いたいことが山ほどあるので、また明日にでもこの続きをやりましょう。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

また明日お目にかかりましょう。

                            野呂 一郎

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