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エレベーターで銃を突きつけられたら。無限の変化に対応する訓練としての武道

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:武道など、単純動作の繰り返しに過ぎない、使えないと考えるのは早計。武道とは基本に忠実でありつつも、それを崩す応用のことなのだ。だから、経営戦略策定や人生のリスク管理の練習になる。それを身体でできる武道は人類の財産だ、という主張。

手の内ということ

これも、尊敬する合気道の師範がおっしゃった「盗む」ということに関連する言葉なのですが、「達人の手の内を見ろ」というのです。

手の内(てのうち)とは、先生独特の言い回しなのですが、要するに相手の攻撃に手のどの部位を使って、どう操作するか、そしてその手の動きをどう次の所作につなげるかのパターンなのです。

例えば合気道には「正面打ち」という稽古体系があります。

攻撃する方は、自分の腕を刀に見立てて、相手に対してまっすぐ正面からまっすぐ切り落とします。

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合気道に批判的な人は、「いまどきそんな腕を上から振り落としてくるやつなんていないだろ?」とバカにするわけです。

でもそれは、動きの訓練、なんです。

相手の攻撃する軌道は刀のようなものを上から振り落とすムーブメントであり、腕を振り下ろすのは、その力の動きを稽古のために設定しているだけなのです。

それが手刀だったり、ナイフだったり、石だったりした場合、からだと心をどう対応させるか、それが「正面打ち」の稽古なのです。

ですから、「正面から手を振りかぶって打って来るバカいるかよ」という、アンチ合気道派は間違っているのです。

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手の動きは無限

「手の内」からそれましたから戻しますと、その「正面打ち」をどうさばくか、これが合気道の実戦ですよね。

例えば、それを手で受けるとします。

無限のパターンがあるんですよ。

・空手の上段受けのように、腕の内側の骨の部分で受ける
・手の甲で受ける
・手で相手の手首に触れて巻き込む
・相手の腕を両手で受ける

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受ける手の部位は肘のあたりか、手首に近い部分か、力の入れ方は、力の流し方は、速く受けるか、遅く受けるか、などを加味すると、手で相手の正面打ちを受けるという、一見退屈で単純に思える稽古は、凄まじいバリエーションを包含しているのです。

おそらく合気道に限りませんが、達人は、基本練習をこういう、実験の場として使っている、言い換えればいろんな前提、つまり変化を自ら作って対応する稽古に使っているのです。

武道を実生活に応用する

武道は型ばっかりで、実戦的じゃないから喧嘩には使えない、などという人がいますけれど、基本稽古からして、無限の変化に対応できる体系があるのです。

型にしても、動作を分解すれば、戦いに勝つ合理性に溢れています。

美しく見せるためにデフォルメしている部分もありますが、それはそれで理解し、実戦に応用できるように考えて、練習すればいいのです。

人生とは、ビジネスとは、どこからどういう攻撃をされるかわからない、リスクに満ちた戦場です。

しかし、武道を正しく修練しているものは、その変化やリスクに対応できる、これは事実です。

武道の訓練には、イマジネーションも入ります

相手がこう来たら、こう返す。武器を持っていたら、複数できたら、人質を取られたら、飛行機がハイジャックされたら、常に武道家はあらゆる戦いのシチュエーションを考えています。

エレベーターで拳銃を突きつけられたら

例えば、僕もよく想定するのですが、エレベーターで拳銃を突きつけられたらどうするか。

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国際松濤館空手の創始者、世界のカナザワこと、同流派の宗家 金澤弘和(かなざわ・ひろかず)先生はある空手雑誌でこんなことを仰ってました。

世界のカナザワ https://x.gd/bGUCA

「私なら、財布にあるドル札を渡します」。

もちろん、カナザワ先生であれば、相手が引き金を引く寸前に手足が、身体が自然に動き、発砲前に賊をいとも簡単に制するでしょう。

しかし、エレベーターに人がいた場合の流れ弾の行方、警察の事情調査の時間コスト、拳銃暴発のリスクなどを考え合わせ、直接対決を見合わせたのです。

常在戦場の心がけこそ、現代人、ビジネスマン・ウーマンにも必要ではないでしょうか。

おとといから話をしている、セブンのM&Aの案件についても、常に幹部はそうした危機を想定すべきなのです。

今回は敵対的買収ではなかったけれど、敵対的買収を持ちかけられたらどうするか、マスコミに発表するのか、それとも隠すのか、ディールは円でやるのか、ドルでやるのか、ありとあらゆる変数が予想されます。

冒頭で述べたように、武道で次々変数を変えていく、そういう訓練をしていれば、ビジネスの真剣勝負でも慌てないはずです。

さあ、あなたも武道を始めませんか。

野呂 一郎
清和大学教授

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