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軽挙妄動への戒め【きまぐれエッセイ】

軽挙妄動の戒め

軽挙は、軽々しい行動を指す。一方、妄動は、分別のない行動や善悪・後先を考えない軽はずみな行動を意味する。これらの熟語を合わせた「軽挙妄動」は、軽はずみで分別のない行動を指す言葉だ。

この言葉が使われる場面を考えてみよう。例えば、緊張感が求められる場面で、深く考えずに行動してしまい、予想外のトラブルを引き起こすことがある。これは単に何も考えていないのではなく、思慮のなさから一般的によくないとされる行動に出てしまったときに使われることが多いのだ。

例えば、歴史的なエピソードを見てみると、古代ローマの皇帝カリグラはその暴君ぶりで知られている。彼の行動はまさに軽挙妄動の典型例だろう。カリグラは即興で法律を変えたり、気まぐれで処刑を命じたりした。その結果、多くの敵を作り、自らの死を招くことになった。

また、文学の世界でも軽挙妄動の例は多い。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』では、若い恋人たちが一時の感情に流され、周囲の状況を顧みずに行動する。結果として、悲劇的な結末を迎えることになる。

現代でも、SNSでの発言が大きな問題になることがある。軽はずみに投稿した内容が炎上し、社会的な批判を浴びることも珍しくない。これもまた軽挙妄動の一例だ。

草木について考えてみると、根は重く、枝葉は軽い。すなわち、重いものが軽いものの根となっているのである。見た目の華やかさや動きに囚われてはならない。根が地中深く静かに存在し、木全体を支えているように、人生もまた同じく根っこを重視せねばならない。

任侠の親分がどっしりと構え、泰然自若としている姿を想像してみるといい。ケツの軽いちんぴらどもが年がら年中ちょこまか動きまわっている様は、まるで迷子の蟻のように無秩序で、方向性も定まらない。親分は鶴の一声で全てを静め、その存在感だけで周囲を圧倒する。一方、ちんぴらどもはギャアギャアと騒ぎ立て、その声は空虚に響くだけだ。

結局のところ、軽挙妄動する者は、どっしりと慎重に構えるものに最後は抑えられ、せかせかと動き回る者は、じっくりと落ち着いている者に結局は支配されるのである。歴史を振り返ってみても、軽々しく騒々しい者がトップに立つと、往々にしてロクなことにならない。

戦国時代のあの有名な武将たちも、静かな策士が最後には勝ち残る。織田信長が豪放磊落な性格であっても、彼を支えたのは冷静沈着な明智光秀であり、その逆転劇が象徴するのはまさにこの原理だ。

真のリーダーシップとは、一見目立たないが根強く存在し、周囲を安定させる力を持つ者にある。草木の如く、根を重く、枝葉を軽くする生き方こそが、我々が目指すべき道ではなかろうか。
どっしりと地に足をつけ、静かにその存在感を放つ者こそ、真に尊敬されるべき存在である。

《老子第26章:重爲輕根》


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