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ドイツ企業のレジリエンス強化研修に注目せよ。

この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:ドイツの最新HRM(人的資源管理)の手法はディベート教育。今、企業に求められているのはレジリエンス強化、という仮説。トップ画はhttps://qr1.jp/a1YeTk

ドイツのコミュニケーション研修

ニューヨーク・タイムズWeekly11月19日号はJob trainings come with lessons in civics (職務トレーニングは市民学の教訓も兼ねる)とのタイトルで、企業が従業員にユニークな教育を実施している様子を報じています。

ユニークな教育とは、ある種の強さを養成するものです。

おととい、インクルージョンの重要さについてお話しました。

職場においてはすべての人が平等であり、性差をはじめ、ジェンダー、思想、民族、宗教が違っても、差別的な扱いを受けるべきではありません。

それはハラスメントにほかなりません。

でも、この問題を企業のHRM(人的資源管理)として考えると、もう一つの問題が浮上します。

それは、従業員がこうした問題に直面したときの、問題解決能力です。

インクルージョン違反は、企業内でも企業外でも起こり得ます。

HRMに目が行き届く企業は、その両方に対処するのです。

もちろん社内的には、インクルージョンを徹底し、従業員にとって物理的にも精神的にも、快適な職場空間を作ります

もう一つは、企業外でおこる、インクルージョンに欠けた差別を受けた時に、従業員がうまく立ち回れるようにすることです。

新・レジリエンス研修とは

レジリエンス(resilience)という言葉がよく聞かれます。

復元力などと訳されますが、僕は多くの場合で「打たれ強さ」と訳して使っています。

ドイツの企業は、いま、従業員が社外でハラスメント被害にあったことを想定して、ある種の打たれ強さを鍛える研修をしているのです。

例えばこんな例がありました。

トルコ人の女性社員がネットでひどいことを書かれたのですが、実はその原因は彼女のジェンダーや民族性ではなかったのです。

それは彼女が企業の研修で、ある鉄則を教わったからでした。

「相手を攻めるのではなく、徹底的に具体的な質問をせよ」というものでした。

レジリエンスをつけるための研修の手法は、民主主義的な価値観を持って、次のようなテーマに関してディベート(討論)させることです。

注:ディベートとは、賛成、反対に分かれて両チームに議論させて、問題の理解を深め、コミュニケーション能力を向上させる取り組みのことです。

ディベートのテーマ

・パンデミック中国説
・ロシア・ウクライナ戦争責任論
・ヘイトスピーチの是非

ニューヨーク・タイムズより

このような試練を経て、従業員はレジリエンスの強度を磨いていくのです。

ディベートの詳しいやり方は書いてありませんでしたが、今度俺流のやり方を紹介しましょう。

脱ハラスメントのためのレジリエンスなぜ必要

ドイツには、民主主義的な価値観を推進する民間団体が、いくつかあります。たとえば、民主主義のためのビジネス評議会(Business Council for Democracy )、ヴェルトフェネス・ザクヘン・イン・ドイツ(Weltofffenes Sachsen in Germany), 市民連盟(Civic Alliance )などです。

これらが、レジリエンス教育に積極的に携わっていることは、注目に値します。

一つの背景として、ドイツの民主主義が今、危機を迎えていることが指摘できるかもしれません。

それは、極右のAfD(ドイツの代理the Alternative for Germany)の台頭です。

https://qr1.jp/nWppsP

今やドイツ人の5人に一人が支持しているこの党が(2021年の選挙では支持率は10%。倍増している)、なぜドイツ政界の台風の目になったのかは、あるきっかけがありました。

それは2015年と2016年にドイツは、それぞれ100万人を超える移民を受け入れたことです。

国粋主義者を賛美し、反移民を掲げるAfDに熱い支持が集まっているのです。

僕は一応HRM(人的資源管理)が専門なので、最後に一言すると、レジリエンス強化という研修テーマは、瞠目すべきだと考えます。

移民社会を迎えたドイツにとって、非常にリアリティのある社会的テーマで、ディベートすることでレジリエンスを強化することは、大変興味深く、面白いと思います。

レジリエンスとは、自分を守るコミュニケーション能力と、僕は位置づけています。

ディベートは、日本ではまったくスルーされている教育です。

英語ディベートを教えてくれというリクエストをされたことがあるので、今一度僕も教える体制を整えたいと思っています。

野呂 一郎
清和大学教授



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