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ほめて伸びない人って、いるの?

エリ「あーづがれだー」
こころ「でもやっぱ心地よいもんだね、運動は」
エリ「まーねー」

二人はジムでの運動を終えて、近くの公園でまったりタイム。

エリ「今日で何キロ痩せたかな?」
こころ「ちょっと。結果を焦りすぎ……」
エリ「だって気になるんだもん」
こころ「そんなすぐには変わらんでしょ」
エリ「でも筋肉ついて、基礎代謝も上がれば、どんどん痩せやすくなるでしょ?」
こころ「アンタの場合、そもそも摂取カロリーが多すぎるけどね……」

木陰の下のベンチで二人。
涼しい風。
遠くには、はしゃいでいる子供たちの声。

エリ「まーでも問題は、続くかだよねーこれが」
こころ「お、わかってるじゃん」
エリ「いちおう、真面目だからねー」
こころ「まぁ、この手のものは幽霊会員が売り上げの多くを占めてたりするからねぇ」

たまに強い風が吹くと、視界に映る木々が揺れる。

こころ「まぁでもエリにしては、今日はちゃんとやってたんじゃない?」
エリ「あ、そーお?」
こころ「10分くらいで抜け出すかと思ってた」
エリ「し、失礼な!」

ちょっと図星をつかれたような表情をしていて、こころにはそれが面白かった。

エリ「エリは褒められて伸びるタイプだからね。丁寧に扱ってよ」
こころ「ふーん」
エリ「なに。疑ってる?」
こころ「いや、褒められて伸びないタイプっているのかな、と思って」
エリ「うーん?」

エリは「考える人」モードに入った。
アゴに手を当てているのでわかりやすい。

エリ「うーん、伸びるかはさておき、褒められたら大体、嬉しい気はする」
こころ「まーね。でも、褒め方にもよるんじゃない?」
エリ「たとえば?」
こころ「なんか、いや褒めすぎじゃね? みたいに感じること、ない?」
エリ「ない」
こころ「あっそう……」

こころは、共感を求める相手を間違ったと、反省。

エリ「ごめんごめん。こころはそういうの感じるの?」
こころ「うん。まー仕事でそういう機会が多かったからかもね」
エリ「どんな?」
こころ「なんか営業マンがやたら褒めてきて最後に売り込みしてくる、みたいな」
エリ「あーw」

エリ「オホン……。いやーキミきれいだねーその服似合ってるねー髪の毛トレンディだねーてかラインやってる?」
こころ「そこまで、あからさまなヤツには出会ったことないけど」
エリ「まぁでもこういうことね」
こころ「極端にいうとね」
エリ「まーでもこれは、ウザいね」

こころ「おほん。いやーエリちゃんジムでちゃーんと運動できて偉いね〜」
エリ「ありがとう〜」満面の笑み。
こころ「いや喜ぶんかい」
エリ「だってそれこころちゃんの本心だから」
こころ「違うし」
エリ「違うくないし」
こころ「なんでやねん」
エリ「いやーおかげでまたジム頑張れちゃうなー」
こころ「単純でいいね」
エリ「なんか言った?」
こころ「いや何でも」

雲はゆるやかに流れている。
エリは大きく背伸びをする。

エリ「まーつまり、褒めて伸びるかどうかじゃなくて、褒め方が問題だってことね」
こころ「じゃない?」
エリ「ってコトで、いい感じによろしくね」
こころ「何を」
エリ「これからも上手にウチをほめてね?」
こころ「なんで上から?」


何百人もの子どもたちを対象に、7回にわたる実験を行なった結果はきわめて明快だった。頭の良さをほめると、学習意欲が損なわれ、ひいては成績も低下したのである。

キャロル・S・ドゥエック.マインドセット:「やればできる!」の研究(Kindleの位置No.3066-3067).草思社.Kindle版.
子どもの研究に生涯をささげたハイム・ギノットもやはり、「ほめるときは、子ども自身の特性をではなく、努力して成しとげたことをほめるべきだ」という結論に達している。

キャロル・S・ドゥエック.マインドセット:「やればできる!」の研究(Kindleの位置No.3097-3098).草思社.Kindle版.


◆問いギャルシリーズ

◆文・イラスト・デザイン:ノーマル浮枝

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