本6 サンセットパーク ポール・オースター
気に入った映画を何度も観るように、
僕はポール・オースターを読んでいるような気がする。
作品は4人の若者の群像劇。
主人公格の青年が公園で本を読んでいるシーンがある。少し離れた場所で、やはりひとりの少女が本を読んでいる。それは偶然にも同じ本だった。フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』である。
こんな風に作品の中で『ギャツビー』をいともさり気なく引っ張りだしてくるオースターのセンスが好きなんですよねえ。もう一度『ギャツビー』を読みたくなってくる。本作品に『ギャツビー』は特段の関係性はないと思うんですけどね。
でも少女(女子高校生)が『ギャツビー』の内容、とりわけ登場人物の人間描写について熱く語るところとか、いかにもオースター的象徴性がある。
『我等の生涯最良の年』という映画についても深く言及しており、思わずツタヤから借りてきて観たくなってくる。でもツタヤにあるかなあ。無いかもしれない。ツタヤには僕の借りたい映画や音楽が少ないから。
本作品は4人の不器用な若者たちを、克明に描いてる。生きることがうまくいってない若者4人のドキュメンタリーだ。墓地前の空き家に不法に住んでいる若者たちは、まあ、いろいろな問題を抱えて生きている。物語はしかし、若者それぞれの問題の解決に向かうわけではない。むしろそれらはもっと深刻になってゆく予感すらする。
オースターはマイノリティの世界を描くのが、本当に巧い人だなあと思う。いまさら云うことではないのかもしれないけど。焦点を絞って、個に向かえば向かうほど、それは普遍性を持つものなのかも知れない。
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