ノリユキ

本を読む パンクロックを聴くやうに

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最近の記事

中毒性 あるよな気する夏の暮れ

ライターの人が書く文章と作家の人が書く文章って、何かが違う。 軽重を論じるつもりはサラサラないが、ライターの、しかも週刊誌などで腕をふるっていた方と、じっくり原稿用紙に向かって、書いては破り書いては破りしている和服姿の先生と呼ばれる人の書くものって、根本からして異なるように思える。 たとえ同じテーマを扱ったとしても、まるきり違った様相を呈するだろう。 「いい日旅立ち」を演歌の人が歌うのとアイドル歌謡の人が歌うのとで違ってくるように。 どっちがいいとか悪いとかいう問題でもないん

    • 約束の地  ロバート・B・パーカー  菊池光(訳)

      生き方を学ぶのだ。 モノの考え方も。 独特とは思わない。 多くの人がそういうかもしれないが、しかし、 至極まっとうのように自分には思えるのだ。 ジェンダーの問題ではない。 1970年代はとくに、リブだとかマチズモとかいう「言葉」が流行したせいだろうか。 騎士道であるとか侍魂であるとか、男らしいのそうでないのと評価・判断しがちだが、性差の問題ではなく、あくまで人間の生き方として背筋が伸びる思いがするのだ。 孤独を怖がらないこと。 失敗を恐れないこと。 ユーモアの精神を忘れない

      • まだあるさ 未読の彼の作品が    オールドパンク、哄笑する  チャールズ・ブコウスキー短編集  鵜戸口哲尚(訳)

        動画共有サイトでは、登録してくれ登録してくれとうるさく云ってくる人たちがいる。 そのような人たちの云うとおりに登録する視聴者っているんだろうか。 いるんだろうな、きっと。 世界のクロサワ、なんてよく聞くけど、黒澤明ってそんなに才能があったんだろうか。 あるんだろうけど、僕にはあんまりよくわからない。 クロサワの映画作品を観たことあるけど、はっきり言って世界中で云うほど面白い作品だとは思わなかった。 くだらなくは無いが、みなが云うほどのモノか?と正直いって思う。 時代のせいだろ

        • なんとなく 短歌をつくるひとたちは 命賭けてるような気がする  短歌ください 海の家でオセロ篇  穂村弘

          付箋を貼りながら本は読みたくないなあ。 まるで何かを意識しているみたいで。 出来れば無意識で本を読んでいたい。 NAKEDな心で。 嫌われてもいいと思って生きている人。 そもそも生まれた時分から誰かに好かれたことなんてないと思っている人。 または自分が誰かを好きで好きでしょうがなくて、ほとんど狂っている人。 塀の上を片脚で、歩いている人。 頭の中のモヤモヤを何か他のものに変えて美しい花火にしてごらん。 そうするとこの本に出てくるような、愉しく哀しい歌に仕上がるかもしれない

        中毒性 あるよな気する夏の暮れ

        • 約束の地  ロバート・B・パーカー  菊池光(訳)

        • まだあるさ 未読の彼の作品が    オールドパンク、哄笑する  チャールズ・ブコウスキー短編集  鵜戸口哲尚(訳)

        • なんとなく 短歌をつくるひとたちは 命賭けてるような気がする  短歌ください 海の家でオセロ篇  穂村弘

          やもすると一日いっぱい家にいて 半熟玉子つくるなどして  変愛小説集  岸本佐知子編訳

          夏を見送る用意は出来ている。 本は、読み終わったとたんに内容をすべて忘れてしまうものである。 すべて忘れてしまう、は云い過ぎか。 でもその内容を伝えろ、と云われたら私はとたんに戸惑ってしまう。 説明が下手、というところもある。 あらすじを説明するなんて、さらさらそんな気は起らない。 読んでみろよ、ということだけが精いっぱいの贈る言葉だ。暮れなずむ町で。 印象がそこに残るだけだ。 印象しかそこには無いから、そいつを説明するのは至難の業だ。 印象はカタチをもたない。 表情も匂い

          やもすると一日いっぱい家にいて 半熟玉子つくるなどして  変愛小説集  岸本佐知子編訳

          神様のおかげのような気もするよ 悪い予感のかけらもないさ。    毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである  枡野浩一  

          パトカーをやたらと見かける日だった。 邪魔くさいものである。 運転しながら携帯電話で話している時にかぎって、 パトカーが近くに走っている。 対向車線にいたり、気がつけばとなりの車線にいたりする。 私はいままでパトカーが走っていて助かったという事が一度もない。 あいつらはいったい、何のために道路を走っているのか。 その名のとおりパトロールのつもりだろうか。 何度も云って申し訳ないが、邪魔でしょうがない。 リズムよく流れている交通の秩序に水を差す。 ほかのドライバーが、いら

          神様のおかげのような気もするよ 悪い予感のかけらもないさ。    毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである  枡野浩一  

          暑い日が続いてますが皆さんは お元気なんでございましょうか。  とんこつQ&A 今村夏子

          人は焦ると慌ててしまう。 また、慌てれば慌てるほど焦ってしまう。 その順繰りがスパイラルとなって物事が逆方向に行ってしまう。 私もときどき焦る。 焦ってしまう事がある。 そして慌てる。そして失敗に一直線だ。 そうなってから後悔する。 あんなに慌てなければよかったと思う。 もっと落ち着いて取り組めばよかったと思う。 いつも、そう思う。 私が尊敬する人達は、常に冷静だ。 ここぞという時に落ち着いている。 そういう時にかぎって、ちゃんと落ち着いているのだ。 そうして物事が順調

          暑い日が続いてますが皆さんは お元気なんでございましょうか。  とんこつQ&A 今村夏子

          純粋なこころのままでいることは   金子みすゞ詩集 不思議

          これからの人生、全部七五調で語ってみたらどうだろう。 友達は気づくだろうか。 きっと気づくだろう。 気づいてもきっと何も云わないだろう。 「あ、七五調だ」と感じて、しかし、そのことについては特段のコメントは無いような気がする。 下手したら友達も七五調にのって喋りだすかも知れない。 そうなったらきっとおもしろい。 変なブームみたいに。 発する言葉のおもちゃみたいに。 バタフライエフェクトみたいな海の波に思いを寄せて、その下に生きる魚のことをかんがえる。 つまり詩とはそんなよ

          純粋なこころのままでいることは   金子みすゞ詩集 不思議

          最近は痩せましたねとよく云われ   ゆっくりさよならをとなえる  川上弘美

          ピーナッツをポリポリやりながらビールを呑む。 そうしながら読むのにふさわしい本がある。 そのような本が私は好きである。 私はそのような本を見つけるのが得意だ。といいたい所だが、そうではない。 そういった本に、私が呼ばれるのだ。 書店の、または図書館の本棚から私を呼んでいる。そんな気がとてもする。 背表紙と目が合う。 ほとんど一瞬で決まる。 試しにパラパラとページをめくってみる。 するとまず間違いなく、自分の好みとわかる。 本に呼ばれたのだ。 偶然と云っていいのだろうか。 そ

          最近は痩せましたねとよく云われ   ゆっくりさよならをとなえる  川上弘美

          云うほどに笑った覚えはないけれど    裁判官の爆笑お言葉集  長嶺超輝(著)

          北大通り前、へそ出しルックに日傘をさした若い娘が歩いていた。 とてもよい景色だった。やらしい意味でなく。 いや、やらしい意味かもしれない。 スタイルがよかった。 顔は美人という程ではないが、悪くはない。 眼鏡をかけている為か、どことなく知的にみえた。 北大生かもしれない。 北海道でも夏は暑い。あたりまえだ。 ビアガーデンも始まっている。行く予定はない。 一緒に行く友達もいない。 誰かに誘われることもない。 でもさびしくなんかない。強がりじゃない。 夏は暑いものと相場は決まっ

          云うほどに笑った覚えはないけれど    裁判官の爆笑お言葉集  長嶺超輝(著)

          原題は全然違うものなのね   ウォッチメーカー ジェフリー・ディーヴァー(著)、池田真紀子(訳)

          いい天気で良かったではないか。 札幌ではお祭りがやっている。 似たような姿、似たような振り付けで老若男女が踊っている。 似たような姿、似たような振り付けでも、しかしそこには順位がつけられるらしい。 群舞である。 その順位をつける基準が私にはわからないが、私の生活に特に影響を与えるものではないので気にしないことにする。 テレビをつけてみた。 若者たちがインタビューに答えている。 私には聞こえない。 その声が聞こえない。 テレビの音量をひどく小さくしているせいだ。 しかし彼女ら

          原題は全然違うものなのね   ウォッチメーカー ジェフリー・ディーヴァー(著)、池田真紀子(訳)

          たいがいのコトバは音で出来ている  常識の路上  町田康(著)

          誇らしげに答えるだろう。 いったい何を読んでいるの?と問われたら。 1,800円+税の単行本。 お高い。 けれど…。 むかし、22歳頃、地下鉄北34条駅の地下にある本屋さんで何冊か本を買った。ほとんど立ち読みで済ませていたけれど。 何という雑誌かは忘れてしまったけれど、当時、とある若手漫才コンビが特集された号があった。今では大御所中の大御所である彼らがまだ若手として売り出していた頃だ。 笑いの悪魔に魂を売った者のように、僕の目には映った。 それはそれで潔く見えた。いまだに

          たいがいのコトバは音で出来ている  常識の路上  町田康(著)

          ひとつぶの 言葉できっと救われる           すべて忘れてしまうから  燃え殻(著)

          忘れてしまった。 前に一度読んだ覚えがある。 気のせいだろうか。 飛ばし飛ばしで読んでしまったのだろうか。 あるいは通して読んでいないのかもしれない。 けれど新鮮だった。 はじめてなのに懐かしく、再読なのに刺激的だった。 ぐるぐるとローリングする。 後悔や小さな驚きが渦をまいて自分を包み込んでいく。 そのまま自分は巻き込まれていって、下降する。 夢への入り口だ、きっと。 それとも出口かもしれない。 毎晩同じ映画を流す。 70年代をそのまま象徴的に、凝縮したような映画だ。

          ひとつぶの 言葉できっと救われる           すべて忘れてしまうから  燃え殻(著)

          遺伝子のささやく声が聞こえるよ   動的平衡2 福岡伸一(著)

          私たちは幼少の頃より青信号は青色と刷り込まれてきた。 したがって大人になった今、青信号が緑色をしていてもあれは青だと思うし人に話す時も「あれは青だよ」と説明するだろう。 同じように赤信号が本当はオレンジ色でもあれは赤。 真実を目の前にしながら時々混乱してくる。 いま目にしている色は自分はその名前を知っているけれども、しかし、世間一般では異なる色の名前で呼ばれている。 異なる色の名前だけれども、それはそれで通っている。正解ではないけれどそれは人口に膾炙し市民権を得、通説とな

          遺伝子のささやく声が聞こえるよ   動的平衡2 福岡伸一(著)

          ももひきを脱いだよ弥生三月に   『こころのねっこ』  読売新聞生活部監修

          ここで数えて100冊目、今年に入って10冊目の記念すべき一冊はこどもの詩。計算して選んだわけじゃないけれど、素敵な本がキリの良い数字にあたった。 孤独でありたいと思う。僕は孤独でありたい。 孤独の中で、何かが生まれるのではないか、と思っているわけではないけれど。 でも出来れば孤独という文字を使いたくない。 出来れば孤独という文字を使わないで孤独を表現したい。 表現方法は何でもよい。 ところで僕は本当の孤独がどんなものか判っているのだろうか。 もしかしたら判っていないかもしれ

          ももひきを脱いだよ弥生三月に   『こころのねっこ』  読売新聞生活部監修

          難解な文体 大江健三郎 それでも僕は夢中になった  「分かりやすい説明」のルール 木暮太一(著)

          3月でも雪は降る。 なごり雪だろうか。 横断歩道を歩く女性が「あたし困っちゃうわ」みたいな顔で歩いている。 北国の女性は美しい。 寒さで緊張しているからである。 ラジオ芸人が喋るラジオ番組が好きでよく聴いていた。 その番組自体が好きなのはもちろん、よく考えてみればその番組が流れてくる風景が好きだったのだと気づく。 毎週土曜日、じぶんのお客さんの所へ行くと、大体その番組が流れていた。みんな聴いているのだ。 工場で、事務所で、お店で、ありとあらゆる場所で、笑いと涙満載のラジオシ

          難解な文体 大江健三郎 それでも僕は夢中になった  「分かりやすい説明」のルール 木暮太一(著)