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ピクニックするように仕事する

コロナ禍において働き方が劇的に変化する中、最近ご近所さんとよく話題になること、それは「家だとなかなか仕事に集中できなくて。この辺でどっかコワーキングスペースとかシェアオフィスない?」と。
「いやあ、近所にはないですよねえ。」と僕。

僕自身も「そんな場所があったらいいよねえ。」と思っていた。家だと家人の動きや声が気になって集中できなかったり、あるいは誰も見ていないことを良いことにダラダラして生産性が下がってしまったり(おれだけか?)。「家以外のサードプレイスが近所にあったら、もっと仕事の効率が上がるよなー」と妄想を膨らませることしばし。そして、思った。
「無いならつくるか!」と。

...と言っても、いきなり物件を手に入れてスペースを運営する力もお金もないので、まずは僕たちnom de cocoaらしく、公園の中に手軽で、身軽に、チープに仕事場をつくって、それにより自分たちがどのように感じ、周囲にどう影響するかを考えてみることにした。

公園の中に仕事場をつくる実験。
検証テーマは、『公園で仕事は可能か?』

前提

僕の普段の仕事は化学分析屋さんなので、実験機器がなければ仕事にならない。そういう意味では、そこに行かなければできないような、場と強く結び付けられたような仕事は公園では当然できないし、高い秘匿性を要求されるような仕事も避けた方が良い。”公園でできる仕事”とは、パソコン(あるいは紙とペン)とネットワークがあればできる、比較的秘匿性の低い仕事(例えば一人でパソコンで記事を書いたり、オンラインで軽めのミーティングしたり)に限定されるだろう。今回の検証実験は、そういった類の仕事を想定している。

持ち物

仕事をする上で必要なものを考えた時、以下に挙げたものさえあればあとはなんとかなるだろうと考えた。

必須
・パソコン
・モバイルフォン
・クッション、テーブル代わりのスツール
・ピクニックシート ←近くの公共施設(フューチャーセンター)で借りた

あったら良いもの
・ポータブルバッテリー&ソーラーパネル
・モバイルスピーカーと音楽
・コーヒー&マグカップ

パソコンとモバイルフォンのバッテリーが切れると仕事にならなくなるので、ポータブルバッテリー&ソーラーパネルがあると安心。

写真を撮り忘れてしまったけど、荷物はアウトドア用の小さなワゴンに載せ、歩いて5分の公園まで持ち運べる量と重さ。そのぐらいの身軽さじゃないと、公園まで行こうと思えないからね。ここは結構重要。

やってみた

というわけで、やってみたnom de cocoaのコワーキングスペースがこれ↓。基本的な要素しかない極めてシンプルな構成。

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雲一つない爽やかな秋晴れで、朝から最高に気持ちがよかった。ソーラー発電もフル回転でぐんぐん電気が溜まっていく。

↓この記事の原稿を書いているところ。

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一緒に仕事してくれる人をSNSで募集したところ、早速一人仲間が現れた↓

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それぞれが黙々と原稿を書いたり、報告書を作成したり、時折雑談しながらアイディアを交わしたり、コーヒー片手に秋の爽やかな風を感じながら仕事をしているうちにあっという間にお昼になった。

お昼にはやりたいことがあった。それは...

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『Uber Eatsは公園にも来てくれるのか?』というサブ実験。それもお隣駅の大好きなバーガーキングを!!
Uber Eatsのアプリから、公園の今いる場所をお届け場所に指定して注文、ちゃんと辿り着いてくれるのか、時間内に届くのかとか心配したけど、まったくの杞憂だった。注文したら最後、あとは何もせずに公園の僕たちのいる場所まで届けてくれた。
ああ、公園にいながらにして大好きなワッパーが食べられるなんて、幸せ!!

そして、「一緒にお弁当食べようー」と近所の絵本屋さんのおじさんも来てくれた。「ちゃんと仕事してるー?」だって。

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絵本屋さんのおじさんの現役時代の仕事のお話を聞いたり、そんなことができるのも公園コワーキングスペースならではだなーと思った。

そんなこんなで、ピクニックのような仕事の時間があっという間に過ぎていった。

気づいたこと、感じたこと

ネガティブなこと
1. WiFiが弱くて、テザリングでしかネットワークに接続できない。

→公園のとなりの公共施設のフリーWiFiに接続できるかと期待したけどギリつながらず、ネットワークは自前のiPhoneのテザリングに頼るしかなかった。データ容量を大量に消費するオンラインビデオミーティングには不安を感じた。しかし、軽いネットサーフィンや共有ドライブへのアクセスはテザリングでもストレスはなかった。
考えてみると、もし公園にもフリーWiFiが飛んでたら、「公園から俺らのダンスをYoutubeで配信しようぜー」みたいな若者が現れたり、仕事で海外の拠点と結んでオンラインワークショップみたいなことができたり、万が一災害に遭って避難してきたときのインフラになったりもするよなーと思った。

2.パソコン作業時、テーブルが高く、クッションが低く腰が痛くなる。
→可搬性を考慮して、折り畳みスツールをテーブルがわりにしたが、パソコン作業をするには高すぎる、あるいはクッションが低すぎるため、適切なテーブルとクッション(あるいはイス)の組み合わせは十分検討する必要がある。無印良品のビーズクッションなんて気持ちよさそうだけど、持ち運びがちょっと大変。ここはみんなで知恵を出し合ったら良いかも。

3.時間帯によってはパソコンの画面が反射してしまい、見づらくなる。
→見やすい角度を探すも、どの角度でも反射してしまい、作業しづらかった。反射防止のシールなどを貼っておくと良いかも。

4.陽の傾きと共に木陰の位置が変わり、移動する必要があった。
→秋とは言え直射日光は暑いし眩しいので、2時間おきくらいで木陰を移動しなくてはならなかった。タープなどを張れたら解決すると思う。

5.コーヒーが足りなかった。
→長時間仕事をするには持参したコーヒーの量が少なかった(超個人的見解)。コーヒーを入れる道具を持参して、その場でいれるのも良いなあと思った。

ポジティブなこと
1.WiFiにつながらない環境は、”一人でじっくり考える”には都合が良い。

→”つながっている”ことが人間関係においても、仕事においても重要視される昨今、一人の時間を持つのは結構難しかったりする。あえて”つながらない”という時間や空間は今やレアになりつつある。”一人でじっくり考える時間”を手に入れるために、公園というWiFiがつながらない環境は最適なのかもしれない、と感じた。

2.公園のガヤガヤは程よく集中と緩和できる。
→公園の騒々しさは集中するのを邪魔すると思っていたのだけれど、遠くから聞こえくる子どもたちの笑い声をはじめとする場を満たす幸福感は程よくリラックス感を与えてくれて、集中力とクリエイティビティを高めてくれることに気づいた。これはちょっと意外だった。ふと目線を上げたときに子どもが楽しそうに走り回ってているのが目に入ったりすると、考えに行き詰まって眉間に皺が寄ってるいるのを緩和してくれたりもした。

3.年齢や仕事の異なる人の話が聞ける
→これは公園でのコワーキングスペースに限らず、コワーキングスペース全般に言えることなんだけれど、今回の公園コワーキングで特異的なのは、これが自分の住んでいるコミュニティーの中で行われていること。近所の人がどんな仕事をしているのか、どんなことに興味を持っているのかは実はよく知らなかったりする。ここをきっかけにして、参加してくれた人同士が親しくなって、新しい何かが生まれたりなんかしたら、このコミュニティの域内がちょっと豊かになる可能性は十分にあるなと思った。
そして、それは公園コワーキングという半分仕事、半分ピクニックの場で、半分面白く、半分真面目にという「程よいゆるさと緊張感」の中でこそ生まれやすくなるんじゃないかなあと思ったりした。

4.秋の風が爽やかで気持ち良い。
→今日は雲一つない秋晴れで、最高に気持ちの良い1日だった。もし、こんな日に普段オフィスで仕事しているチームが、それぞれパソコン一つ持って公園に出てきて仕事をしたら、「程よいゆるさと緊張感」からボスは部下を怒る気にもならないだろうし、楽しくてワクワクするようなアイディアもポンポン出てくるだろうなあ、と思った。デザイン思考のフレームワークをありがたく拝むより、公園に出てきてワイワイみんなで話し合う方がよっぽどクリエイティブだと思うな。実験を終えた今、なんで今まで誰もこれをやってこなかったんだろう?とすら思う。

5.家と同じコーヒーなのに、なぜか美味く感じる。
→キャンプで食べるカレーライスが美味しく感じるのと同じように、公園で飲むコーヒーはとにかく美味い。家と同じコーヒーと同じなのに。このちょっとした幸福感は、仕事の効率を上げてくれる、はず。

検証結果

『公園で仕事は十分できる!』
●特にパソコンがあればできる、あるいはパソコンがなくてもできるような仕事、例えば一人で集中して文章やラフスケッチを描いたり、誰かと一緒にクリエイティブにアイディアを膨らませたいときなどには公園コワーキングは最適。
●ただし、高速、大容量のネットワークを必要とする仕事をするならポケットWiFiなどの準備が必要。
●座り心地が良くて持ち運びが簡単な、寄り掛かれるイス、クッションとそれに合う机があると仕事がはかどる。

公園コワーキングの可能性

当初、自分にとって仕事のしやすい場所をつくることが目的だったこの「公園コワーキング」というアクション。”楽しく仕事ができる、仕事がはかどる”という成果はもちろんあるが、もう一つ気づいたことがある。

それは、今まで分断していた「仕事」と「生活」を一つに溶かし込み、しかもそれをコミュニティー内で共有することによって、豊かな「暮らし」が実現できるんじゃないか、ということ。もし、「働くように暮らす、暮らすように働く」というように、良い意味で仕事と生活の間に境界線がなくなったら、今よりもっと心豊かに生きられるだろうなあ、と。特に僕と同じような大多数の従来型のサラリーマンは。働き方改革、ワークライフバランスの方向性ってこれじゃないか、と思ったりもした。

そして、この活動と場所づくりは、誰でも簡単にお金をかけずにできる、ということは今日僕たちが検証した通り。もし、僕たち以外の誰かが、今回の実験のようにパブリックなコワーキングスペース、サードプレイスづくりをはじめてくれたら、そして、そんな場所が生活圏内に「今日はどこにしよう?」と選べるくらいたくさんあったら、「生活」と「仕事」は今よりもっともっと近づいていくと思う。そして、そんな場所と時間をきっかけにして、やがて「働くように暮らす、暮らすように働く」という毎日を実現できるかもしれないと感じた。今日の爽やかな秋の風のようにふんわりと。

...そんな可能性を感じたところで、実験終了!
楽しかったのでまたやります!

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