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「環境問題に取り組まない会社は辞める」Z世代・ミレニアル世代で起こる就職観の変化【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回は「環境問題に取り組まない会社は辞める」Z世代・ミレニアル世代で起こる就職観の変化の回を文字起こししました。

他の世代に比べて環境問題への意識が高いといわれるZ世代。彼ら彼女らがすでに労働市場に参入していますが、その多くが働きたい企業の条件の一つに「しっかりとした環境への取り組みを行っている」ことを挙げています。

さらには、Z世代だけでなく、ミレニアル世代でも同様の傾向が観察されており、環境への取り組みは転職市場でも重要な要素になりつつあります。今回はいくつかの調査を参考に、環境への取り組みにまつわる企業のリスクとベネフィットを見てみます(出演:岡徳之 / 写真:Markus Spiske on Unsplash)。

Z世代「強力な環境ポリシーを持つ企業で働きたい」

プラスチックごみや大気汚染などの環境問題

消費者の多くがその現状を知るようになった今、企業にとって、環境への取り組みの有無、またその深さが、消費者の行動、商品の売り上げを左右するようになってきています。

しかし、最近では人材採用人材獲得においても、環境への取り組みが重要な要素になりつつあるようです。

ガーディアンが伝えた、リクルーティングアプリ「Debut」の調査によると、イギリスの学生で「しっかりとした環境ポリシーを持つ企業・組織で働きたい」という割合は、女性が89%男性も80%と、非常に高い数値となりました。

また、イギリス政府が2018年に実施した意識調査によると、「グリーンエコノミーに携わりたい」と考える18〜24歳のZ世代は60%に達したことが判明。

強力な環境ポリシーを持つ企業、または環境保全に直接関わる産業・企業で働きたいというZ世代は、非常に多いことをを示しています。

この傾向は、イギリスだけでなく、グローバルでも確認できます。

DELLが2018年8月から9月、世界17カ国、1万2000人以上のZ世代を対象にした調査では、「社会的・環境的に責任を果たしている企業に就職したい」という割合は、フィリピンで53%、ブラジルで48%、マレーシアで47%、ベトナムで43%、ドイツで41%、トルコで40%となりました。

「環境に取り組まない企業は書き込まれる」リスク

さらに、この環境ポリシーは、Z世代の新卒社員の獲得に影響するだけでなく、ミレニアル世代/X世代のミドルキャリア人材の獲得にも影響をおよぼす可能性があります。

ヒューレットパッカードが2019年1月末〜2月にかけて、北米、ヨーロッパ、インド、中国の10の市場、主にミレニアル世代とX世代の1000人を対象に実施した調査では、「もし自分が働く会社の、環境への取り組みが残念なものなら、そのことをGlassdoorなどの企業レビューサイトに書き込む」という回答が全体で39%に上りました。

つまり、3人に1人以上が、自分が勤める環境への取り組みの粗末さを、レビューサイトに公開するというんですね。

また、「会社が環境への取り組みを実施していない場合、転職を検討する」と回答した割合は、ミレニアル世代で45%、X世代で37%、「転職先の企業が環境への取り組みを実施していない場合、その仕事を辞退する」と回答した割合は、ミレニアル世代で49%、X世代で41%などとなりました。

ヒューレットパッカードはこうしたの傾向を踏まえ、「職場におけるサステナビリティの取り組みは、もはやオプショナルではなくなった」と指摘。企業の環境への取り組みの欠如は、企業の信頼性や評判を損うリスクを高めると警告しています。

環境に取り組む企業はROIが高くなる傾向

しかし、これは裏返せば、環境への取り組みを促進することで、レピュテーションを高め、ビジネスを拡大させる機会と捉えることもできます。

実際、イギリスの非営利組織CDPが、2014年に発表した調査レポートでは、アメリカの株価指数「S&P500」に名を連ねる企業のうち、環境への取り組みを事業戦略の中核に落とし込み、環境保全などで積極的な活動を見せている企業は、そうでない企業に比べて、ROIが18%高くなる傾向が明らかになりました。

また、事業活動による二酸化炭素排出量を公開していない企業と比較すると、環境への取り組みに積極的な企業のROIは67%も高くなったそう。

リスク回避か、機会創出か、いずれにせよ、「環境への取り組み」が今後のビジネスで必須のキーワードとなるのは間違いないでしょう。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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